
今回は「穴吹興産」についてです。2024年時点の情報となります。
会社概要
基本情報
- 会社名: 穴吹興産株式会社
- 設立: 1964年5月
- 本社所在地: 〒760-0028 香川県高松市鍛冶屋町7-12 穴吹五番町ビル
- 電話番号: 087-822-3567
- 上場市場: 東京証券取引所 スタンダード市場 (2004年6月上場)
- 業種: 不動産(住宅)
- 時価総額順位: 32/96社(不動産業界内)
- 公式サイト: https://www.anabuki.ne.jp/
事業概要
穴吹興産は、四国地方を中心に事業を展開する不動産開発会社であり、マンション分譲を主軸に多角的な事業展開を行っています。マンション分譲事業の「アルファシリーズ」は同地域で高い知名度を誇り、その他にも人材派遣、ホテル運営、介護医療、エネルギー関連事業などを手掛けています。
主な事業内容と売上構成(2024年6月期)
- 不動産事業(74%): マンション分譲、収益不動産売却
- 人材サービス事業(4%): クリエアナブキを通じた人材派遣・アウトソーシング
- 施設運営事業(5%): ホテル・公共施設の運営
- 介護医療事業(5%): 有料老人ホーム「アルファリビング」など
- 小売流通事業(6%): スーパーマーケット運営
- エネルギー事業(5%): 高圧一括受電サービス、日本電力を通じた電力供給
- 観光事業(2%): ホテル・観光施設の運営
沿革と成長の軌跡
- 1964年: 穴吹興産株式会社 設立
- 1970年: 立体駐車場事業開始
- 1984年: 投資用ワンルームマンション事業進出
- 1985年: ファミリーマンション事業開始(「アルファステイツ」シリーズ)
- 2004年: 大阪証券取引所第二部に上場
- 2006年: 東京証券取引所市場第一部に指定
- 2013年: 東証一部に市場統合
- 2022年: 東証スタンダード市場へ移行
最新の動向
- マンション開発の拡大: 千葉県市川市で新築分譲マンション(約100戸)の販売を開始し、2026年6月期に引き渡し予定。
- 介護事業の拡充: 京都に住宅型有料老人ホームを開設し、東京進出も検討中。
- 電子契約の導入: 不動産売買契約の電子化を進め、電子契約を順次導入。
- PPP/PFI事業の拡大: 官民連携による施設管理・運営事業を積極的に展開。
拠点・関連会社
- 主要拠点: 高知、松山、岡山、広島、山口、大阪、東京、新潟、北部九州、長崎、南九州 他
- 主な連結子会社:
- クリエアナブキ(人材派遣)
- 穴吹エンタープライズ(ホテル・施設運営)
- 日本電力(電力供給)
- あなぶき・きなりの家(住宅関連)
財務情報と市場評価
- 決算期: 6月
- 従業員数:
- 連結: 1,668名
- 単体: 443名(平均年齢 37.9歳、平均年収 646万円)
- 主要取引銀行: 香川銀行、中国銀行、百十四銀行、あおぞら銀行、三菱UFJ銀行
比較対象企業
- コスモスイニシア (8844)
- フジ住宅 (8860)
- 日神グループHD (8881)
穴吹興産は、四国地方を中心に強いブランド力を持つ不動産会社で、マンション開発を中心に、人材派遣、エネルギー、ホテル・介護など幅広い事業を展開しています。今後は、関東・関西圏への進出や電子契約導入などのデジタル化を進めながら、収益基盤の拡大を目指しています。
株主構成
親会社
- 穴吹ハウジングサービス(非上場)
大株主

株価指標
- 概要
- PER:5倍程度
- PBR:0.5倍程度
- 利回り:3%程度
- 時価総額:200億円程度
コーポレートガバナンス
支配株主との取引等を行う際における少数株主の保護の方策に関する指針
【支配株主に関する事項】
当社の主要株主かつ代表取締役社長である穴吹忠嗣は、支配株主に該当します(直接所有分議決権所有割合8.23%、合算対象分議決権所有割合49.57%(2024年6月30日現在))。当社では、一般の株主の利益相反のおそれがある支配株主との取引については、支配株主を不参加とした上で、社外取締役及び社外監査役の独立役員5名全員の出席を確保した取締役会の決議を要すると同時に、その取引条件は、専門家の意見及び一般的な市場価格を勘案して決定することとしております。
【親会社に関する事項】
株式会社穴吹ハウジングサービスは、当社の議決権を47.00%(2024年6月30日現在)所有する当社の親会社に該当します。株式会社穴吹ハウジングサービスの企業グループ(当社グループを除く)は、マンション管理、不動産賃貸仲介及び建物清掃等の事業を行っており、当社との間に、事務所及び社宅の賃貸借等の取引関係があります。また、2015年9月25日より、親会社より兼任取締役1名が就任しております。また、2023年12月1日より、当社の監査役1名が親会社の兼任監査役に就任しております。その他、現在、出向者3名の受入れをしております。株式会社穴吹ハウジングサービスの企業グループが行う主要な事業は、当社グループが行う不動産開発事業、不動産売買事業、人材サービス関連事業、施設運営事業、介護医療関連事業、小売流通関連事業、エネルギー関連事業及び観光事業等とは明確な棲み分けがなされており、加えて、親会社と重要な契約等は締結されておらず、親会社の企業グループから当社の自由な事業活動が阻害される状況にはないと考えられます。また、当社の経営基盤を安定させ、事業展開の可能性を拡げることを目的として、当社からの要請に基づき、親会社から兼任取締役が就任しておりますが、当社の取締役会のうち親会社の兼任取締役は1名であることから、当社の独自の経営判断を行うことができる状況を確保していると考えております。
