
株式投資を始めたものの、投資すべき銘柄がわからず悩んでいる人は多くいます。IPO投資の基本を知らずに始めてしまうと、期待した成果が得られません。本記事では、IPO投資の基本知識とメリット・デメリット、購入方法やIPO投資を成功させるためのコツを解説します。
記事を読めば、IPO投資の仕組みを理解でき、投資への参加に必要なステップが明確になります。IPO投資とは未上場企業の株式を一般の投資家が購入できる投資方法です。IPO投資の基礎を学び、投資を成功させましょう。
IPO投資の基本概要

IPO投資の基本概要を、以下の項目に分けて紹介します。
- IPO投資が注目される理由
- POとの違い
» 自分に合った戦略を見つける!株式投資の始め方と注意すべきリスク
IPO投資が注目される理由
IPO投資が注目されている理由は、短期間で高いリターンを得られる可能性があるからです。未上場企業が初めて株式を公開する際は、公開価格より初値が上昇する「初値上昇」の恩恵を受けやすくなります。以下の点も、IPO投資が注目されているポイントです。
- 公開価格での購入
- 取引手数料が無料
- 成長企業への早期投資
- リスク分散
- 少額での投資が可能
IPO投資は従来の株式投資とは異なる魅力を持ち、投資の選択肢を広げる手段として注目を集めています。
POとの違い
IPOは「Initial Public Offering」の略で、未上場企業による初めての株式公開を指します。POは「Public Offering」の略で、すでに上場している企業による追加株式の発行を意味しています。
上場とは企業が証券取引所に株式を公開し、一般投資家が自由に売買できる状態にする行為です。以下の点も、IPOとPOで異なります。
比較項目 | IPO投資 | PO投資 |
主な目的 | 初の資金調達 知名度向上 | 追加の資金調達 |
価格形成 | 公開価格と初値に差が出る | 市場価格に近い価格で発行される |
リスク | 情報が少なく企業価値の把握が難しい | 企業情報が豊富で比較しやすい |
初値上昇の期待 | 初値上昇による利益が期待できる | 安定性はあるが、初値上昇の期待は少ない |
投資スタイルやリスク許容度に応じて、IPOかPOのどちらに参加するかを判断しましょう。
IPO投資のメリット

IPO投資で得られるメリットは、以下のとおりです。
- 初値が公開価格を上回ることがある
- 手数料がかからない
- 成長企業へ投資できる
初値が公開価格を上回ることがある
初値が公開価格を上回る「初値上昇」は、IPO投資の魅力の一つです。人気の高い銘柄では「初値プレミアム」と呼ばれる現象が発生し、公開価格の2〜3倍になる場合もあります。IPO株の価格が高騰する要因は、需要と供給のバランスです。IPO株は発行数が限られているため、購入希望者が多いほど価格が上がりやすくなります。
初値が上昇した場合、上場初日に売却すると即日利益を得られます。すべてのIPO株が初値上昇するわけではない点に注意しましょう。
手数料がかからない

IPO投資では、一般的な株取引にかかる約定代金の約0.1〜0.5%の手数料が発生しません。投資した金額が直接株式の購入に充てられるため、効率的な資産運用が可能です。資産運用の効率が高まると、少額からでも手数料を気にせずにIPO投資に参加できます。
手数料がかからないことで、わずかな株価上昇でも利益を確保しやすくなります。
成長企業へ投資できる
IPO投資は将来性のある成長企業に早い段階から投資可能です。上場前の企業は、革新的なビジネスモデルや独自技術を持つ場合が多く、既存市場にはない投資のチャンスがあります。急成長する産業や新市場に参入している企業は、高い成長率と業界の主導的地位を期待できる存在です。
成長企業に長期的に投資すると、株価の上昇や株式分割・増配の恩恵を受けられる可能性があります。
IPO投資のデメリット

IPO投資のデメリットは、以下のとおりです。
- 上場後に株価が下落する可能性がある
- 抽選に当たらないと購入できない
- 資金が一時的に拘束される
上場後に株価が下落する可能性がある
IPO株で初値が高騰した銘柄の場合、一時的な需要によって釣り上がった価格の反動ですぐに下落するケースがあります。以下の点も、銘柄の株価が下落する要因です。
- 初期投資家による保有株の売却
- 不十分な情報開示
- 不十分なガバナンス対応
新興企業の場合、上場後に公開される情報が期待と異なり、株価に悪影響を与える場合があります。IPO投資では、企業の成長性や本質的な価値を見極める視点が欠かせません。
抽選に当たらないと購入できない

