2025年参院選後の自民党×国民民主党、政策連携の注目テーマと関連銘柄
2025.07.21投稿

2025年7月の参議院選挙では、自民・公明の与党が過半数割れとなり、国民民主党(以下、国民民主)が議席を大幅に伸ばしました。国民民主は改選前の4議席から目標の16議席を獲得(非改選含め21議席)を実現し、「現役世代の手取りを増やす」というスローガンで有権者の支持を集めたことが躍進の要因です。
与党内では石破政権(自民党)の物価高対策の遅れに対する批判票も取り込んだ形であり、選挙後は自民党・公明党が国民民主と政策協議を開始する可能性が高まっています。
そこで本記事では、参院選後に注目される自民党と国民民主党の政策連携テーマと、その分野に関連する銘柄を個人投資家向けに紹介します。
物価高・手取り増へ向けた減税策での連携
国民民主党が特に譲れないとするのが、賃金上昇と可処分所得(手取り)拡大のための大胆な減税策です。具体的には消費税率を恒久的に5%へ引き下げることを公約に掲げ、さらに2023年導入のインボイス制度を廃止する方針を明確にしています。
また、パート収入の「103万円の壁」に代表される所得税の非課税枠を大幅に引き上げ、低中所得層の税負担を軽減することや、ガソリン税の「トリガー条項」発動による一時的な税率引き下げも強く主張しています。
玉木雄一郎代表は「現役世代をしっかり支える減税で手取りを増やし、消費拡大と賃上げの好循環を生み出す」と訴えており、実質賃金が上向くまで消費税5%・ガソリン暫定税率廃止など物価高対策を最優先に据えています。
一方、自民党も参院選の大敗を受け、国民の負担軽減策を検討せざるを得ない状況です。
連立与党の公明党も選挙公約で食料品の消費税率引き下げなど減税を掲げており、自民党内でも約8割の参議院議員が何らかの消費税減税に前向きという調査があります。ただし、自民党執行部は財源問題から消費税率10%の維持を主張してきた経緯があり、大幅減税には慎重です。
現実的な落とし所として、年収103万円の所得税控除枠を拡大する減税(例:基礎控除引き上げ)や、ガソリン価格高騰時の補助金・減税措置の延長など、限定的な手当てにとどまる可能性も指摘されます。
それでも国民民主は政策協議でこれら減税策を強く要求するとみられ、石破首相率いる政権も補正予算編成にあたり国民民主の「手取り増」政策を一部取り入れる構えです。実際、選挙直後の協議では与党側が経済対策に国民民主の主張を盛り込む方針を示しており、今後の国会で減税策が具体化するか注目されます。
関連銘柄:セブン&アイ・ホールディングス(3382)
国内最大手のコンビニエンスストア「セブン-イレブン」や総合スーパーを展開し、個人消費動向の恩恵を受けやすい企業です。減税によって可処分所得が増加し消費喚起されれば、小売業界全体に追い風となります。
同社は国内外に幅広い流通網を持ち安定成長が期待される一方、株価指標面では過度な割高感はありません。直近の予想PERは約19倍、PBRは1.3倍程度(2025年7月20日時点)で、配当利回りも2.6%前後と堅実な水準です。
物価高対策や減税による消費押上げの恩恵を享受しやすい銘柄として注目できます。
エネルギー政策での協調(原発再稼働と電力安定供給)
エネルギー分野でも、国民民主党が重視する政策と自民党の方向性が合致しつつあります。
国民民主は電気代負担の軽減策として、再生可能エネルギー発電促進賦課金の徴収停止を掲げるとともに、「厳格な安全基準を満たした原子力発電所の稼働・リプレース・新増設推進」を明記しています。つまり電力安定供給と電気料金引き下げのためには原発の積極活用が不可欠との立場で、老朽化した炉の建て替えや新型炉の増設にも前向きです。これは原発再稼働を進めたい自民党の方針とも基本的に一致しています。
自民党政権は2011年以降凍結状態だった原発新増設の検討を岸田政権下で再開しましたが、選挙で信を失った現状では国民民主など他党の協力も得て政策を前に進める必要があります。国民民主の協力を得ることで、公明党が慎重な原発の新増設についても合意形成が図りやすくなる可能性があります。
