投資信託の手数料が運用成績に与える影響とは?コストを抑える運用戦略を解説

投資信託の手数料が運用成績に与える影響とは?コストを抑える運用戦略を解説

投資信託を運用するうえで、資産形成に大きく影響するコストが「手数料」です。手数料の仕組みを理解せずに投資を始めると、気づかないうちに資産が目減りしてしまう可能性があります。この記事では投資信託の手数料の種類と仕組み、手数料を抑えた投資信託の選び方をわかりやすく解説します。

記事を読めば無駄なコストを払わずに、投資信託で賢く資産を増やすことが可能です。投資信託を選ぶ際は基本的な手数料に加え、目に見えない隠れたコストにも注意する必要があります。ノーロードで信託報酬が低いインデックスファンドを選ぶと、効率的に資産を増やせます。

投資信託の基本的な仕組み

投資信託は多くの投資家から集めた資金を1つにまとめ、運用の専門家が株式や債券、不動産などに投資・運用する金融商品です。投資信託は販売会社と運用会社、信託銀行の3社が連携して運営しています。少額から始められ、幅広い資産に分散できる点が投資信託の大きなメリットです。

投資信託の運用で生じた利益や損失は投資額に応じて投資家に分配されます。投資信託の運用・管理には手数料として「購入時手数料」「信託報酬」「信託財産留保額」がかかります。投資信託の手数料は実質的なリターンに影響するため注意が必要です。
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投資信託の手数料の種類

投資信託にかかる以下の手数料について詳しく解説します。

  • 購入時手数料
  • 信託報酬
  • 信託財産留保額

購入時手数料

購入時手数料は投資信託を購入する際に販売会社へ支払う費用です。一般的に購入金額の数%が購入時手数料として差し引かれます。購入時手数料の大きな特徴は同じ投資信託でも販売会社が違えば料率が変わる点です。

近年では手数料が無料の「ノーロード投資信託」も増えており、投資を始める際の初期費用を抑えられます。資産を効率的に増やすには、できるだけ購入時手数料が安い投資信託を選びましょう。

信託報酬

信託報酬とは投資信託を保有している間、日々差し引かれる手数料です。信託報酬は運用や管理にかかる費用として年率で提示されます。投資家が信託報酬を直接支払うわけではなく、投資信託の財産の中から自動的に引かれます。信託報酬は運用成績に関係なく継続的に発生するため、長期的な資産額に大きく影響するコストです。

インデックスファンドは信託報酬が低く、アクティブファンドは高い傾向があります。近年ではインデックスファンドを中心により信託報酬の低い商品が増えてきました。特に長期運用を考える場合はできるだけ信託報酬の低い商品を選ぶことで効率良く資産を増やせます

信託財産留保額

信託財産留保額とは投資信託を解約(換金)する際にかかる手数料で、通常0.1〜0.5%程度に設定されています。信託財産留保額は運用会社や販売会社の利益ではなく、投資信託自体の財産として留保されます。手数料の設定により運用残額の減少を防ぎ、長期保有者への不利益を抑えることが信託財産留保額の目的です。

信託財産留保額はすべての投資信託に設定されているわけではありません。海外資産や債券など売買コストが高い投資信託で、信託財産留保額が多く設定されています。投資信託の短期売買を繰り返すと信託財産留保額の負担が増えるため、長期運用を前提に商品を選びましょう。

投資信託の手数料と運用成績の関係

投資信託の運用成績は利回りだけでなく手数料によっても大きく左右されます。同じ利回りの投資信託でも、手数料が高ければ投資家の手元に残る利益は減ってしまいます。特に信託報酬のような保有期間中ずっとかかる費用は最終的な資産額に大きな差を生むため注意が必要です。

投資信託の手数料は市場変動に関わらず確実にかかるため、低く抑えることで利益を最大化できます。高い手数料を払うほど良い運用成績が保証されるわけではありません。投資期間が長くなるほど手数料の差は複利効果で拡大します。投資信託を選ぶ際はコスト意識を持ち、手数料をしっかり確認しましょう。