IPO株は発行株数に限りがあるため、需要に対して供給が不足しがちです。IPOの割り当ては「ブックビルディング」と呼ばれる応募方式が採用されており、応募しても必ず購入できるわけではありません。人気の高い銘柄では、抽選倍率が数百〜数千倍になる場合もあります。
証券会社ごとにIPO株の抽選の仕組みには違いがあり、以下の要素が当選確率に影響します。
- 過去の取引実績
- 預かり資産の金額
- 口座開設からの経過期間
- 直近のIPO申込状況
ネット証券は、大手証券会社に比べて新規投資家でも当選しやすい傾向があります。抽選に外れた場合は、上場後に市場で購入する以外の方法はありません。複数の証券会社で口座を開設し、同じ銘柄へ応募することで当選確率を高められます。
資金が一時的に拘束される
IPO株に投資する際は、資金の一時的な拘束に注意が必要です。申し込みをした時点で購入予定の金額が証券口座内で凍結され、当選結果が出るまで資金は利用できません。当選しなかった場合も資金がすぐに戻らず、抽選結果の発表から実際の返金まで数日かかる場合があります。
急な出費が必要になった場合や拘束期間中に他の投資に対応できなくなる可能性がある点に注意しましょう。IPO投資を行う際は、余裕を持った資金計画を立ててください。あらかじめ使える資金を確保しておくと、リスクを最小限に抑えられます。
IPO株の購入方法

IPO株の購入方法を、以下に紹介します。
- 証券口座を開設する
- ブックビルディングへ参加する
- 公開価格が決定する
- 抽選に当選したら購入手続きをする
証券口座を開設する
IPO投資を始めるには証券口座を開設する必要があります。自分の投資スタイルに合った証券会社を選ぶと、IPO投資の効率や当選確率にも差が出てきます。証券口座の開設手続きは、オンラインで完結するケースが多く、手順が比較的シンプルです。証券口座の開設は、以下の流れで進めます。
- 証券会社を選ぶ
- 本人確認書類を準備する
- 必要事項を記入して申請する
- 書類を提出して審査を受ける
- 審査完了後に開設通知が届く
- 口座に資金を入金する
あらかじめ準備を整えておけば、ブックビルディングの開始に合わせてすぐに応募できる体制が整います。
ブックビルディングへ参加する
ブックビルディングへの参加手続きを通じて、投資家の需要を調査し、公開価格が決まります。ブックビルディングには、証券会社のWebサイトや支店から申し込みが可能です。ブックビルディングの申込期間は通常3〜5営業日で、以下の手順で申し込みます。
- 証券会社のウェブサイトにログイン
- IPO株の申込ページにアクセス
- 希望購入価格を入力
- 購入希望株数を入力
希望購入価格は、必ず仮条件の範囲内で設定しなければなりません。価格設定が範囲外だと申込自体が無効になる場合があります。証券会社によって申込方法が異なるため、事前に確認しておくと安心です。人気の高い銘柄は申込が多いため、申込期間の早い段階で手続きを済ませておきましょう。
公開価格が決定する

公開価格はブックビルディング期間中に集まった投資家の需要にもとづいて決定されます。一般的には提示された仮条件の範囲内で決まりますが、市場環境によっては仮条件の下限を下回る場合もあります。公開価格が決まると証券会社からのメールや証券会社の専用Webサイト、アプリから通知が届くので確認しましょう。
公開価格の決定後はすぐに抽選手続きに移るため、申し込みのキャンセルができない点に注意が必要です。決まった公開価格が、実際にIPO株を購入する際の1株当たりの価格となります。公開価格が決定してから実際の上場日までは、通常1週間ほどの期間が設けられています。
抽選に当選したら購入手続きをする
IPO株の購入手続きは自動的に行われるため、特別な操作は不要です。ただし、購入に必要な資金を証券口座に用意しておく必要があります。当選した株数すべてに対応する資金が不足している場合、購入が無効になるため注意しましょう。IPO株の購入後、証券会社の取引画面には「保有株式」と表示されます。
一部の証券会社では、購入完了を証明する書類やメールが届く場合があります。
IPO投資を成功させるコツ