ただし、一般の株主の利益相反のおそれがある親会社との取引については、支配株主との取引と同様に、親会社の兼任取締役を不参加とした上で、社外取締役及び社外監査役の独立役員5名全員の出席を確保した取締役会の決議を要すると同時に、その取引条件は、専門家の意見及び一般的な市場価格を勘案して決定することとしております。
その他コーポレート・ガバナンスに重要な影響を与えうる特別な事情
【グループ経営の方針等】
当社グループは、経営理念に立脚した上で、グループ会社と協力及び相乗効果を発揮しながら、グループ全体での企業価値の継続的な増大を目指しております。【上場子会社に関する事項】
当社子会社の株式会社クリエアナブキは、東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場していた上場子会社でしたが、同社の主力事業をとりまく業界環境の変化に迅速に対応し、同社を含めた当社グループの企業価値の向上等を図るため、同社を完全子会社とすることを目的として、2021年12月10日の取締役会決議に基づき同社の普通株式の公開買付け及び株式等売渡請求を実施し、それにより同社は上場廃止となり、また、2022年2月28日付で当社の完全子会社となっております。
穴吹興産が上場している背景
穴吹興産が2004年に大阪証券取引所市場第二部(現・東京証券取引所スタンダード市場)に上場した背景には、親会社である穴吹ハウジングサービスの戦略的な意図があったと考えられます。以下のような要因が関係している可能性があります。
1. 穴吹グループ内での事業分割と役割分担
穴吹グループは、穴吹興産を不動産開発・分譲を担う会社として、穴吹ハウジングサービスを不動産管理を担う会社として、それぞれ役割を分けて発展してきました。
穴吹ハウジングサービスの親会社としての立場は、資本関係の強化とともに、事業の独立性を確保しながら、グループ全体の成長を促進する意図があったと考えられます。
2. 資金調達の必要性
不動産開発事業を主力とする穴吹興産にとって、大規模なプロジェクトを進めるためには安定的な資金調達が不可欠でした。上場によって以下の資金調達手段が強化されました。
- 株式市場を通じた直接的な資金調達(公募増資など)
- 上場企業としての信用力向上により、金融機関からの借入が容易に
- 投資家層の拡大による資金流入の可能性
特に、2000年代初頭は日本の不動産市場が活況を呈しており、資金を調達しやすいタイミングだったと考えられます。
3. 穴吹興産の事業成長を加速させるため
穴吹興産は四国エリアを中心にマンション分譲事業で大きな実績を持っており、今後の全国展開や新規事業(介護・エネルギー・観光など)を拡大するために、上場が必要だったと考えられます。
また、グループ全体のブランド力強化にもつながり、顧客や取引先に対する信頼性を向上させる目的もあったでしょう。
4. 穴吹ハウジングサービスの管理・運営事業との相乗効果
穴吹興産が開発・販売するマンションの管理業務は、穴吹ハウジングサービスが担っています。穴吹興産が上場することで、以下のような相乗効果が期待されました。
- マンション分譲市場での競争力強化
- 販売後の管理・運営を穴吹ハウジングサービスが継続受注し、グループ全体の収益を最大化
- マンションブランド「アルファ」シリーズの認知度向上
5. 穴吹グループの事業ポートフォリオ最適化
穴吹グループは、マンション開発・分譲、不動産管理、介護、エネルギーなど、複数の事業を展開しています。穴吹興産の上場により、事業ごとのリスク管理がしやすくなり、グループ全体の経営戦略を柔軟に進められるようになったと考えられます。
6. まとめ
穴吹ハウジングサービスが穴吹興産を上場させた背景には、以下の要因があったと考えられます。
- グループ内の事業分割・役割分担 → 不動産管理と分譲開発の分離
- 資金調達の強化 → 事業拡大のための資本市場活用
- 成長加速 → 全国展開や新規事業拡大のため
- 相乗効果の創出 → 分譲マンション事業と管理事業のシナジー強化
- 事業ポートフォリオの最適化 → グループ全体の成長戦略の一環
穴吹興産の上場は、穴吹グループ全体の競争力を強化し、長期的な成長戦略を推進する重要な一手だったと考えられます。
TOBの可能性と投資戦略
- 穴吹興産はもともと上場子会社であったクリエアナブキという子会社をTOBで完全子会社化した過去ががあることから、穴吹グループとして穴吹興産もTOBされる可能性は否定できない。
- PER・PBR的には割安感はあり、配当も一定程度あることから、TOB候補株式の有力な銘柄の1つとして保有する選択肢もあり得る。
TOB用に証券会社をもう1つ作っておこう
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