【2025年8月テーマ株】MSCI指数リバランス&JPX日経400定期入替:注目銘柄と株価影響

【2025年8月テーマ株】MSCI指数リバランス&JPX日経400定期入替:注目銘柄と株価影響

2025年8月には、日本株の主要株価指数に大きな変更イベントが予定されています。MSCIジャパンスタンダード指数の四半期リバランス(定期見直し、8月8日発表予定)と、JPX日経400(JPX日経インデックス400)の年次定期入替(8月7日発表予定)です。

これら指数の銘柄入替はパッシブファンドの売買を誘発し、関連銘柄の株価に大きなインパクトを与えることがあります。

今回は、両指数の概要とリバランスが株価に及ぼす影響を解説し、2025年8月の注目銘柄(新規採用・除外候補)を紹介します。また、過去のパターンや投資戦略のヒント(先回り買い・逆張り戦略、業績モメンタムなど)も交え、投資判断に役立つ視点をお届けします。

MSCIジャパンスタンダード指数とは?

MSCIジャパンスタンダード指数は、MSCI社(米国の指数算出会社)が算出する日本株の大型・中型株指数です。日本の株式市場時価総額の約85%をカバーする237銘柄(現行)で構成されており、トヨタなど主要企業を含む代表的な指数です。

年4回(2月・5月・8月・11月)定期的に構成銘柄の見直しが行われ、市場価値や流動性の変化に応じて銘柄の入替(新規採用・除外)が発表されます。特にMSCI指数は世界の機関投資家がベンチマークとして注目しており、構成銘柄の変更はパッシブ運用の資金フローに直結します。

MSCI指数の銘柄選定基準は主に時価総額(フリー・フロート調整後)によります。

具体的には、一定の時価総額ランキングと流動性基準を満たす銘柄が大型・中型株指数に組み入れられ、基準を下回った銘柄が除外対象となります。また新規上場企業で時価総額が大きいものは、四半期リバランスで早期に指数採用されるケースもあります。

MSCI指数の定期見直し発表日は世界中の投資家が注目し、日本時間8月8日の早朝に発表される予定です(発表後、通常は月末最終営業日の終値で指数に反映されます)。そのため発表から実施まで約2〜3週間あり、その間に指数連動ファンドは組み入れ変更に備えた売買を行います。

JPX日経400指数とは?

JPX日経インデックス400(JPX日経400)は、東京証券取引所と日本経済新聞社が2014年に算出を開始した株価指数で、「投資魅力の高い会社」400社で構成されます。東証プライム・スタンダード・グロース全上場企業から、まず売買代金や時価総額の大きい上位1000社を抽出し、さらに過去3年平均のROE(自己資本利益率)、3年累積の営業利益、時価総額の3項目についてスコアリングして上位を選定する仕組みです。

加えて、コーポレートガバナンス等の定性要素(社外取締役比率、女性役員比率30%以上、IFRS採用、英語開示など)で加点し、最終スコア上位の400社が選ばれます。選定基準には社会の要請に応じた改善も重ねられており、2025年8月の定期入替からは企業の「評判リスク」も除外基準に考慮されます。これは不祥事などで評判リスクが高い企業を指数から外すルールで、企業価値棄損リスクに対応する狙いがあります。

JPX日経400の定期見直しは年1回8月に実施され、毎年8月上旬に新たな400社の構成銘柄リストが発表されます(2025年は8月7日発表予定)。

定期入替では毎年数十銘柄規模の入替が発生します。例えば前回2024年の定期入替では44銘柄が新規採用、41銘柄が除外されました。

入替後に構成銘柄数は400社に戻り、2024年は8月30日付で新構成に移行しています。「日本版400選」とも呼ばれるこの指数はGPIF(年金基金)など国内機関投資家にも採用され、連動する投資信託やETFも多く存在します。そのため、構成銘柄の交代は一定の需給インパクト(需給=需要と供給のバランスによる株価変動要因)をもたらします。

指数リバランスが株価に与える影響

指数の銘柄入替(リバランス)は、関連銘柄の株価に短期的なインパクトを与えることが知られています。大きく分けて「採用(組入れ)」と「除外」の場合で需給の動きが異なります。

