2024年から始まった新NISA。投資を始めたものの「成長投資枠をどう活用すべきか」「どんな商品を選ぶべきか」と悩んでいませんか?新NISAの成長投資枠は非課税で投資できる点が魅力ですが、制度の複雑さや投資枠の使い分けに戸惑う人も多いでしょう。
この記事では新NISAの成長投資枠の基本的な仕組みや、つみたて投資枠との違い、初心者から上級者までの活用法をわかりやすく解説します。記事を読めば新NISAの成長投資枠の特徴と活用ポイントが整理でき、自分に合った投資戦略を立てられます。
新NISAの成長投資枠を正しく理解し、非課税の恩恵を最大限に生かして効率的な資産形成を目指しましょう。
新NISAの「成長投資枠」とは上場株式や投資信託などに投資できる非課税枠

新NISAは「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の2つの非課税投資枠があります。新NISAの成長投資枠では上場株式や投資信託に投資しやすくなり、より多くの人が資産形成に取り組むようになりました。新NISAの導入背景と目的、成長投資枠の基本的な仕組みについて解説します。
新NISA導入の背景と目的
新NISAは「貯蓄から投資へ」の流れを後押しし、国民の資産形成を支援することを目的に導入されました。従来のNISA制度は保有期間が限定され、やや複雑な仕組みでした。新NISAでは制度が改善され、従来より利用しやすくなっています。新NISAの改善点は以下のとおりです。
- NISA制度が長く続けられるようになった
 - 非課税で保有できる金額の上限が拡大した
 - 2つの投資枠が「成長投資枠」と「つみたて投資枠」となり、併用できるようになった
 
新NISAへの移行によって制度が使いやすくなり、より長期的な視点で資産形成に取り組めるようになりました。
成長投資枠の基本的な仕組み
新NISAは従来のNISAと比べて、より自由度の高い投資ができるように設計されています。新NISAの成長投資枠の仕組みは以下のとおりです。
| 項目 | 内容 | 
| 年間投資上限額 | 240万円まで非課税で投資が可能 | 
| 生涯非課税保有限度額 | 1,800万円(うち成長投資枠の上限は1,200万円) | 
| 非課税保有期間 | 無期限 | 
| 売却後の枠の扱い | 売却した商品の元本分の非課税枠は翌年に復活・再利用可能 | 
| 他枠との併用 | つみたて投資枠(年間120万円)と併用可能 | 
新NISAの成長投資枠はつみたて投資枠と併用することで、年間最大360万円まで非課税で投資できます。売却しても元本分の非課税枠は翌年に復活するため、新NISAの成長投資枠はライフプランの変化にも対応しやすい仕組みです。
新NISA「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の違い

新NISAの「成長投資枠」と「つみたて投資枠」は投資スタイルに合わせて使い分けられる2つの非課税枠です。新NISAの成長投資枠とつみたて投資枠の違いを以下の3つの観点から解説します。
- 非課税投資枠の違い
 - 投資可能商品の違い
 - 購入方法の違い
 
非課税投資枠の違い
新NISAの成長投資枠とつみたて投資枠の非課税投資枠には以下の違いがあります。
| 比較項目 | 成長投資枠 | つみたて投資枠 | 両枠合計 | 
| 年間投資上限額 | 240万円 | 120万円 | 年間最大360万円 | 
| 生涯非課税保有限度額 | 1,200万円 | 1,800万円 | 最大1,800万円 | 
非課税で保有できる期間はどちらも無期限で、ライフステージに合わせて柔軟に活用できます。
投資可能商品の違い

