新NISAではロールオーバーができない?旧NISA資産の正しい扱い方を徹底解説

新NISAではロールオーバーができない?旧NISA資産の正しい扱い方を徹底解説
  • 旧NISAの資産は新NISAにロールオーバーできる?
  • 非課税期間が終わる資産はどうすればいいの?
  • 新NISAへの移行で損をしたくない

2024年から始まった新NISAは旧NISAからのロールオーバーができません。旧NISAの保有資産の扱いに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

この記事では旧NISAで保有する資産の取り扱い方法や新NISAへ移行する際の注意点を解説します。記事を読めば自分に合った最適な資産の移行方法がわかり、新NISAのメリットを最大限に生かせます。

旧NISAの資産は非課税期間内に売却したり、売却した資金で新NISAに再投資したりすることが可能です。制度の違いを理解することで安心して資産形成を続けられます。

新NISAとロールオーバーに関する基礎知識

新NISAとロールオーバーに関する以下の3点を解説します。

  • 新NISAとは2024年1月から始まった税制優遇制度のこと
  • ロールオーバーとはNISAの非課税期間の終了時に新しいNISA口座に移管すること
  • 新NISAではロールオーバーが利用できない

新NISAとは2024年1月から始まった税制優遇制度のこと

新NISAは投資で得た利益に税金がかからなくなるお得な制度です。新NISA口座内で得た利益には、株式や投資信託などの利益にかかる約20%の税金がかかりません。新NISAの概要は以下のとおりです。

項目新NISA
制度実施期間2024年1月~制度恒久化
口座の開設期間恒久化
年間投資枠つみたて投資枠:120万円
成長投資枠:240万円
非課税保有限度額1,800万円(成長投資枠は1,200万円)
非課税保有期間無期限

非課税枠の復活と再利用ができる点も新NISAの魅力です。新NISAは非課税のメリットを最大限に生かしながら、より柔軟な資産運用ができるように設計された制度です。

ロールオーバーとはNISAの非課税期間の終了時に新しいNISA口座に移管すること

ロールオーバーとは旧NISAの非課税期間が終了する際に、保有している金融商品を翌年の非課税投資枠へ移す手続きのことです。ロールオーバーを利用すると非課税で商品を保有し続ける期間を延長できます。

ただし、ロールオーバーを行った分の金額は翌年の非課税投資枠として使われます。翌年に新しく商品を購入したい場合、非課税投資枠が減少してしまうため注意が必要です。

新NISAではロールオーバーが利用できない

新NISAではロールオーバーは使えません。新NISAでは非課税で商品を保有できる期間が無期限になったためです。NISA制度の変更によって期間を延長するためのロールオーバーという仕組み自体が不要になりました。

旧NISAの非課税期間が終わると商品は自動的に税金がかかる課税口座へ移されます。旧NISAの資産を新NISAで運用し続けたい場合は一度商品を売却して、新NISAで商品を買い直す必要があります。

旧NISAの保有資産の取り扱い方法4選

旧NISAで保有する資産の取り扱いには以下の4つの方法があります。

  • 非課税期間満了まで保有する
  • 非課税期間中に売却する
  • 課税口座へ移す
  • 売却して新NISAに再投資する

非課税期間満了まで保有する

旧NISA口座で保有している商品を非課税期間が終わるまでそのまま持ち続ける方法があります。非課税期間満了まで旧NISA口座の商品を保有する方法は、長期的な値上がりを期待して運用を続けたい場合に有効です。

非課税の恩恵を最大限に受けられる点が、非課税期間終了まで旧NISAの商品を保有するメリットです。非課税期間中は分配金を受け取ったり、値上がりしたタイミングで売却したりしても利益をまるごと受け取れます。

旧NISAの保有資産は非課税期間が終わると自動的に課税口座(特定口座や一般口座)へ移されます。最初に買ったときよりも値段が下がった状態で旧NISAの保有資産が課税口座に移ると、税金面で不利になるため注意が必要です。

10万円で買った商品が8万円に値下がりしたときに課税口座に移された場合、新しい取得価額は8万円になります。10万円まで値上がりしてから商品を売却すると2万円の利益が出たとみなされ、2万円に税金がかかります。

課税口座に移管されるタイミングの価格によっては、意図せず税金の負担が増えるケースがあることを理解しておきましょう。

非課税期間中に売却する

旧NISAの保有資産を非課税期間中に売却する方法は有効な選択肢です。旧NISAの保有資産を非課税期間中に売却すると利益が出ている場合に税金がかからず、利益の全額を受け取れます。非課税期間中に旧NISAの保有資産を売却すれば、投資内容を見直す機会になります。

