
新NISAは投資家にとって魅力的な選択肢ですが、元本割れのリスクや損益通算ができないなどのデメリットも存在します。新NISAのデメリットを知らずに始めてしまい「こんなはずじゃなかった」と思う人は少なくありません。
この記事では新NISAのデメリットと新NISAが合わない人の特徴、新NISAを最大限に活用する方法を解説します。記事を読めば、自分の投資スタイルに新NISAが合っているかを判断でき、後悔しない選択が可能になります。
新NISAは注意点を理解し、長期的な視点で運用すれば非課税メリットを最大限に生かせる制度です。新NISAを活用する際のポイントを押さえ、自分に合った投資の第一歩を踏み出しましょう。
新NISAのデメリット5選

新NISAにはいくつかのデメリットがあります。新NISAのデメリットを理解していないと、思わぬ損失や制度の不便さに直面するリスクがあります。あらかじめデメリットを把握したうえで、新NISAが自分の投資スタイルに合っているかを冷静に検討しましょう。新NISAの主なデメリットは以下の5つです。
- 元本割れをする可能性がある
- 短期間での投資には向かない
- 損益通算や繰越控除ができない
- 投資できる商品が限定されている
- 18歳以上しか口座開設できない
元本割れをする可能性がある
新NISAには銀行預金のように元本が保証される仕組みはありません。株式や投資信託は経済状況や市場の動きによって価格が上下し、購入時より価値が下がると元本割れが起こるデメリットがあります。100万円で購入した商品が90万円に下落するようなケースがあり、短期間で資産が大きく目減りするケースもあります。
運用益に税金がかからない点は新NISAの魅力ですが、投資である以上は損失が生じるリスクは避けられません。
短期間での投資には向かない

新NISAの制度の目的は長期的視点で資産形成を支援することです。短期間で株を頻繁に売買すると新NISAの恩恵を十分に生かせないだけでなく、損失リスクが高まるデメリットがあります。
非課税枠を効率的に使えない点も新NISAが短期間での投資には向かない理由の一つです。1度売却した新NISAの非課税枠は再利用できないため、短期売買を繰り返すと枠の浪費につながります。
新NISAは短期売買で成果を狙うのではなく、腰を据えて資産形成を続ける投資家に適した制度です。
損益通算や繰越控除ができない
新NISA口座で発生した損失は、税金計算上「存在しないもの」として扱われる点は投資家にとってデメリットです。損失を翌年以降に繰り越す「繰越控除」や、課税対象となる口座の利益と合算する「損益通算」が新NISAでは利用できません。
新NISA口座で年間20万円の損失が出ても、特定口座で30万円の利益があれば特定口座の30万円の利益に課税されます。新NISA口座では特定口座の間で損益通算ができない仕組みになっているためです。
投資できる商品が限定されている

新NISAの制度の目的は「個人の安定した資産形成を支援すること」です。リスクの高い商品や長期投資に適さない商品は新NISAの投資対象から外されます。投資の自由度が制限される点は投資家にとってデメリットです。新NISAで投資が認められている商品と認められていない商品は以下のとおりです。
区分 | 購入可能な商品 | 購入できない商品 |
つみたて投資枠 | 金融庁が選定した長期投資向けの投資信託 ETF | 個別株 REIT(不動産投資信託) |
成長投資枠 | 上場株式 ETF 運用実績が20年以上ある投資信託 毎月分配型でない投資信託 レバレッジ型でない投資信託 | 整理・監理銘柄 運用期間20年未満の投資信託 毎月分配型商品 レバレッジ型商品 |
NISA制度全体 | 上場株式 ETF 金融庁が基準を満たすと認めた投資信託 | 債券 FX 暗号資産 金 |
新NISAで投資を始める際は、自分が購入したい商品が投資対象になっているかを事前に確認しましょう。
18歳以上しか口座開設できない
新NISAの口座は開設する年の1月1日時点で18歳以上でなければ利用できないデメリットがあります。本人名義で新NISA口座を作る必要があるため、親による代理開設は不可となっています。以前は未成年者向けの「ジュニアNISA制度」がありましたが、2023年末で廃止されました。
18歳未満の未成年者が投資を行う場合は、新NISAではなく課税対象となる特定口座などを利用しましょう。
» 新NISAは何歳から始められる?年代別の運用法を解説!
新NISAの利用がデメリットに感じる人の特徴

