【7月テーマ銘柄】2025年参院選に向けた注目銘柄と過去事例から見る投資ポイント

【7月テーマ銘柄】2025年参院選に向けた注目銘柄と過去事例から見る投資ポイント

2025年夏までに第27回参議院議員通常選挙(国政選挙)が行われる予定です。一般に国政選挙は株式市場でも大きな関心事であり、過去の傾向として「与党の勝利は選挙前後の株高につながった」と言われます​。選挙によって政策の方向性が変わる可能性があるため、市場参加者は関連テーマの銘柄に注目しがちです。本記事では 過去の国政選挙で株価や出来高が盛り上がった主な銘柄と、その当時の業績状況 を分析し、2025年の参院選で注目が期待される銘柄5選 をテーマ別に選出します。

過去の国政選挙で盛り上がった銘柄と業績の傾向

国政選挙の前後には、選挙実施に直接関わる企業や、選挙で争点となる政策テーマに関連する企業の株価・売買高が活発になる傾向があります。まずは過去の例から、どのような銘柄が物色され、当時の業績にどんな影響があったかを見てみましょう。

選挙実施で恩恵を受ける「選挙関連」銘柄

国政選挙が行われる際には、その運営に必要な物資やサービスを提供する企業に特需が発生します。例えば ムサシ(7521)グローリー(6457)投票用紙の集計機・分類機や自動交付機など選挙関連機器のトップ企業であり​、選挙ごとに大きな受注を得ます。また、封筒大手の イムラ封筒(3955)選挙通知ハガキや選挙用封筒の需要増から「選挙関連銘柄の代表格」と評される企業です​。これらの銘柄は選挙実施が近づくといち早く物色される傾向があり、実際に選挙需要が業績に表れるため先回り的に株価が動き出すケースが見られます​。直近の例では、新規上場した イタミアート(東証グロース・168A) 2024年10月の衆議院解散・総選挙方針報道を受けて連日ストップ高となりました。同社は選挙用ののぼり旗やたすき等の販促物を手掛けており、選挙特需で業績上振れへの期待から大量の買い注文が殺到したのです。

こうした企業の業績は、国政選挙がある年に大きく伸長します。実際ムサシは国政選挙の実施年に利益が大幅増となる傾向があり、選挙実施が決まると通期業績予想を上方修正することもしばしばです​。直近でも2024年10月の衆院選実施により、ムサシの2025年3月期は売上高予想を若干下回ったものの営業利益は従来予想23億円→実績33億円と大幅な上振れ着地となりました。これは衆議院選挙の実施で自社開発の選挙機材売上が伸び、利益を押し上げたことが要因です​。イムラ封筒も官公庁需要に強く、マイナンバー通知カード発送などの実績もあるため選挙時の業績貢献が期待できます​。このように、選挙そのものが業績を押し上げる企業では、選挙が近づくと株価・出来高が顕著に盛り上がる傾向があります。

世論調査・選挙システム関連の銘柄

選挙に関連して世論調査や開票システム、選挙活動支援に関わる企業も注目されます。例えばトランス・コスモス(9715)パソナグループ(2168)は選挙の世論調査・出口調査の業務受託で注目されるケースがあります​。また、以前の実績としてパイプドHDは電子投票ソリューションを提供し、自社で政治・選挙プラットフォーム「政治山」を運営していることから「選挙の電子化」関連として物色されました​。同様に、ネットリサーチ企業の GMOリサーチ&AI(3695) は「選挙に絡む各種調査需要増加」の思惑で買われ​、2020年前後の衆院選観測時にはこれらIT系銘柄の株価が急騰しています。もっとも、この分野の企業は選挙特需による業績インパクトが直接には大きくない場合もあり、テーマ先行の短期的な値動きになりがちです。実際、パイプドHDやGMOリサーチ&AIの業績は基本的にストック型ビジネスですが、選挙関連収入は全体の一部であり、株価は選挙が近い時期に短期的な盛り上がりを見せた後、収益動向に沿って落ち着く傾向があります。選挙関連のIT銘柄に投資する際は、実際の業績貢献度合いと株価上昇のギャップにも注意が必要です。

政策テーマ(公共事業・防衛・エネルギーなど)関連銘柄

選挙では各政党の掲げる政策公約が注目されるため、そのテーマに関連する企業の株価が動くこともあります。代表的なのは公共事業(インフラ投資)関連です。2012年末の総選挙で自民党が政権奪還した際には、同党が掲げた「国土強靱化」政策による大規模インフラ投資への期待から建設株が総じて堅調となりました。実際に自民党大勝を受けて公共投資拡大への期待が高まり、建設セクターは年初来高値を付ける銘柄が相次いだほどです​(例:ピーエス三菱<1871>など建設株が選挙前後に急騰​)。もっとも、こうした大型株は事前にある程度織り込まれる傾向もあり、選挙結果判明後は利益確定売りに押される展開も見られました​。