ただし、旧NISAの保有資産を非課税期間中に売却する際は元本割れと機会損失の可能性があるため注意が必要です。旧NISAの保有資産を非課税期間中に売却することは、利益を確実に手元に残したい場合や投資内容を見直したい場合に有効です。旧NISAの保有資産を売却するタイミングは慎重に判断しましょう。

課税口座へ移す

旧NISAの非課税期間が終わった資産は課税口座に移して保有を続ける選択肢があります。旧NISAの保有資産を課税口座に移して保有を続ける方法は、資産を持ち続けたい場合に有効です。

課税口座に旧NISAの保有資産を移したときの商品価格が、新しい取得価格として扱われます。資産を課税口座に移すタイミングで利益が出ているか損失が出ているかで、有利さが大きく変わります。

100万円で買った商品が120万円に値上がりしたタイミングで課税口座に移した場合、新しい取得価格は120万円です。元の取得価格100万円からの利益20万円分には税金がかからず、非課税のメリットを受けられます。

しかし、100万円で買った商品が80万円に値下がりした状態で課税口座に移すと、新しい取得価格は80万円です。値下がりした商品の価格が100万円に戻って売却した場合でも、差額の20万円分が利益と見なされ課税対象になります。

売却して新NISAに再投資する

旧NISAの保有資産を一度売却し、売却した資金で新NISAに再投資する方法は有効な選択肢です。旧NISAの保有資産を売却して新NISAに再投資する方法は、新NISAの非課税枠を最大限に活用したい方におすすめです。

新NISAに再投資する方法は自分の資産の組み合わせを見直し、現在の投資戦略に合った商品に乗り換える良い機会になります。ただし、商品を売却してから買い直すまでの間に価格が変動するリスクがあるため注意が必要です

ロールオーバーができない新NISAで資産運用するメリット3選

ロールオーバーができない新NISAで資産運用するメリットは以下のとおりです。

  • 非課税期間が無期限
  • 投資できる金額が拡大
  • 2つの投資枠を自由に使用可能

非課税期間が無期限

新NISAの最大のメリットは非課税で投資できる期間に上限がなくなった点です。非課税期間が無期限になったことにより長期的な視点で資産運用に取り組めます。旧NISAでは一般NISAで5年、つみたてNISAで20年という非課税期間の制限がありました。

非課税期間が無期限になることで短期的な価格の上下に一喜一憂せずに済みます。新NISAを活用すれば時間を味方につけて資産が育つ「複利の効果」を最大限に生かせます。ライフプランに合わせて、自分の好きなタイミングで売却を判断できる点も新NISAのメリットです。

投資できる金額が拡大

新NISAでは旧NISAと比べて非課税で投資できる金額が大幅に増えました。まとまった資金を効率的に運用できる点が新NISAの魅力です。新NISAにはつみたて投資枠と成長投資枠があり、年間の投資上限額は以下のとおりです。

  • つみたて投資枠:120万円
  • 成長投資枠:240万円

非課税で保有できる上限として、1,800万円の枠が新NISAに新しく設定されました。新NISAでは保有商品を売却すると、売却した商品を買ったときの金額分の非課税枠が翌年以降に復活し、再利用できます。新NISAを活用すれば投資枠の拡大と再利用の仕組みによって、柔軟な資産運用を実現できます。

2つの投資枠を自由に使用可能

新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを自由に組み合わせて利用できます。つみたて投資枠と成長投資枠の買付方法と投資対象商品は以下のとおりです。

項目つみたて投資枠成長投資枠
買付方法毎月決まったタイミングで積立積立投資のほかに自分の好きなタイミングで一括購入が可能
投資対象商品金融庁の基準を満たした投資信託・一部のETF国内外の上場株式や多くの投資信託・ETF

新NISAでは性質の違う2つの枠を同じ年に使えるため、自分の考えに合わせた柔軟な投資が可能です。つみたて投資枠と成長投資枠を併用することで、より自分に合った形で効率よく資産を増やせます。

旧NISAから新NISAに移行する際の注意点3選

旧NISAから新NISAに移行する際の注意点は以下の3点です。

  • 売却益に課税される場合がある
  • 損益通算できない
  • 非課税枠は復活しない

売却益に課税される場合がある

旧NISAで保有していた資産を課税口座に移した場合、売却して利益が出ると税金がかかる場合があります。税金の計算基準が旧NISAで最初に商品を買ったときの価格ではなく、課税口座に移した時点での価格に変わるためです。