手数料が安い投資信託の選び方4選

資産を効率的に増やすために、手数料が安い投資信託を選ぶ方法を4つ紹介します。

  • ノーロードの商品を選ぶ
  • 信託財産留保額がかからない商品を選ぶ
  • インデックスファンドを選ぶ
  • 信託報酬を市場平均と比較して選ぶ

ノーロードの商品を選ぶ

ノーロードとは購入時手数料が無料の投資信託を指します。投資信託を購入する際は通常購入金額の数%が手数料として差し引かれますが、ノーロード商品には手数料がかかりません。ノーロードの商品を選ぶと初期コストがかからず、投資資金の全額を運用に回せます。

近年はネット証券を中心にノーロードの投資信託が増えており、選択肢も豊富です。特に長期投資では購入時の手数料の差が将来の資産額に大きく影響するため、できるだけ初期コストを抑える必要があります。ただし、ノーロードでも信託報酬などの手数料は発生するため、総合的にコストを比較して投資信託を選びましょう。

信託財産留保額がかからない商品を選ぶ

信託財産留保額がかからない投資信託を選ぶと、解約時のコストを抑えられます。信託財産留保額は資産の売却や組み換えで発生するコストを負担するための手数料です。信託財産留保額の設定がない商品であれば解約時に全額を受け取れるため、資金移動やリバランスを行いやすくなります。

長期投資でもライフイベントや市況の変化で現金が必要になる可能性があるため、解約時コストがかからない商品を選ぶと安心です。ただし、信託財産留保額がないからといって安易に売買を繰り返すと、他の手数料や税金が増えるリスクがあります

インデックスファンドを選ぶ

インデックスファンドは日経平均株価やS&P500など、特定の指数への連動を目指す投資信託です。個別銘柄の選定にかかる人件費や調査費用が少ないため、インデックスファンドの信託報酬は低く設定されています。インデックスファンドは幅広い銘柄に分散投資でき、個別株投資よりもリスクを軽減しやすい点が魅力です。

同じ指数に連動しているインデックスファンドでも信託報酬や運用実績に差があるため、複数の商品を比較検討しましょう。低コストで長期的に市場全体の成長の恩恵を受けたい人には、インデックスファンドがおすすめです。
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信託報酬を市場平均と比較して選ぶ

信託報酬は投資信託を保有している期間中、継続的にかかるコストです。長期運用では信託報酬が運用成果に大きく影響するため、投資信託を選ぶ際は必ず市場平均と比較しましょう。同じインデックスファンドでも信託報酬のわずかな差が10〜20年後に数十万円以上の差になることもあります。

信託報酬の市場平均は金融庁や投資信託協会の公表データ、金融情報サイトなどで確認が可能です。S&P500や全世界株式に連動するインデックスファンドであれば、信託報酬が年率0.1%前後が低い水準と言えます。平均より低い信託報酬の商品を選べば複利効果をより高められ、資産形成のスピードも上がります。

投資信託の手数料以外にかかるコスト

投資信託には表面上の手数料以外にも運用成績に影響を与える隠れたコストが存在します。投資信託の手数料以外にかかる以下のコストについて解説します。

  • 税金
  • 分配金にかかるコスト
  • 為替手数料

税金

投資信託の運用益には手数料以外に税金がかかります。所得税15%+住民税5%の合計20.315%が投資信託の運用益から源泉徴収されます。投資信託の売却益が10万円の場合、約2万円が税金として差し引かれ手元に残るのは8万円程度です。

投資信託の税金を申告する手間を省くには、特定口座(源泉徴収あり)を利用しましょう。特定口座を使えば、証券会社が税金の計算から納税までを代行してくれるため確定申告が不要です。ただし、損益通算や繰越控除を適用するには確定申告を行う必要があります。

投資信託の税金の負担を軽くしたい場合はNISA口座がおすすめです。NISA口座を使えば一定額まで投資信託の運用益や分配金が非課税となります。

分配金にかかるコスト

投資信託は分配金がどこから支払われるかによって以下の2種類に分かれます。

  • 普通分配金:運用で得られた利益から支払われるお金
  • 元本払戻金(特別分配金):投資した元本の一部が戻ってくるお金

投資信託の普通分配金は利益の一部を投資家に還元するもので、受け取るたびに20.315%の税金が源泉徴収されます。分配金が支払われると投資信託の値段(基準価額)が下がり、複利効果が薄れる点に注意してください。長期的に見ると、投資信託は分配金を受け取らずに再投資した方が大きなリターンを期待できます。