  • 新規採用される銘柄は、指数連動のパッシブファンドやETFが組み入れのための買いを行うため、発表から実施日までに株価が上昇しやすい傾向があります。特にMSCIのように海外投資家も追随する指数では、採用銘柄に対する買い需要は莫大です。実際、大和証券の試算によれば、MSCI採用候補の西武HDではパッシブファンドの買い需要が平均出来高の約10日分にも相当すると見込まれました。良品計画(MUJI)で約2.7日分、川崎重工で0.5日分と試算されており、特に西武HDのように浮動株比率が低めで出来高が平時少ない銘柄では需給インパクトが大きいことがわかります。
  • 除外される銘柄は逆に、指数から外れることでパッシブファンドの売却が見込まれ、株価下落圧力となります。例えば大和証券はMSCI8月見直しでホシザキ、リコー、小野薬品工業の除外を予想しており、これらの銘柄には機関投資家の売り需要が発生する懸念があります。もっとも、除外銘柄は往々にして業績不振や低評価が続いて株価も下落基調にある場合が多く、事前にかなり織り込み済みであるケースも少なくありません。そのため除外発表直後に急落しても、その後はリバウンド(自社株買いや見直し買い)で下げ渋るパターンも見られます。
  • 先回り買い・売り(思惑買い/売り): 指数入替は事前に予想が可能なため、一部の投資家は発表前から有力候補を先回りして売買ます。2025年6月末には早くも「MSCI採用有力」と報じられた西武HDに買いが集まり、上場来高値を更新しました。このようにイベント前に株価が動く傾向がある点にも注意が必要です。先回りの動きが大きかった銘柄は、実際の組入れ日近辺で材料出尽くしとなり短期的な反落を招くケース(いわゆる「指数イベント効果」による乱高下)もあります。

以上のように、指数リバランスでは需給主導の株価変動が起こりやすいものの、中長期的には企業業績やファンダメンタルズに収れんしていきます。採用=無条件の好材料、除外=悪材料と短絡せず、なぜその銘柄が採用(除外)されるのか背景を分析することが重要です。

指数採用は往々にして「業績好調・指標優良」の結果であり、業績モメンタムが今後も続くかを見極める必要があります。同様に除外銘柄も「低ROEや赤字等の蓄積」の結果であれば、その要因が構造的か一時的かを考えることで、割安な見直し買いのチャンスになる可能性もあります。

以下では、2025年8月のMSCI定期見直しとJPX日経400定期入替で特に注目される銘柄について、新規採用・除外の理由や需給インパクト、過去の傾向を解説します。

2025年8月MSCI定期見直し:注目の採用・除外候補

2025年8月のMSCIジャパンスタンダード指数見直しでは、日本株の新規採用3銘柄・除外3銘柄が発生する可能性が指摘されています(現在の構成銘柄数183社から増減なしの見通し)。

大和証券のリポート(6月末時点)によれば、「良品計画」「西武ホールディングス(西武HD)」「川崎重工業」の3社が新規採用候補として有力視されています。

一方、「ホシザキ」「リコー」「小野薬品工業」の3社が除外候補上位に挙げられています。以下、それぞれの銘柄の動向を見てみましょう。

新規採用候補

西武ホールディングス (9024)

  • 選定理由: 西武鉄道やプリンスホテルを傘下に持つ西武ホールディングスは、資産売却などの構造改革により財務改善が進み、株価も回復傾向にあります。指数採用への期待が高まった6月末には、先回り買いによって株価が急伸し、上場来高値を更新しました。
  • 推定される影響: 大和証券の試算によると、MSCI組み入れ時のパッシブ買い需要は、発表時点の平均出来高の約10日分にも相当すると見込まれています。
  • 低流動性銘柄への大きな影響: この極めて高いパッシブ買い需要(平均出来高の10日分)は、指数リバランスが短期的な株価に与える影響がいかに大きいかを示しています。特に、浮動株比率が低い、あるいは平時の出来高が少ない銘柄では、このような需給インパクトが顕著に現れ、発表から実施日までの間に株価が急速に上昇する可能性があります。これは、市場が将来の確実な買い需要を織り込もうとする動きの結果です。

