
インターネット上では高配当株はおすすめしないという意見もあり、投資判断に迷う方も多くいます。この記事では、高配当株がおすすめされない理由や向いている人・向いていない人の特徴、注意すべき銘柄の特徴をまとめました。記事を読めば、自分の投資スタイルに高配当株が合うかどうかを判断できます。
高配当株投資は投資スタイルや目標によって向き不向きがあります。記事を参考に、高配当株投資に向いているかどうかを判断しましょう。
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高配当株はおすすめしないと言われる理由

高配当株投資がおすすめしないと言われる理由は以下のとおりです。
- 減配や無配のリスクがある
- 値上がり益が期待しにくい
- 税金面で不利になる
- 資産形成の効率が悪い
- 市場や経済状況に敏感に反応する銘柄が多い
減配や無配のリスクがある
高配当株投資には、企業が突然減配したり無配になったりする可能性があります。企業の業績が悪化すると、削減対象になるのが株主への配当金です。景気後退時には、キャッシュを確保するために多くの企業が配当を見直します。過去に安定した配当を出していた企業でも、同じ配当が続くという保証はありません。
グローバルに事業を展開する企業の場合、為替変動によって配当政策が変化する可能性もあります。規制強化や法改正の影響で、企業が配当政策の変更を余儀なくされるケースもあります。
値上がり益が期待しにくい
高配当株を出している企業は利益の多くを株主への配当金として支払うため、企業の成長投資に回せる資金が限られます。配当金の支払いに企業の資金が多く使われるほど、新規事業の開発や設備投資などに使える資金は減少します。
経済環境が変化して成長産業が注目されるようになると、高配当株の魅力は相対的に低下するため注意が必要です。
税金面で不利になる

高配当株投資の配当金には20.315%の税金がかかり、配当金を受け取った時点で自動的に源泉徴収されます。配当金は損益通算ができないため、株式の損失と相殺できません。特定口座(源泉徴収あり)での配当は、含み損がある場合でも課税されます。
高所得者が総合課税を選択すると最大で55%もの高い税率になる可能性があります。海外株の配当には現地と日本の二重課税問題が発生するため注意が必要です。NISAなどの非課税枠を活用しない限り、配当金にかかる課税を避けられません。
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資産形成の効率が悪い
高配当株投資では、成熟産業や衰退産業への投資が中心となり、成長産業への投資機会を逃しやすくなります。多くの場合、配当利回りの高さと企業の成長性はトレードオフの関係です。実際のデータを見ると、高配当株のポートフォリオは、長期的には市場全体のパフォーマンスを下回ることが少なくありません。
目先の配当に注目するあまり、企業価値の総合的な成長を見逃してしまうリスクがあります。
市場や経済状況に敏感に反応する銘柄が多い
高配当株の多くは景気敏感セクターに属しています。金融やエネルギー、素材といった景気敏感セクターは、経済サイクルの影響を受けやすい銘柄が多く含まれます。景気後退や金融危機が起きると、大きく値下がりする可能性が高くなるため、注意が必要です。
以下の市場環境の変化は、高配当株に大きな影響を与えます。
- 金利上昇局面
- インフレ率の急上昇
- 為替変動
- 規制・政策変更
高配当株の配当利回りは魅力的ですが、市場環境の変化に敏感に反応する特性があります。
高配当株をおすすめしない人の特徴

高配当株投資をおすすめしない人の特徴は以下のとおりです。
- 短期で大きな利益を目指す人
- 企業の成長性を重視する人
- リスクを極力避けたい人
短期で大きな利益を目指す人
短期売買を繰り返すと、配当金の権利確定日に合わせた投資戦略が立てにくくなります。高配当株は一般的に成熟企業が多く、急激な株価上昇が期待しにくい点も見逃せません。短期投資では配当よりもタイミングが重要になります。配当金に対する課税も短期的な利益を減少させる要因です。
短期で大きな利益を目指すなら、成長性の高い企業や市場のトレンドに乗った銘柄選びが重要です。高配当株は長期的な資産形成向きであり、短期間で大きなリターンを狙う投資スタイルには向いていません。
企業の成長性を重視する人