投資した元本の一部が戻ってくる元本払戻金(特別分配金)は利益ではないため、税金がかかりません。NISA口座で受け取る投資信託の分配金は非課税ですが、複利効果が薄れる点は同じです。

為替手数料

為替手数料は外国株式や外国債券など、外貨建て資産に投資する投資信託で発生するコストです。海外の資産を買うときや海外の資産を売って日本円に戻すときに為替手数料がかかります。一般的に、投資信託の為替手数料は1通貨当たり数十銭程度の設定です。

為替手数料は外貨資産の購入時だけでなく、投資信託の解約時や分配金の受取時にも発生します。ネット証券や一部の金融機関では為替手数料を大幅に抑えられるサービスやキャンペーンを提供しています。海外の株式や債券などに投資する際は為替手数料も考慮して商品を選びましょう。

投資信託を選ぶ際の注意点

投資信託は以下の3点に注意して選びましょう。

  • 投資対象と運用方針を確認する
  • コストだけでなく運用成績も考慮する
  • 長期保有でリスクを抑える

投資対象と運用方針を確認する

投資信託を選ぶときは商品の説明書である「目論見書(もくろみしょ)」で、以下のポイントを確認してください。

  • 投資している資産の種類
  • 投資している国や地域
  • 主な投資先の企業
  • 運用の目標(ベンチマーク)
  • 運用のスタイル
  • 分配金の方針

投資対象となる国や産業によって、投資信託のリスク・リターンの特性が大きく異なります。投資信託の運用方針がインデックス型なのかアクティブ型なのかによっても、期待できる成果やコスト構造が変わります。投資信託がどのような性格を持っているのかを見極め、自分の投資目的やリスク許容度に合う商品を選びましょう。

コストだけでなく運用成績も考慮する

投資信託を選ぶ際は手数料などのコストだけでなく、過去の運用成績も合わせて確認してください。信託報酬が低くても、長期間にわたって基準価額が下落している投資信託では資産を増やせません。投資信託の運用成績を見る際は1年などの短期だけでなく3年・5年・10年といった長期のパフォーマンスをチェックしましょう。

安定して指数を上回っている投資信託を選ぶことが、効率的な資産形成につながります。ただし、過去の成績が将来を保証するわけではありません。投資信託の運用方針や投資対象なども踏まえて、投資する商品を選ぶ必要があります。手数料と運用成績のバランスを考えて投資信託を選ぶことが資産形成の近道です。

長期保有でリスクを抑える

投資信託は短期的に見ると価格が大きく変動するタイミングがあります。しかし、投資信託を長期保有することで一時的な値下がりの影響を軽減する効果が期待できます。株式型や海外資産を対象とした投資信託は市場の変動が激しいため、短期で判断すると損失が出やすい点に注意が必要です。

投資信託は長期的に保有することで経済成長や複利効果の恩恵を受けられます。長期保有すれば売買回数も減らせるため、手数料や税金などのコスト削減にもつながります。投資信託を選ぶ際は短期の値動きに惑わされず、5〜10年といった長期的な視点での運用を前提に考えましょう。

投資信託の手数料を見極めてコストを抑えた運用を目指そう

投資信託は少額から分散投資ができる金融商品ですが、手数料が長期的な運用成績に大きく影響します。投資信託にかかる手数料は主に以下の3つです。

  • 購入時手数料
  • 信託報酬
  • 信託財産留保額

投資信託には基本的な手数料に加えて税金や為替手数料、分配金課税などの見えないコストも存在します。投資信託のコストを抑えるには、ノーロードの投資信託や信託報酬の低いインデックスファンドを選びましょう。市場平均と比較することで、低コストの投資信託を選びやすくなります。

投資信託を購入する際はコストだけでなく、運用成績や投資対象、運用方針を確認することも欠かせません。長期的な視点で投資信託を保有することがリスク軽減と資産形成の近道です。投資信託の手数料の仕組みを正しく理解し、効率良く資産を増やせる商品を選びましょう。

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