新NISAの成長投資枠とつみたて投資枠で投資可能な商品の違いは以下のとおりです。
| 枠の種類 | 投資できる商品 | 運用スタイルの特徴 | 
| 成長投資枠 | 上場株式、投資信託、ETF、REITなど | 自由度が高く、幅広い投資ができる | 
| つみたて投資枠 | 国が基準を定めた一部の投資信託・ETF | 手数料が安く、長期積立に適している | 
新NISAでは同じ商品でも成長投資枠とつみたて投資枠のどちらで購入するかを選べる場合があるため、投資目的に合った枠を選びましょう。
購入方法の違い
新NISAの成長投資枠での購入方法は、自分のタイミングで銘柄と金額を指定して購入する一括投資(スポット購入)です。相場に合わせて柔軟に投資できる点が成長投資枠の特徴で、相場の変動やタイミングを見ながら投資したい人に向いています。
新NISAのつみたて投資枠での購入方法は、あらかじめ設定した金額で定期的に買い付ける積立投資です。つみたて投資枠では最初に設定すれば自動で買い付けが行われるため、購入の手間がかかりません。
新NISAの成長投資枠とつみたて投資枠は併用できるため、投資スタイルに合わせて使えば、より柔軟な資産運用が可能です。
新NISA「成長投資枠」で購入できる商品

新NISAの成長投資枠では投資目的やリスク許容度に応じた多様な商品を自由に選べます。新NISAの成長投資枠で購入できる商品は以下のとおりです。
- 株式
 - 投資信託
 - ETF・REIT
 
株式
新NISAの成長投資枠では上場している株式を購入できます。株式投資で得られる株価の値上がり益や配当金が非課税になる点が新NISAの成長投資枠のメリットです。成長投資枠で購入できる株式の種類は以下のとおりです。
- 国内株式
 - 外国株式
 - 高配当株
 - グロース株(※1)
 - 新規公開株(IPO)(※2)
 
ただし、上場廃止予定の銘柄や新NISAの対象外となる一部の株式は購入できない場合があります。
※1 グロース株とは、今後の成長が期待される企業の株式のことです。
※2 新規公開株とは、企業が初めて株式市場に上場し、一般の投資家が購入できるようになった株式のことです。
投資信託

新NISAの成長投資枠ではつみたて投資枠よりも幅広い種類の投資信託(※2)を選べます。新NISAの成長投資枠で購入できる投資信託の種類(ファンド)と特徴は以下のとおりです。
| ファンドの種類 | 主な特徴 | 投資対象の例 | 
| インデックスファンド | 日経平均株価やS&P500など、市場平均に連動する成果を目指す | 日本株・米国株など市場全体 | 
| アクティブファンド | 専門家が独自に銘柄を選び、市場平均を上回るリターンを狙う | 成長企業・注目業界など | 
| テーマ型ファンド | AI・環境・医療など、特定テーマに関連する企業に投資する | テクノロジー・脱炭素関連など | 
| バランスファンド | 複数の資産に分散投資し、安定した運用を目指す | 株式・債券・不動産など | 
ただし、信託期間が20年未満の商品や高レバレッジ型・毎月分配型の投資信託は成長投資枠の対象外です。
» 投資信託とは?種類やメリット・デメリットを解説!
※2 投資信託とは、専門家が投資家から集めた資金をまとめて株式や債券などに分散投資する商品です。
ETF・REIT
新NISAの成長投資枠ではETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)も購入できます。ETFは複数の上場株式をまとめた投資商品で、株式と同じようにリアルタイムで売買できます。REITは複数の不動産を組み合わせて運用し、家賃収入などを分配金として受け取れる仕組みです。
ETF・REITはどちらも1つの商品で分散効果が得られます。リスクを抑えながら安定した収益を狙えるETF・REITは、新NISAの成長投資枠の中でも人気の商品です。
» ETFと投資信託の違いは?メリットや向いている人の特徴を解説
新NISA「成長投資枠」で購入できない商品は仕組債や公社債投信

新NISAの成長投資枠は長期的で安定した資産形成を目的とする制度です。値動きが大きいものや短期運用向けのものなど、一部の商品は新NISAの成長投資枠で購入できません。新NISAの成長投資枠で購入できない商品は以下のとおりです。
- 整理・監理銘柄の株式
 - 信託期間が20年未満の投資信託
 - 毎月分配型投資信託
 - 高レバレッジ型商品
 - 公社債投資信託(※3)
 - 仕組債(※4)
 