企業が利益の大部分を配当として株主に還元すると、研究開発や設備投資などの成長のための資金が限られます。テクノロジーセクターなどの成長産業では、企業は配当を抑えるか無配当の場合が多くなります。高配当企業は成熟産業に多く見られ、革新的な成長や大幅な株価上昇が見込みにくい傾向です。
将来性や市場拡大の可能性を重視する投資家には、高配当株投資は不向きです。
リスクを極力避けたい人
高配当株投資にも市場の変動による価格変動リスクが存在します。企業の業績悪化時や市場下落局面では、冷静な判断が難しくなる可能性があります。リスクをより抑えるには、以下の投資方法がおすすめです。
- 分散されたインデックス投資
- 元本保証型金融商品
- 国債や社債
- 投資信託の積立
投資の基礎知識を学ぶと、リスクの回避方法が身に付きます。
高配当株に向いている人の特徴

高配当株投資に向いている人の特徴は以下のとおりです。
- 安定した収入を重視する人
- 長期投資を考えている人
- 定期的な配当収入を得たい人
安定した収入を重視する人
高配当株は、株価の変動に左右されない安定した収入源を確保できる点が魅力的です。高配当株は通常、成熟した安定企業が多いため、企業収益の安定性も期待できます。
配当金を再投資すれば複利効果も得られるため、長期的な資産形成にも役立ちます。市場が不安定な時期でも、定期的に配当金が入ることで、精神的な安心感を得られる点も魅力です。金利上昇局面でも相対的に安定した収益を期待できるため、経済環境の変化にも強い投資方法と言えます。
長期投資を考えている人

高配当株は、長期的な視点に合った投資対象です。長期投資では短期的な株価変動に一喜一憂するのではなく、5〜10年以上の時間軸で投資を考える必要があります。退職後の収入源として配当金を計画している場合も、高配当株投資はおすすめです。長期間保有すると、将来的に安定した配当収入が得られます。
ただし、すべての高配当株が長期投資に向いている投資先とは限りません。企業の財務健全性や配当の持続性を十分に検討したうえで、投資判断をしましょう。
定期的な配当収入を得たい人
高配当株投資による配当金は四半期や半年に一度入手できるため、定期的な収入になります。配当金は定期的に受け取るだけでなく、再投資すると複利効果も活用可能です。不動産投資に比べ、株式投資は少額で始めやすいのが特徴です。配当収入だけに頼るのではなく、資産全体の価値の維持も意識しましょう。
おすすめしない高配当株の特徴

高配当株投資でおすすめしない高配当株の特徴は以下のとおりです。
- 配当利回りが異常に高すぎる銘柄
- 配当性向が100%以上の銘柄
- 中長期的な業績の悪化が続いている銘柄
- 配当額が急増している銘柄
配当利回りが異常に高すぎる銘柄
一般的に配当利回りが10%を超えるような銘柄は、何らかの問題を抱えている可能性があります。異常に高い配当利回りは、主に以下の影響が考えられます。
- 株価の大幅下落
- 一時的な特別配当
- 財務状況の悪化
市場平均の3〜4倍以上の利回りがある銘柄は、配当の持続可能性を意識しましょう。多くの場合長続きせず、将来的に減配や無配になるリスクを抱えています。異常に高い配当は、企業の成長投資を犠牲にしている可能性もあります。事業拡大や研究開発に使うべき資金を配当に回していると、企業の将来性が損なわれかねません。
景気敏感株で一時的に利益が増加している場合も、高配当が継続するとは限らないため注意が必要です。高配当株を選ぶ際は、単に配当利回りの高さだけでなく、企業の持続可能性や財務健全性もしっかりと見極めましょう。
» 配当利回りとは?計算方法や高配当株の選び方を解説
配当性向が100%以上の銘柄

配当性向が100%を超える銘柄は、企業が稼いだ利益以上のお金を株主に配当として支払っています。配当性向が100%を超えると、企業は将来の成長に必要なお金を確保できなくなります。配当性向が100%以上の銘柄は、近い将来減配や無配になるリスクが高い点に注意が必要です。
業績悪化の兆候を示している場合が多いため、配当が減少するだけでなく株価も下落して元本割れするリスクが高まります。配当性向が高い銘柄を見つけた場合は、過去数年間の配当性向の推移や業界全体の動向、企業の競争力を確認しましょう。
» 配当性向が高い銘柄のメリット・デメリットを解説
中長期的な業績の悪化が続いている銘柄
中長期的に業績が悪化し続けている銘柄への投資はおすすめできません。業績悪化が続く企業に特徴的な財務指標は以下のとおりです。
- 売上高の継続的減少
- 純利益の減少傾向
- 負債比率の上昇
- フリーキャッシュフローの悪化
- 市場シェアの低下
構造改革や事業再編を繰り返しているにも関わらず、業績回復が見られない企業にも注意が必要です。業界全体が衰退傾向にある可能性があるため、業績が悪い企業への投資は慎重に検討してください。
配当額が急増している銘柄
配当額が急激に増加している銘柄は、リスクを抱えていることが多いため注意が必要です。配当額が急増する背景には、以下の問題が隠れている可能性があります。
- 一時的な業績好調
- 設備投資や研究開発費の削減
- 将来の成長機会の犠牲
過去の配当推移が安定していない企業は、今後も配当が不安定になる可能性が高いと考えられます。同業他社と比較して著しく高い配当増加率を示している場合も注意が必要です。長期投資の観点からは、急激な配当増加よりも緩やかで持続可能な配当成長を示す企業の方が信頼できます。
高配当株を購入する際の注意点