良品計画 (7453)

  • 選定理由: 「無印良品」を展開する良品計画は、近年業績低迷に苦戦していましたが、構造改革や商品戦略の見直しにより利益回復の兆しが見えています。時価総額が再び拡大し、MSCIの基準に達した可能性があり、新規採用候補に浮上しました。
  • 推定される影響: パッシブ買い需要は、平均出来高の2.7日分程度と見積もられています。
  • 市場の織り込みと流動性: 西武HDほどではないものの、平均出来高の2.7日分という数字は、依然として相当量の機械的な買い需要を示しています。これは、たとえ広く知られた企業であっても、指数組み入れが株価に目に見える流動性向上と価格上昇をもたらす可能性を示唆しています。市場がリバランス効果を完全に織り込んでいない場合、発表後の価格調整が起こり得ます。

川崎重工業 (7012)

選定理由: 航空エンジン、鉄道車両、防衛装備などを手掛ける川崎重工業は、特に防衛・航空分野の追い風もあり業績が好調です。株価も上昇基調にあり、MSCIの時価総額基準をクリアすると期待されています。受注増による業績モメンタムの強さも評価されています。

推定される影響: パッシブ買い需要は、0.5日分と試算されています。

需給インパクトの銘柄特性依存性: 他の2社と比較して需給面でのインパクトが小さい(0.5日分)という試算は、川崎重工業がより高い流動性や大きな浮動株比率を持っている可能性を示唆しています。これは、パッシブ買い圧力が市場に比較的容易に吸収され、短期的な株価反応が抑制されることを意味します。このことは、リバランスの定量的な影響が銘柄固有の特性に大きく依存するという事実を強調しています。

除外候補

ホシザキ (6465)

  • 選定理由: 業務用冷蔵庫など厨房機器大手のホシザキは、海外展開も進めてきましたが、直近は業績の伸び悩みや収益性低下が指摘されています。株価も冴えず、MSCI構成のボーダー圏と見なされ、除外候補上位に挙げられました。
  • 影響: 除外が決定すれば、パッシブファンドによる売りが発生する可能性があります。
  • ファンダメンタルズの反映: ホシザキの事例は、指数除外がしばしば悪化するファンダメンタルズを反映している典型的な例です。機械的な売りは、すでに存在するネガティブな市場センチメントを増幅させる二次的な効果をもたらすでしょう。

リコー (7752)

  • 選定理由: 複合機などオフィス機器で知られるリコーは、ペーパーレス化などの構造的逆風により業績低迷が続いています。株価も低迷し時価総額順位が低下、MSCI除外リスクが高まっています。
  • 影響: 除外時には一定の売り需要が見込まれますが、すでに低PBR(純資産割れ)状態であり、指数除外後には構造改革や見直し買いに期待する声もあります。
  • 売られすぎた除外銘柄における逆張り機会: リコーの低PBRと「見直し買い」の可能性に関する言及は、逆張り投資戦略の概念を導入しています。除外が予想され、すでに業績不振と先行きの不透明感から株価が大幅に下落している銘柄は、機械的な売りが出尽くした後に、その本質的価値に対して過度に売られすぎている場合、中長期的なリバウンドの機会を提供する可能性があります。ただし、これは一時的な過小評価と構造的な事業衰退を見極めるための綿密なファンダメンタルズ分析を必要とします。

小野薬品工業 (4528)

  • 選定理由: 免疫治療薬「オプジーボ」で有名な製薬会社ですが、主力薬の特許切れによる業績先行きの懸念から株価が軟調です。時価総額順位が相対的に低下し、MSCI除外候補に挙がりました。
  • 影響: 製薬セクターは業界要因で売られやすい局面にあり、除外となれば機械的な売りが出る恐れがあります。
  • セクター固有のリスクと指数適格性: この事例は、製薬業界における特許切れのようなセクター固有のリスクが、指数適格性の重要な決定要因となることを示しています。機械的な売りは既存の下降圧力を増幅させる可能性がありますが、企業のR&Dパイプラインや事業多角化戦略の徹底的な分析は、長期的な価値を見極める上で不可欠です。