防衛関連も近年注目度の高いテーマです。直近の2022年7月の参院選では防衛費増額が争点となり、防衛産業への追い風期待から重工業株などが物色されました。特にロシア・ウクライナ紛争や周辺安全保障環境の変化も追い風となり、川崎重工業(7012)IHI(7013)といった防衛装備品を手掛ける企業の株価が一時5~8%急騰する局面もありました​。防衛関連は業績面でも、政府の防衛予算拡大が実現すれば中長期的に受注増・収益増加が期待できるものの、実際の契約獲得には時間を要するため短期的にはテーマ性で株価が動きやすい点に留意が必要です。

エネルギー政策も選挙で争点化しやすいテーマです。たとえば2014年の衆院選では原発再稼働の是非が議論され、結果的に自公勝利で原発再稼働期待が高まると東京電力(9501)関西電力(9503)がストップ高になるほど買われました。逆に再生可能エネルギー推進が掲げられれば、再生エネ関連企業(太陽光・風力発電事業者や蓄電池メーカー等)の株価が上昇する傾向があります。2009年の政権交代期には太陽光発電の固定買取制度導入期待から関連銘柄が活況を呈した例もあります。再生エネ関連は政策次第で補助金や規制が大きく変わるため、業績見通しが政策動向に左右されやすい点を認識しておきましょう。

以上のように、国政選挙のたびに「選挙そのもの」による特需銘柄「政策テーマ」による関連銘柄が市場で盛り上がる傾向があります。それぞれ株価急騰の背景には実需(特需)による業績押上げがある場合と、将来政策期待による思惑先行の場合があります。過去の事例を踏まえ、この違いを認識することが重要です。

2025年参院選で注目される可能性のある5銘柄

上記の分析を踏まえ、2025年の参議院選挙で物色が期待されるテーマと銘柄を5つ選出します。今年の選挙で焦点となりそうな「公共事業」「防衛」「再生可能エネルギー」「マイナンバー・デジタル行政」などのテーマに沿って、関連銘柄をピックアップしました。それぞれ 選定理由(テーマとの関連)投資ポイント を解説します。

1. イムラ(3955)選挙インフラ(選挙事務)関連

選定理由: イムラ封筒は封筒・はがき大手で、国政選挙の際に各有権者に郵送される「投票所入場券」や選挙広報用封筒などを多数手掛けています。官公庁向け需要に強く、マイナンバー通知カードの封入発送なども行ってきた実績から選挙関連銘柄の中核と位置付けられる企業です。2025年参院選でも全国規模の郵送物需要が見込まれるため、選挙特需の恩恵を直接受ける銘柄として期待されます。

業績状況と注目点: 同社は安定した封筒需要に加え、国勢調査や選挙といったビッグイベント時に売上が跳ね上がる傾向があります。過去にも大型選挙があった期には業績が上振れしており、選挙需要がしっかり業績に表れる点が特徴です​。現在も自治体向け事務受託など官需が堅調で、選挙実施が業績押上げ材料となる可能性があります。

投資上のポイント・リスク: 選挙実施が確定すれば業績期待から株価上昇が見込まれますが、既に選挙前提で株価が先行して動く傾向もあります​。また、同社の事業は成熟分野ゆえ平常時の成長性は高くなく、イベント後は業績が平常運転に戻る点に注意が必要です。選挙特需を織り込んで株価が短期的に過熱気味となった場合、選挙終了後の反動や業績の平常化で調整が入るリスクもあります。長期投資ではなくイベントドリブンの短期勝負になりやすい点を心得ておきましょう。

2. 鹿島(1812)公共事業・インフラ投資関連

選定理由: 鹿島建設はスーパーゼネコンの一角で、大型インフラや都市再開発に実績のある建設会社です。与野党問わず景気対策として公共事業拡大策が掲げられる場合、真っ先に恩恵を受ける企業群と言えます。特に自民党は「国土強靱化」の名のもとに防災・インフラ老朽化対策を推進しており、2025年参院選でも公共投資拡大が争点となれば業界全体への追い風が期待できます​。鹿島はダム・道路・橋梁から都市再開発まで幅広く手掛けるため、政策恩恵を享受しやすい立場にあります。