高配当株を購入する際の注意点は以下のとおりです。
- 配当利回りだけで判断しない
- 異なる業界で分散投資を心がける
- 累進配当株を選ぶ
- 企業の財務状況と将来性をチェックする
配当利回りだけで判断しない
優良な高配当株を見極めるためには、配当利回りだけでなく以下の点を確認しましょう。
- 財務状況の健全性
- 収益の安定性と成長性
- 配当性向
- 過去の配当実績
- フリーキャッシュフローの安定性
理想的な配当性向は業種によって異なりますが、一般的には30〜50%程度が適切とされています。同業他社や業界平均と比較して配当利回りが適正かどうかも判断材料になります。
異なる業界で分散投資を心がける

異なる業界への分散投資は、投資リスクを大幅に軽減する重要な戦略です。分散投資の最大のメリットは、1つの業界が低迷しても他の業界で損失を補える点にあります。防衛的セクターと景気敏感セクターをバランスよく組み合わせましょう。
国内企業と海外企業のバランスを取り、各業界のトップ企業や業界リーダーに投資することも検討してください。理想的には5〜10業種程度への分散が推奨です。分散することで、特定の業界の不振が全体の運用成績に与える影響を最小限に抑えられます。
各業界は独自の景気サイクルを持っているため、特性を理解して投資先を選ぶことも大切です。時間の経過とともに銘柄の比率が変わり、分散度合いが変化していることもあるため、定期的にポートフォリオを見直しましょう。
累進配当株を選ぶ
累進配当株とは、長期間にわたって配当金を継続的に増やし続けている企業の株のことです。累進配当株は安定した成長と収入が期待できるため、長期投資家にとって魅力的な選択肢です。累進配当株を選ぶ際は、過去5年以上にわたって配当金を増加させ続けている企業を探しましょう。
特に「配当貴族」や「配当王」と呼ばれる、25年以上連続で増配を続けている企業は押さえておきましょう。長期的な視点での経営が行われており、安定した配当成長が期待できます。配当利回りと増配率のバランスも重要な判断基準です。適度な配当利回りと安定した増配率を両立している企業を選ぶことが大切です。
企業の財務状況と将来性をチェックする
企業の財務状況は、以下の財務指標で確認できます。
- 自己資本比率
- 負債比率
- 流動比率
- 営業キャッシュフロー
- ROE
流動比率は150%以上あれば安心です。営業キャッシュフローは安定してプラスかどうかを確認しましょう。安定した成長を続けている企業は、将来的にも配当を維持・増加させる可能性が高いと言えます。企業の将来性を判断する際は、以下のポイントをチェックしましょう。
- フリーキャッシュフローと配当金総額の関係
- 配当性向
- 業界の将来性
- 経営陣の配当政策
- 研究開発への投資状況
競合他社との差別化ポイントや競争優位性も重要な判断材料です。独自の技術やブランド力、参入障壁の高さなどがあれば、長期的な成長が期待できます。財務情報は各証券会社の企業情報ページや企業のIRサイトで確認できます。時間をかけて調査し、表面的な高配当に惑わされずに投資判断をしましょう。
まとめ

高配当株は投資家によって評価の分かれる投資方法です。減配・無配リスクや資産形成効率の悪さなどが、おすすめしないと言われる理由です。短期的に利益を目指す人や成長性重視の投資家、リスク回避志向の人には高配当株投資は向いていません。
一方で、安定した収入を重視する人や長期投資を考えている人、定期的な配当収入がほしい人にはおすすめです。高配当株を購入する際は、配当利回りだけでなく業界分散や累進配当の実績、企業の財務状況と将来性も総合的に判断しましょう。自分の投資スタイルと目標に合った選択をすると、高配当株投資を成功に導けます。