MSCIジャパン 2025年8月リバランス候補:採用・除外案

以下の表は、MSCIジャパンスタンダード指数のリバランスによって影響を受ける可能性が高い特定の企業を、比較分析したものです。これにより、投資家はポートフォリオ内の関連企業を迅速に特定し、予想される需給ダイナミクスを把握することができます。

企業名提案される行動主な選定理由推定されるパッシブインパクト
西武ホールディングス新規採用候補構造改革、財務改善、株価回復平均出来高の約10日分のパッシブ買い
良品計画新規採用候補利益回復、時価総額拡大平均出来高の約2.7日分のパッシブ買い
川崎重工業新規採用候補業績好調(防衛・航空)、業績モメンタム平均出来高の約0.5日分のパッシブ買い
ホシザキ除外候補業績伸び悩み、収益性低下パッシブ売り圧力
リコー除外候補構造的逆風、時価総額順位低下、低PBRパッシブ売り圧力;低PBRによるリバウンドの可能性
小野薬品工業除外候補主力薬特許切れ懸念、株価軟調機械的な売り圧力

過去のパターンと留意点

MSCI指数入替では、上記のように採用候補銘柄は事前に株価上昇(思惑買い)し、除外候補銘柄は下落(思惑売り)する傾向があります。実際の発表後、採用決定銘柄はイベント実施日にかけさらに上昇する傾向がありますが、実施日直後に利益確定売りで反落するケースもあります。

一方、除外決定銘柄は発表直後に下落した後、悪材料出尽くしで下げ止まることも多いです。指数イベントによる短期変動に振り回されず、中長期の企業価値に照らして割高・割安かを冷静に判断することが大切です。

2025年8月JPX日経400定期入替:注目の採用・除外候補

2025年のJPX日経400定期入替では、約40銘柄前後の大量入替が見込まれています。大和証券のクオンツ分析では39銘柄の新規採用、36銘柄の除外を予想しており、前年と同程度の入替規模になりそうです。

入替候補にはコロナ禍から業績復活を遂げた企業ROE改善著しい企業が名を連ねる一方、業績低迷や財務悪化でスコアを落とした企業が除外候補となっています。

加えて今年から導入される「評判リスク」基準にも注目です。不祥事などで社会的信用を損ねた企業は除外されやすくなるため、昨年来データ改ざん問題の発覚した住友ゴム工業(タイヤ大手)などは注意が必要でしょう。

新規採用が有力視される銘柄

ANAホールディングス (9202)

  • 選定理由: 全日本空輸(ANA)の持株会社であるANAホールディングスは、コロナ禍で巨額赤字に陥りJPX400から除外されましたが、需要回復に伴い業績がV字回復しています。3年累積営業利益が黒字転換し、ROEも改善しており、スコア上位に浮上した模様です。旅行需要の回復と円安が追い風となり、業績モメンタムも強く、再採用候補として注目されています。
  • 回復企業の選定: ANAの再採用の可能性は、JPX400が企業の堅調な財務回復と資本効率の改善を評価する傾向にあることを示す好例です。その再入は、日本の旅行・観光セクターにおける広範なファンダメンタルズ回復トレンドの兆候となるでしょう。

パーク24 (4666)

  • 選定理由: 駐車場「タイムズ」を運営するパーク24は、コロナ禍の外出自粛で一時苦戦しましたが、規制緩和により駐車場利用が戻り業績が持ち直しています。ROE改善とともに株価も上昇基調にあり、選定スコアが上がったと見られます。駐車場ビジネスの安定収益性も魅力です。
  • 逆境からの回復: パーク24の候補入りは、ANAと同様に、逆境を乗り越え、収益性と資本効率を回復させた企業を指数が評価する能力を示しています。

東北電力 (9506)