新NISAはすべての投資家に適したものではなく、投資スタイルによっては不向きな場合があります。新NISAの利用がデメリットに感じる人の特徴は以下のとおりです。
- リスク許容度が低く安定的に運用したい人
- 短期売買を繰り返してしまう人
- 大規模な金額を運用したい人
リスク許容度が低く安定的に運用したい人
新NISAは投資制度であり、銀行預金のように元本が保証されていないため、安定的な運用を重視する人には適していません。市場の変動によっては資産が減り、投資額を下回る「元本割れ」が発生するデメリットも新NISAにはあります。
株式投資に損失が出た場合でも損益通算や繰越控除などの救済措置は利用できないので、新NISAを利用する際は注意しましょう。
短期売買を繰り返してしまう人

新NISAは長期的に資産を積み立てる仕組みをサポートする制度です。短期間で株や投資信託を頻繁に売買するスタイルの投資家は、新NISAとの相性が悪い傾向にあります。短期売買を行う人が新NISAに不向きとされる点は以下のとおりです。
- 非課税投資枠を早期に消費してしまう
- 一度売却しても非課税枠がその年に復活しない
- 損益通算ができない
- 損失の繰越控除を利用できない
頻繁に株取引をすると、新NISAの非課税枠をすぐに使い切ってしまいます。新NISAでは損失が出ても課税口座の利益と相殺できず、翌年以降に損失を繰り越せません。
新NISAは「コツコツ積み立てて長期的に資産を育てたい人」に有利な制度です。短期的な値動きを追う投資家には新NISAのメリットを生かしにくく、むしろデメリットに感じてしまいます。
大規模な金額を運用したい人
新NISAは数千万円や億単位の資金を一度に運用したい人には物足りなさを感じるデメリットがあります。物足りなさを感じる理由は新NISAの非課税枠で投資できる金額に明確な上限があるためです。新NISAでは年間の投資上限が最大360万円、生涯の非課税保有限度額が1,800万円と定められています。
新NISAの非課税枠は全体の資産額に比べると限られています。資産が大きい人ほど新NISAの非課税枠に収まる投資額の比率が小さくなり、非課税の恩恵を受けられる割合が下がるためです。
新NISAのメリット3選

新NISAのメリットは以下のとおりです。
- 運用益が非課税である
- 非課税枠の再利用が可能である
- つみたて投資枠と成長投資枠の併用ができる
運用益が非課税である
通常の口座では株式や投資信託で得た利益に約20%の税金が課されますが、新NISA口座では利益は非課税で受け取れます。100万円の利益を投資で得た場合の新NISA口座と通常口座の違いは以下のとおりです。
口座の種類 | 利益 | 課税額 | 手元に残る金額 |
通常の口座 | 100万円 | 約20万円 | 約80万円 |
新NISA口座 | 100万円 | 0円 | 100万円 |
新NISAでは非課税で得た利益を再投資できるため、複利効果が働きやすくなります。
非課税枠の再利用が可能である

旧NISAでは一度売却すると非課税枠の再利用はできませんでしたが、新NISAは資産運用の自由度が大幅に高まりました。
新NISAで保有していた商品を売却すると購入時に使った非課税枠が戻る仕組みがあります。生涯非課税保有限度額1,800万円の範囲内であれば繰り返し新NISAでの投資が可能です。相場環境や投資方針が変わったときに商品を入れ替えやすい点が、新NISAの非課税枠のメリットです。
つみたて投資枠と成長投資枠の併用ができる
新NISAでは投資スタイルに応じてつみたて投資枠と成長投資枠を併用でき、柔軟な資産運用が可能です。つみたて投資枠と成長投資枠を併用すれば、相場の下落時に成長投資枠で追加投資を行うといった戦略を立てやすくなります。
つみたて投資を軸にして相場の変動リスクを分散しつつ、成長投資枠でリターンを狙う運用をできる点が新NISAのメリットです。新NISAの生涯非課税保有限度額の1,800万円を使い切るためにも、つみたて投資枠と成長投資枠を併用することが重要です。
新NISAを最大限に活用するためのポイント

新NISAの非課税メリットを最大限活用するには、以下のポイントを押さえましょう。
- 投資の目的や目標を明確にする
- 長期的視点での資産形成を目指す
- リスク分散を意識する
投資の目的や目標を明確にする
新NISAで投資する目的が明確であれば、自分に合った投資商品を選びやすくなり、日々の値動きに振り回されにくくなります。新NISAの投資目的の例は以下のとおりです。
- 老後の生活資金
- 子どもの教育資金
- 住宅購入の頭金
期間と金額の目標を立てると、新NISAの毎月の積立額や運用に必要なリターンを逆算できます。
長期的視点での資産形成を目指す