新NISAの成長投資枠では価格変動のリスクが高いものや、元本が増えにくい仕組みの商品など、長期投資に不向きなものは購入できません。
※3 公社債投資信託とは、国債や社債などの債券を中心に運用する投資信託のことです。
※4 仕組債とは、金利や株価などの動きに応じて収益が変わる複雑な仕組みの債券です。
新NISA「成長投資枠」のメリット・デメリット

新NISAの成長投資枠は幅広い商品に投資できる非課税枠がある点がメリットですが、損失が損益通算できないデメリットもあります。新NISAの成長投資枠のメリット・デメリットについて詳しく説明します。
成長投資枠のメリットは幅広い商品に投資できる非課税枠
新NISAの成長投資枠のメリットは幅広い商品に非課税で投資できる点です。新NISAの成長投資枠は投資で得た配当金や値上がり益も非課税となるため、税負担を抑えながら効率的に資産を増やせます。
つみたて投資枠は投資信託に限定されますが、成長投資枠では個別株・投資信託・ETF・REITなど、自由に商品を選ぶことが可能です。新NISAの成長投資枠は好きなタイミングで一括購入でき、売却した分の非課税枠が再び使える仕組みもあります。
成長投資枠のデメリットは損失が損益通算できない点
新NISAの成長投資枠のデメリットは投資で損失が出た場合に、他の証券口座で得た利益と相殺(損益通算)できないことです。新NISA口座では利益が非課税になる代わりに、損失が出ても税金の計算に反映されない仕組みになっています。
新NISA「成長投資枠」の活用法

新NISAの成長投資枠は投資できる商品が多く、投資経験や目的に応じて柔軟に活用できます。初心者から上級者まで、新NISAの成長投資枠の活用法は以下のとおりです。
- 【初心者向け活用法】投資信託で分散投資する
 - 【中級者向け活用法】株式やETFでリスク調整する
 - 【上級者向け活用法】IPOや高配当株で積極的に狙う
 
【初心者向け活用法】投資信託で分散投資する
投資初心者が新NISAの成長投資枠を活用する場合、1つの投資信託で世界中に分散投資する方法がおすすめです。個別に銘柄を選ぶ必要がなく、1本購入するだけで多くの企業にまとめて投資できるため、手間をかけずにリスクを抑えた運用ができます。手数料が安く広範囲に投資できるインデックスファンドが定番です。
新NISAの成長投資枠で、分散投資できる代表的な投資信託には全世界株式(オルカン)や全米株式(S&P500)があります。投資信託を選ぶ際は、運用管理費用(信託報酬)が低い商品を選ぶと将来の利益を期待しやすいためおすすめです。
» 投資信託とは?種類やメリット・デメリットを解説!
つみたて投資枠と同じ商品を成長投資枠でも買い増しすることで、非課税のメリットを最大限に活用できます。
【中級者向け活用法】株式やETFでリスク調整する

投資に慣れてきた中級者は新NISAの成長投資枠を活用し、株式やETFを組み合わせてリスクを調整する運用がおすすめです。「コア・サテライト戦略(※5)」を取り入れることで、リターンを狙いながらリスクを抑えられます。新NISAの成長投資枠を活用して株式やETFでリスク調整する方法は以下のとおりです。
- 将来性の高い個別株に投資し、キャピタルゲイン(値上がり益)を狙う
 - 高配当株や増配株で、インカムゲイン(配当金)を得る
 - 特定テーマのETFで効率良く分散投資する
 - 債券ETFやREITを組み合わせ、相場下落時のリスクを抑える
 