  • 選定理由: 東北地方の電力会社である東北電力は、燃料高騰で近年業績が悪化していましたが、電気料金値上げなどで2023年度以降は収支改善が見られます。財務テコ入れで3年損益が黒字圏に回復すれば、新規採用の可能性があります。公益企業の採用は珍しいですが、業績改善銘柄として候補入りしました 。
  • 伝統産業における評価: 東北電力のような公益企業が採用候補となる可能性は、JPX400がROEと累積営業利益という厳格な定量基準に焦点を当てていることを示しています。伝統的で規制の厳しい産業の企業であっても、規律ある財務管理と収益性回復を通じて「投資魅力」を高めることができるという事実を裏付けます。

リログループ (8876)

  • 選定理由: 企業福利厚生代行や不動産事業を手掛けるリログループは、安定した高収益体質でROEが高く、毎年成長を続けています。これまで指数入りを逃していましたが、継続的な業績拡大によりスコア上位に食い込んだ模様です。安定成長&高ROE銘柄として新規採用が期待されます。
  • 持続的パフォーマンスの評価: リログループは、JPX400が捉えようとしている「安定した高パフォーマンス企業」の典型例です。その一貫した高ROEと成長は強力な採用理由となり、指数が持続的な資本効率と株主価値創造を示す企業を好む傾向を裏付けています。

レオパレス21 (8848)

  • 選定理由: 賃貸アパート大手のレオパレス21は、一時は施工不備問題で経営危機に陥りましたが、支援を受けつつ構造改革を進め直近は黒字転換しました。自己資本も回復しROE改善が著しく、スコア急上昇で候補入りしたと考えられます。長年低迷していた銘柄の劇的復活例であり、ターンアラウンド型の採用候補として注目です。
  • 劇的なターンアラウンドの評価: レオパレス21は、JPX400が過去の重大な課題を克服し、財務健全性とガバナンスを根本的に改善した企業を評価する能力を持つことを示す、説得力のある「ターンアラウンドストーリー」です。これはまた、かつて厳しい社会的監視に直面した企業が、劇的な事業的・財務的回復を通じて名声を取り戻せるという「恥の指数」の側面を強化するものです 。  

除外が懸念される銘柄

東海カーボン (5301)

  • 選定理由: 炭素製品メーカーの東海カーボンは、電極等の市況悪化で業績が落ち込み、ROEが低下しています。株価も冴えず選定スコア順位を大きく下げた模様で、除外候補上位となっています。
  • 景気循環と収益性: 東海カーボンの事例は、景気循環型産業の企業が、事業サイクルの下降期に収益性指標が低下し、その結果JPX400のスコアに影響を受ける典型的な例です。これは、指数が持続的な収益性に敏感であることを強調しています。

住友ゴム工業 (5110)

  • 選定理由: タイヤ大手「ダンロップ」ブランドで知られる住友ゴム工業は、検査データ不正問題が発覚し信用を失墜しました。業績面でも原材料高騰などで収益が悪化し、ROE・営業利益とも低水準に沈んでいます。新たに導入された評判リスク基準にも抵触する恐れがあり、除外は避けられないとの見方が強いです。
  • 新たな基準の直接的影響: これは、新たな「評判リスク」基準の最も直接的かつ影響力のある適用例です。たとえ財務指標がボーダーラインであったとしても、スキャンダルがその除外を決定づける可能性が高いです。これは、企業倫理と誠実さが指数組み入れにとってますます重要になっているという強力なメッセージを市場に送るものであり、「恥の指数」の側面を強化します 。  

その他の候補

ソフトバンクグループや一部の電力会社など、昨年除外された大型株は、累積赤字や低いスコアが続くため、引き続き指数外に留まる見通しです。

これは、JPX400の基準が長期的な性質を持つことを裏付けています。構造的な問題や長期的な業績不振を抱える企業は、たとえ大型株であっても、容易に再入することはできません。指数は単なる時価総額の反映ではなく、特定のパフォーマンスとガバナンス指標に基づいて選定されたリストであり、「投資魅力の高い企業」を強調するように設計されています。

JPX日経400 2025年8月リバランス候補:採用・除外案

以下の表は、JPX日経400のリバランスによって影響を受ける可能性が高い特定の企業を、明確に比較したものです。採用または除外の理由、主要なスコアリング要素に対するパフォーマンス、そして該当する場合は重要な「評判リスク」要因を詳細に示しています。