業績状況と注目点: 足元の業績は再開発やリニア新幹線工事など大型案件の受注を背景に堅調です。ただし建設業界全体では資材高騰や人件費上昇が利益率を圧迫する懸念もあります。政府が大型補正予算などで公共事業費を積み増せば、新規受注による売上増効果が期待できます。過去2012年の自民圧勝時には建設各社の受注高が伸び、鹿島の業績も回復基調が鮮明になりました。2025年も選挙後の補正予算や政策動向に注目です。

投資上のポイント・リスク: 政策依存度が高い点が最大のポイントです。選挙で公共投資拡大が掲げられればプラス材料ですが、仮に財政健全化や緊縮色が強まると期待外れとなる可能性もあります。また、大型株ゆえ選挙の思惑は事前に株価へ織り込みやすく、選挙結果判明後には「材料出尽くし」で短期的に売られるリスクがあります​。業績面ではインフラ投資が本格化しても実際の売上・利益寄与は案件進行に伴い中長期で表れるため、短期では劇的な変化は生じにくいでしょう。バリュエーション面では建設株は近年低PER水準にあるものの景気敏感株でもあるため、景気後退リスクなど外部要因にも注意しつつ、政策期待と株価水準のバランスを見極めることが重要です。

3. 三菱重工業(7011)防衛・安全保障関連

選定理由: 三菱重工は航空機・宇宙から発電設備まで手広く手掛ける日本有数の重工業企業ですが、中でも防衛分野では戦闘機やミサイル、艦船など自衛隊向け主要装備を担う国内最大の防衛関連メーカーです。政府は防衛費の対GDP比2%への増額を目標としており、2025年参院選でも安全保障政策が大きな論点になると見込まれます。防衛費拡大が続けば、同社には大型案件(次期戦闘機開発、長射程ミサイル量産など)の受注機会が増えるため、中長期的な業績貢献が期待されます。また有事リスクの高まり局面では「力による平和」思惑から防衛関連株に短期資金が集まりやすい傾向もあります​。

業績状況と注目点: 近年の三菱重工はプラント事業再編や旅客機開発の凍結など経営課題も抱えていますが、防衛・宇宙分野は安定収益源となっています。防衛省関連の受注は国家予算に左右されますが、2023年度からの防衛予算増額で既にミサイルや艦船の増産が計画されており、同社の受注高増加に表れ始めています。選挙後に防衛増強路線が維持・加速されれば、来期以降の業績見通し上ブレにつながる可能性があります。ただ重工業ゆえプロジェクトの採算管理も重要で、特に新規大型開発では開発負担も増える点は注視点です。

投資上のポイント・リスク: 政策の継続性と実現性が鍵となります。与党が選挙で防衛費増方針を支持されれば追い風ですが、仮に政局が不安定化し政策停滞となれば期待倒れリスクがあります。加えて三菱重工自体の事業ポートフォリオの分散にも留意が必要です。同社株は防衛テーマで短期物色されることがありますが、実際の収益は発電設備や産業機械、民間航空など多岐にわたります。そのため、防衛関連で過度に株価が上昇するとバリュエーションが割高になる懸念もあります。一方で大型株で流動性も高く中長期の業績安定感もあるため、短期テーマ株としてというより中長期視点で政策恩恵を狙う投資に適した銘柄と言えるでしょう。政策実行の進捗と受注動向をチェックしつつ、過熱感には注意したいところです。

4. レノバ(9519)再生可能エネルギー関連

選定理由: レノバは再生可能エネルギー発電所(太陽光・風力・バイオマス等)の開発・運営を行う企業です。カーボンニュートラル実現やエネルギー安全保障の観点から、再生エネ普及策は各党が積極的に掲げるテーマとなっています。特に野党側は原発依存低減と再生エネ推進を訴える可能性が高く、与党もグリーントランスフォーメーション(GX)政策を進めています。2025年参院選を通じて再エネ促進策(例えば風力発電の拡大支援や再エネ投資促進の補助制度強化など)が打ち出されれば、国内有数の再エネ専業であるレノバにとって事業拡大の追い風となるでしょう。

業績状況と注目点: 同社の収益は発電所の売電収入による安定部分と、新規案件開発時のスポット利益から成ります。近年は大型の洋上風力案件の獲得を目指していますが、政府の入札制度見直しなど不透明要因もあり、株価は乱高下してきました。政策の後押し次第で今後の案件パイプラインが充実すれば中期的な売上・利益成長が期待できます。実際、再エネ推進策への期待が高まった2020~21年頃には株価が急騰し時価総額が一時数千億円規模に達しました。しかし計画遅延や入札敗退が伝わると急落するなど、業績予想の変動が大きい点には注意が必要です。