新NISAの成長投資枠では株式やETFを上手に組み合わせることで、安定性と成長性を両立した運用が可能です。
※5 「コア・サテライト戦略」とは、資産の中心(コア)は投資信託などの安定した商品で守り、一部(サテライト)を成長性の高い株やETFに投資してリターンを狙う方法です。
【上級者向け活用法】IPOや高配当株で積極的に狙う
投資経験を生かしてより積極的に利益を狙いたい上級者は、新NISAの成長投資枠でIPOや高配当株を活用する方法が有効です。
» 高配当株投資の正しい知識を伝授!
» IPO投資のメリット・デメリットを解説
| 投資方法 | 特徴 | 注意点 | 
| IPO | 大きなリターンを狙える反面、銘柄選びやタイミングの見極めが必要となる | 当選確率が低く、値下がりリスクもある | 
| 高配当株 | 安定的な収入を得ながら、非課税で効率的に資産を増やせる | 株価変動や業績悪化による減配のリスクもある | 
新NISAの成長投資枠ではリスクとリターンの特徴を理解し、投資スタイルに合った手法を選びましょう。
新NISA「成長投資枠」に関するよくある質問

新NISAの成長投資枠について、仕組みや使い方に疑問を持つ人も多くいます。以下の新NISAの成長投資枠に関するよくある質問に回答します。
- NISA口座を複数持つことはできる?
 - 成長投資枠の年間投資枠を超えた場合はどうしたら良い?
 - 成長投資枠とつみたて投資枠の適切な配分は?
 
NISA口座を複数持つことはできる?
NISA口座は1人につき1つの金融機関で開設可能です。NISA口座を開設する金融機関は1年に1回変更することが可能ですが、商品を購入した年は変更ができません。金融機関を変更する際、変更前のNISA口座で保有している株式や投資信託は、新しい口座へ移せない点にも注意が必要です。
最初にどの金融機関でNISA口座を開設するかを慎重に選びましょう。
成長投資枠の年間投資枠を超えた場合はどうしたら良い?

成長投資枠の年間上限(240万円)を使い切っても、投資を続ける方法は以下のとおりです。
- 課税口座で投資を続ける
 - つみたて投資枠を活用する
 - 翌年の非課税枠を待つ
 - iDeCoなど他の制度を利用する
 
成長投資枠の年間投資枠を超えた場合は一時的に課税口座で購入し、翌年NISA枠が復活したタイミングで買い直すことも可能です。非課税にこだわりすぎず、目的に合った方法を選びましょう。
成長投資枠とつみたて投資枠の適切な配分は?
新NISAの成長投資枠とつみたて投資枠の配分は、投資目的やリスク許容度によって異なります。投資のスタイルごとの成長投資枠とつみたて投資枠の活用方法は以下のとおりです。
| 投資スタイル | おすすめの活用方法 | 
| 安定した運用を重視 | つみたて投資枠を中心に利用し、同じインデックスファンドで非課税のメリットを生かす | 
| バランスを重視 | つみたて投資枠で投資信託を積み立て、成長投資枠では個別株やETFを組み合わせて調整する | 
| 積極的なリターンを重視 | 成長投資枠で個別株やアクティブファンドに重点投資し、つみたて投資枠で安定資産を確保する | 
長期で運用できる人ほど成長投資枠の割合を高めやすく、退職が近い人はつみたて投資枠を中心に安定運用を重視する傾向があります。
新NISA「成長投資枠」を理解して非課税枠を十分に活用しよう

新NISAの成長投資枠は、年間240万円・生涯1,200万円まで非課税で投資できる制度です。つみたて投資枠と比べて成長投資枠は幅広い商品に投資でき、個別株や投資信託、ETFなどを自由に選べます。
一方で、新NISAの成長投資枠は損失が出ても損益通算ができないなどの注意点もあります。新NISAの成長投資枠はつみたて投資枠と併用してバランスを取り、リスク許容度に合った商品を選ぶことがポイントです。
新NISAの成長投資枠の仕組みを正しく理解して計画的に活用し、非課税のメリットを最大限に生かした資産形成をしましょう。