この構造化された提示は、投資家が指数変更の根本的な要因と、それがポートフォリオに与える潜在的な影響を理解する上で非常に価値があります。

企業名提案される行動主な選定理由(パフォーマンス/ガバナンス)評判リスクに関する注記
ANAホールディングス新規採用候補V字回復、3年累積営業利益・ROE改善該当なし
パーク24新規採用候補コロナ禍からの事業回復、ROE改善該当なし
東北電力新規採用候補燃料高騰後の財務改善、3年累積利益黒字化の可能性該当なし
リログループ新規採用候補安定した高収益性、高ROE、継続的な成長該当なし
レオパレス21新規採用候補危機からの劇的ターンアラウンド、黒字転換、ROE大幅改善該当なし
東海カーボン除外候補市況悪化による業績低迷、ROE低下該当なし
住友ゴム工業除外候補データ改ざんスキャンダル、財務パフォーマンス低迷(ROE、営業利益)新たな「評判リスク」基準により除外の可能性極めて高い

過去のパターンと留意点:

JPX400入替では、業績や株主還元に改善の見られた銘柄が採用され、逆に低収益・不祥事の銘柄が落選するという傾向が一貫しています。昨年2024年には、オリエンタルランドやJR東海など業績復調組が採用され、一方でソフトバンクGや九州電力など利益低迷組が除外されました。

指数採用は企業にとって名誉な反面、除外は経営層にもプレッシャーとなるため、「株主を意識した経営」へのインセンティブともなっています。

投資家目線では、採用銘柄は概して質の高い企業ですが株価は短期的に割高になりがちであり、一方除外銘柄は質に問題がある反面、行き過ぎた売りで割安になる可能性もあります。入替銘柄リストをチェックし、自分のポートフォリオや注目銘柄が含まれていないか確認しておくと良いでしょう。

投資戦略のヒント:先回り買い・逆張りと業績モメンタム

指数イベントに際して投資家が取れる戦略として、いくつかの視点があります。

先回り買い戦略(イベントドリブン)

今回のように事前に入替が予想できる場合、発表前に採用候補銘柄を仕込む戦略があります。実際に西武HDのケースでは報道直後に株価が急騰し、先回りの妙味を示しました。

うまく当たれば短期間で利益を得られますが、人気化しすぎた銘柄は発表後に反落するリスクもあります。先回りする場合はターゲット銘柄の業績や需給を綿密に分析し、リスク管理を徹底することが重要です。

逆張り戦略(除外銘柄の拾い場)

指数除外が決まった銘柄は、一時的に機械的な売りで売られ過ぎることがあります。本質的価値に比べ株価が過度に下がった場合、逆張りの買いチャンスになり得ます。特に「一時的な要因で業績が悪化しただけ」の企業や「不祥事で売られたが事業価値は健在」なケースでは、見直し買いで中長期的にリバウンドする可能性があります。

ただし、構造的に低収益な企業は除外後も低迷が続く恐れがあるため、見極めが肝心です。

業績モメンタムへの注目

指数採用は往々にして業績の上向きトレンドを反映しています。その企業が今後も高ROEを維持し成長を続けられるか注目しましょう。仮に指数効果で短期的に株価が割高になっても、中長期の成長が本物なら押し目は買い場になるかもしれません。

逆に除外銘柄でも、改革次第で業績改善が見込めるならば将来的に「復活組」として再採用される可能性もあります(過去には任天堂やソニーが一度外れてから復帰した例もあります)。

業績モメンタムと株価水準を睨みつつ、指数イベントを投資判断の一材料として活用すると良いでしょう。

まとめ

2025年8月のMSCIジャパンスタンダード指数とJPX日経400の入替は、多くの銘柄に需給インパクトをもたらす重要イベントです。指数の仕組みと選定基準を理解し、注目銘柄の動向や背景理由を押さえることで、短期のトレード機会だけでなく中長期の投資判断にも役立てることができます。

指数採用・除外は結果であって原因ではないことを念頭に、足元の株価変動に惑わされず企業の本質的価値に目を向ける姿勢が大切です。指数入替シーズンを上手に活用し、より賢明な投資判断につなげていきましょう。

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