課税口座に旧NISAの保有資産を移したときの価格よりも高く売れた場合、差額が課税対象となるため注意が必要です。旧NISAの保有資産は非課税期間中に売却すれば、利益がいくら出ていても税金はかかりません。課税口座へ旧NISAの保有資産を移す際は売却のタイミングに注意しましょう。

損益通算できない

旧NISA口座で損失が出ても特定口座など他の課税口座で出た利益と合算して税金を減らす「損益通算」はできません。NISA口座は利益が非課税になる特別な制度なので、損失が出た場合は税金の計算上「なかったもの」として扱われます。

利益が非課税というメリットがある代わりに、損失が出たときの税金上の助けはNISA口座にはありません。NISA口座では損失を翌年以降3年間にわたって持ち越せる「繰越控除」も利用できないため注意が必要です。

非課税枠は復活しない

旧NISAから新NISAへ資産を移す際は非課税枠の扱いに注意が必要です。旧NISAで購入した商品を売却しても、売却した分の非課税枠は新NISAでは復活しません。旧NISAと新NISAはまったく別の制度として扱われるためです。

新NISAでは商品を売ると、商品を買ったときの金額分の「生涯非課税限度額」が翌年以降に元に戻ります。ただし、新NISAでも年間の投資上限額は年内に商品を売っても復活しない点には注意が必要です。

新NISAのロールオーバーに関するよくある質問

新NISAのロールオーバーに関するよくある質問は以下のとおりです。

  • 新NISAと旧NISAの違いは?
  • 旧NISAで積立中の商品はどうなる?
  • ジュニアNISAのロールオーバーはどうなる?
  • 新NISAへの切り替えに必要な手続きは?

新NISAと旧NISAの違いは?

新NISAと旧NISAの違いは以下のとおりです。

項目新NISA旧NISA
口座の開設期間恒久化2023年まで
年間投資枠つみたて投資枠:120万円
成長投資枠:240万円
つみたてNISA:40万円
一般NISA:120万円
非課税保有限度額1,800万円(成長投資枠は1,200万円)つみたてNISA:800万円
一般NISA:600万円
非課税保有期間無期限つみたてNISA:20年間
一般NISA:5年間

新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を同じ年に一緒に使える点が魅力です。新NISAは旧NISAよりも自由度が高いため、自分のペースで資産運用を進められます。

旧NISAで積立中の商品はどうなる?

旧NISAで続けていた積立投資の設定は2023年末で自動的に終了します。2024年以降も同じ商品を積み立てたい場合は新NISAで改めて積立設定を行いましょう。旧NISAで保有している商品は新NISAの口座に移せないため、別々の枠で管理されます。

旧NISAで積み立てていた商品は非課税期間が終わるまで、そのまま非課税で持ち続けることが可能です。非課税期間が終了した商品は、課税口座に移されるか期間内に売却するかを選択します。

ジュニアNISAのロールオーバーはどうなる?

ジュニアNISAの資産は新NISAへ直接ロールオーバーできません。2023年末でジュニアNISAは終了したため、新NISAとは別の仕組みで資産が管理されます。ジュニアNISAでは子どもが18歳になるまで「継続管理勘定」で非課税のまま自動的に運用が続きます。継続管理勘定への移管に特別な手続きは不要です。

ジュニアNISAの資産は2024年以降、子どもが18歳になる前でも非課税で引き出せるようになりました。ただし、資産を引き出す場合は全額を払い出して口座を廃止しなければなりません。

新NISAへの切り替えに必要な手続きは?

現在NISA口座を持っている方は特別な手続きは必要ありません。2023年までにNISA口座を開設していれば、2024年から同じ金融機関に新NISAの口座が自動で開設されるためです。金融機関を変えたい場合は年単位での金融機関変更手続きを行うと、翌年から新しい金融機関で新NISAを利用できます。

ただし、旧NISAで行っていた積立投資の設定は新NISAには引き継がれません。新NISAで積立投資を続けたい場合は改めて設定し直しましょう。

新NISAを利用して非課税枠を最大限に生かそう

新NISAでは非課税で商品を保有できる期間が無期限になったため、ロールオーバーが利用できません。旧NISAの保有資産は非課税期間満了まで保有したり、非課税期間中に売却して新NISAに再投資したりできます。

新NISAは生涯非課税枠が1,800万円に拡大し、保有期間も無期限となったため長期的な資産形成に大きな可能性をもたらします。新NISAのメリットを最大化するには制度の仕組みを理解し、自分の目標に合った計画的な運用を行いましょう。

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