投資上のポイント・リスク: 再生エネ関連株は政策恩恵と規制リスクの両刃です。選挙を契機に追い風政策が出ればテーマ性で買われやすい反面、制度変更(例:固定価格買取制度の見直しや入札条件の変更)によっては逆風にもなり得ます。レノバの場合、成長期待から株価収益率(PER)が高めに評価される傾向があり、バリュエーションの過熱に注意が必要です。また開発には巨額の資金調達が伴い、金利上昇局面では調達コスト増の影響も懸念されます。したがって、再エネテーマで盛り上がる局面でも業績の確実性と株価水準を見極めることが重要です。政策発表→実行までタイムラグもあるため、短期の思惑上げに飛び乗った場合は早めの利確判断も検討し、一方で長期視点では政府のエネルギー基本計画など大局的な方向性を確認しておくと良いでしょう。

5. NEC(6701)マイナンバー・デジタル政府関連

選定理由: NECは国内ICT分野の大手で、デジタル政府・自治体向けシステムに深く関与しています。特にマイナンバーカードのシステム基盤(公的個人認証システムなど)や自治体の行政システムで実績があり、政府のデジタル政策強化の恩恵を受ける代表的企業の一つです。岸田政権時はマイナンバーカードと運転免許証の統合や行政手続きのデジタル化推進に本腰を入れており​、2025年の選挙でもデジタル行政の利便性向上が重要なアジェンダとなる可能性があります。マイナンバーの普及・活用が国策として強まれば​、関連ソリューション提供企業であるNECに新規案件や追加受注の機会が増えることが期待されます。

業績状況と注目点: NECの業績は5G通信インフラやエンタープライズ向けDXソリューションなど幅広い分野で構成されていますが、公共・社会基盤向け事業は安定収益源です。マイナンバー関連ではこれまでカード交付率向上策に伴うシステム対応やコールセンター業務などで売上計上がありました。今後は健康保険証の統合や行政手続オンライン化など大規模プロジェクトが控えており、官公庁向けIT需要が持続的に拡大する見通しです。ただし、大手ゆえ単一のプロジェクトが業績全体に占める割合は限定的で、マイナンバーだけで業績が大きく跳ねることはない点は留意しましょう。

投資上のポイント・リスク: デジタル政府関連は中長期的な成長テーマであり、NECのような実力企業は安定感があります。一方で官需ビジネスは政治的な方針転換や予算執行状況に左右されるリスクがあります。選挙でデジタル政策に逆風となる事態(例えばマイナンバー制度への信頼低下から運用見直し論が高まる等)が起きれば、関連案件が遅延・縮小する懸念もゼロではありません。またNEC株価は近年上昇基調にあり、業績に対する評価が適正水準か見極める必要があります。大型株で流動性も高く腰を据えた投資に向く反面、急激にテーマ買いで上昇するタイプではないため、短期的な値動きは穏やかかもしれません。むしろ選挙による政策方向の確認後に、腰を据えて保有する長期銘柄として検討する価値があるでしょう。

投資リスクとまとめ

国政選挙関連のテーマ株は魅力的に映りますが、投資する際には以下のリスクや注意点も考慮しましょう。

  • 政策の不確実性: 選挙の結果次第で政策の方向性が変わる可能性があります。期待された政策が実現しなかったり先送りされた場合、関連銘柄の見通しも変化します。選挙前の公約だけで楽観しすぎず、結果とその後の政策実行を見極める姿勢が大切です。
  • 業績伴わない思惑相場: 選挙テーマで急騰する銘柄の中には、実際の業績貢献が小さいものもあります​。株価が先行し過ぎてバリュエーションが過熱していないか注意しましょう。業績の裏付けがない上昇は長続きしない傾向があり、イベント通過後に急落するリスクがあります。
  • 業績モメンタムの変化: 選挙特需で一時的に好業績となっても、その後に需要が反動減となったり本業の成長力が乏しければ株価は失速しかねません。例えば選挙関連の受注で今期は増収増益でも、来期にイベントが無ければ減収となる可能性があります。一過性の特需か持続的な成長かを見定めて投資判断することが重要です。
  • 外部要因: 選挙テーマとは別に、景気動向や金利動向、地政学リスクといった外部要因が株価に影響を与える点も忘れてはなりません。とくに公共事業や防衛は財政状況、再生エネはエネルギー価格や技術動向、デジタル政策は社会受容性など、それぞれ特有のリスク要因があります。

一般投資家の皆様は、選挙関連銘柄に飛びつく前に以上の点を踏まえつつ、テーマ性と企業の実力・業績とのバランスを冷静に見極めることが大切です。国政選挙は数年に一度の大イベントであり、市場の盛り上がりも大きい反面、短期的な熱狂に流されない冷静さが求められます。適切な情報収集とリスク管理を行いながら、選挙相場を上手に活用した投資判断を心掛けましょう。

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