新NISAで資産を大きく育てるためには、目先の利益ではなく長期的な視点で投資しましょう。長期的な視点で投資すると「複利(※)」の効果が働き、利益が加速度的に増えていきます。新NISAの長期投資を成功させるためのポイントは以下のとおりです。
- 毎月一定額を積み立てて時間を味方につける
- 下落局面を「安く買える機会」と捉える
- 頻繁な売買を避け、長期で保有を続ける
ドルコスト平均法を使って毎月決まった額を積み立てれば価格が高いときには少なく、安いときには多く購入できます。市場が一時的に下落しても慌てて売らずに将来の成長を見据えて持ち続けることで、複利の効果を最大限に引き出せます。
頻繁な売買は手数料の負担が増え、長期的な資産形成を妨げる要因です。長期的な計画にもとづきコツコツと資産を積み上げていくことが、新NISAを最大限に活用するための鍵となります。
※ 複利とは、利益が新たな利益を生み出して雪だるま式に資産が増えていく仕組みを指します。
リスク分散を意識する
新NISAで1つの投資先に資金を集中させると、投資が失敗したときに大きな損失につながります。資産を分散させておけば、1つの投資先が値下がりしても他の投資先が補い、資産全体の急激な減少を防げます。
具体的に意識したいリスク分散の方法は以下のとおりです。
- 資産の分散:株式・債券・不動産などを組み合わせる
- 地域の分散:日本国内だけでなく海外にも投資する
- 時間の分散:毎月積み立てて購入時期をずらす
- 銘柄の分散:特定の会社に集中させない
- 業種の分散:ITや金融、生活関連など幅広く投資する
新NISAに関するよくある質問

新NISAに関するよくある質問を以下にまとめました。
- どのような手順で新NISAを始めればいい?
- 新NISAで損失が出た場合はどうすればいい?
- 新NISAを途中でやめることはできる?
どのような手順で新NISAを始めればいい?
証券口座をすでに持っている人であれば、現在利用している金融機関で新NISA口座を追加開設するだけで始められます。新しく証券口座を開設して新NISAを始める場合も、必要書類を準備して申し込めば証券会社の案内に沿って進めるだけです。
新NISAで投資を始めるまでの流れは以下のとおりです。
- 金融機関を選ぶ
- 新NISA口座の開設を申し込む
- 必要書類を提出する
- 審査完了を待つ
- 投資資金を入金する
- 商品の買付注文を行う
新NISAで損失が出た場合はどうすればいい?

新NISAで一時的に損失が出ても慌てて売却することは避けるべきです。新NISAは長期的に資産を育てるための制度であり、価格が一時的に下がる場合もあります。
損失を他の利益と相殺する「損益通算」や、損失を翌年以降に繰り越す「繰越控除」は新NISA口座では利用できません。新NISA口座の損失を確定させると税制上の救済を受けられず、資産回復のチャンスも失ってしまいます。
新NISAで損失が出たときに意識したい行動は以下のとおりです。
- 狼狽売りを避ける
- 投資資産を長期で保有する
- 積立投資を継続する
- ポートフォリオを点検する
価格が下がっている時期に新NISAで積立を続ければ、より多くの口数を購入でき、平均購入単価を下げる効果があります。短期的な値動きに左右されず、長期的な視点で投資を続けることが、新NISAで資産を育てるための鍵です。
新NISAを途中でやめることはできる?
新NISAは途中でやめられます。解約するための手数料や罰金などのペナルティも新NISAにはありません。新NISAをやめる方法は以下のとおりです。
- 積立投資を停止する
- 保有商品を売却する
- 新NISA口座を廃止する
新NISAの積立設定を停止すれば買い付けは止まりますが、すでに購入した商品は保有を続けられます。
新NISAで保有している商品はいつでも売却でき、利益に税金はかかりません。売却した商品の購入額分の新NISAの非課税枠は翌年に復活します。
新NISAの口座の廃止も可能ですが、廃止する場合は商品をすべて売却するか、課税口座へ移管する必要があります。
新NISAのデメリットを理解して自分の投資スタイルに合っているか見極めよう

新NISAは運用益が非課税となる魅力的な制度ですが、すべての投資家に適しているわけではありません。元本が減るリスクや、損益通算・繰越控除といった税制上の救済措置が利用できないことは、新NISAのデメリットです。新NISAは短期的な利益を狙う投資よりも、長期的に資産を積み上げたい人に向いています。
新NISAを利用する際は自分の投資目的やリスク許容度を見極め、投資方法として適切かどうかを判断しましょう。