実際に選挙直後の報道では、関西電力が福井県における原発新設の検討に入ったとのニュースが伝えられました。政府が原子力政策で踏み込んだ姿勢を見せれば電力各社も動きを加速させる兆しと言え、エネルギー基本計画の見直しや法整備によって原発の運転期間延長・新型炉建設が現実味を帯びてくるでしょう。
石破政権と国民民主の政策連携により、電力の安定供給と脱炭素の両立を目指した原子力回帰の流れが強まる可能性が高まっています。
関連銘柄:関西電力(9503)
原発比率が高い電力大手で、原子力政策の恩恵を直接受けやすい企業です。
同社は福井県に複数の原発を保有し、再稼働や将来的な新増設計画にも意欲を示しています。原発稼働による燃料コスト削減効果で業績改善が見込めるほか、脱炭素ニーズにも応えるポテンシャルがあります。
株価指標面では、電力各社の中でも割安感が際立ちます。2025年7月20日時点で予想PERは約6.5倍、PBRは0.6倍程度と低水準で、資産価値に対して株価が割安に放置されている状態です。
業界の雄と称され東京電力と並ぶ規模を持つ関西電力は、政策追い風による収益改善が株価見直しにつながる可能性があり、注目に値します。
少子化対策に向けた子育て支援強化
深刻な少子化への対応もまた、国民民主党が譲歩しない重要政策テーマです。
同党は「人づくりこそ国づくり」とのスローガンの下、思い切った子育て支援策を提案しています。具体的には年5兆円規模の「教育国債」発行によって子育て・教育・科学技術予算を倍増し、幼児教育の無償化を3歳から開始して待機児童ゼロを実現する目標を掲げています。
所得制限のない児童手当の拡充や高等教育の無償化、奨学金返済免除の拡大など、現役子育て世代が安心して子どもを産み育てられる環境作りに国民民主は重点を置いています。
自民党も少子化対策は喫緊の課題として認識しており、岸田前政権は「異次元の少子化対策」として児童手当拡充や子育て支援策を打ち出していました。与党内には将来的な財源論議(社会保険料の引き上げなど)もありますが、直近では国債による財源確保も含めて大胆な施策が求められる局面です。
国民民主が提案する教育国債について自民党内には慎重論もありますが、選挙で示された民意を受け止める形で子育て予算の大幅増額に踏み切る可能性は十分にあります。実際、選挙後の政界では政権への協力と引き換えに国民民主が子育て支援策の充実を要求するとの見方が強まっています。
具体策としては、幼児教育・保育の無償化拡大(現状は5歳児までの一部無償を3歳以上に拡大)や、待機児童対策としての保育施設整備予算の大幅増などが現実的でしょう。国民民主が重視する給付付き税額控除(低所得子育て世帯への実質減税)なども含め、自民党との協議で実現に向かう施策が注目されます。
関連銘柄:JPホールディングス(2749)
全国で認可保育園や学童クラブを運営する子育て支援事業の最大手です。
保育所運営のほか保育用品の販売給食提供なども手掛け、待機児童解消策や保育の質向上に欠かせない存在となっています。政府が保育士確保や施設拡充に乗り出せば恩恵を受ける銘柄の一つです。同社の業績は少子化の逆風下でも新規施設開設や補助金増額により増収増益を達成しており、財務基盤も強化傾向にあります。
2025年7月20日時点の株価指標は予想PER約12倍、PBR2.3倍前後で、配当利回りは2%強となっています。国の後押しによる保育ニーズ拡大が追い風となり得る銘柄として、中長期的な成長が期待されます。
まとめ
参院選直後の政局では、与党自民党が安定多数を失ったことで他党との政策折衝が不可欠となっています。国民民主党が譲らない核心政策である減税策・エネルギー政策・子育て支援策は、いずれも日本経済と社会構造の転換に直結する重要テーマです。
自民党との連携によってこれらが現実の政策となれば、関連する業界・企業にも大きな影響が及ぶでしょう。本記事で取り上げたテーマと銘柄は、今後の政策進展に伴い個人投資家にとっても注目度が高まると考えられます。それぞれの企業業績や指標を確認しつつ、最新の政策動向にアンテナを張って投資判断の参考にしてください。