IPO投資を成功させるコツは、以下のとおりです。
- 複数の証券会社を利用する
- 市場の動向をチェックする
複数の証券会社を利用する
IPOの取扱銘柄数や配分数は証券会社ごとに異なるため、複数の証券会社を利用すると応募できる銘柄の幅が広がります。大手証券会社は取り扱う銘柄数が豊富ですが、競争率も高くなりがちです。一方で、ネット証券は取り扱う銘柄数が限られているものの、当選確率が高い傾向にあります。
大手証券会社とネット証券の特徴を踏まえ、口座を分散させると効果的です。証券会社を選ぶ際は、過去の当選実績や利用者の評判を参考にしましょう。
» ネット証券の選び方を初心者から上級者まで徹底解説
市場の動向をチェックする
期待された銘柄であっても、希望通りの成果を得られない場合があります。IPO銘柄を選ぶ際は、企業の成長性だけでなく、市場全体の動きを把握しましょう。以下の点をチェックしておくと、市場の動きを把握できます。
- 日経平均やTOPIXの推移
- 業界・セクターごとの市況
- 類似企業の株価動向
- 投資家の心理
- 銘柄の需要
- 金利の変化
- 経済指標
- 過去のIPO銘柄の値動きパターン
IPO投資に関するよくある質問

IPO投資に関する以下の質問をまとめました。
- IPO投資に年齢制限はある?
- IPO投資の最低投資額はいくら?
- IPO投資にかかる税金は?
IPO投資に年齢制限はある?
IPO投資に年齢による法的な制限はなく、未成年者の場合でも親権者の同意があれば投資は可能です。ただし、証券会社ごとに口座開設の条件が異なります。多くの証券会社では、未成年者に対して年齢制限や追加書類の提出が求められます。未成年の場合は「親子口座制度」の利用を検討しましょう。
「親子口座制度」は親権者の管理下のもとで証券取引を行える制度であり、未成年者でも簡単に運用ができます。上限年齢の制限もありませんが、証券会社によっては75歳以上の顧客に対して投資経験や知識の確認を行う場合があります。
IPO投資の最低投資額はいくら?

IPO投資の最低投資額は、基本的に1単元(100株)の公開価格にもとづいて決まります。金額は銘柄ごとに異なりますが、多くの人気銘柄では1単元当たり約10〜30万円の投資額が必要です。ユニコーン企業(※)の場合は、1単元当たり50万円を超える投資額が必要になるケースもあります。
ユニコーン企業のIPOは、期待の高さと需給の偏り、報道の注目により初値が高騰しやすいからです。通常は100株単位での購入が基本ですが、10株単位で一部の高額銘柄を申し込める制度を採用している証券会社もあります。
※ ユニコーン企業とは、企業価値が10億ドルを超える未上場のスタートアップ企業のことです。
IPO投資にかかる税金は?
IPO株の売却益は、譲渡所得として扱われ申告分離課税の対象となります。税率は一律で20.315%に設定されています。税金の内訳は以下のとおりです。
- 所得税:15%
- 復興特別所得税:0.315%
- 住民税:5%
売却益は、他の株式取引で発生した損益と通算できます。取引で損失が出た場合は、翌年以降3年間の繰越控除が利用可能です。IPO株から得られる配当金には「配当所得」として税金がかかります。NISA口座を利用してIPO株を購入した場合は、NISA口座内での売却益や配当金が非課税となります。
» 株式投資でかかる税金をわかりやすく解説!
まとめ

IPO投資は、未上場企業の新規公開株に投資する方法として多くの投資家に注目されています。IPO投資は初値の上昇による利益が期待でき、成長企業への早期投資や手数料無料などのメリットが魅力です。一方で、株価の下落リスクや抽選制による当選の難しさ、資金の拘束などのデメリットもあります。
IPO投資を行う際は、メリットとデメリットをしっかりと理解し、適切な戦略を立てましょう。