証券口座のセキュリティと乗っ取り対策:複数口座を持つメリットとおすすめ証券会社

証券口座のセキュリティと乗っ取り対策:複数口座を持つメリットとおすすめ証券会社

近年、インターネット証券の利用者を狙った証券口座のセキュリティ問題がクローズアップされています。実際に証券口座への不正アクセスや口座乗っ取り被害が相次ぎ、大手ネット証券各社でも対策に乗り出す事態となりました。こうした背景から、自分の大切な資産を守るためにどんな備えができるか、投資経験者にとっても再検討が必要な時代と言えます。

本記事では、最近の証券口座をめぐるセキュリティ事件の概要と、それに対するリスク分散策として証券口座を複数保有するメリットを丁寧に解説します。さらに、複数口座を使い分けることによって得られる管理面・運用面での利点についても触れつつ、特におすすめしたい証券会社(マネックス証券、松井証券、moomoo証券)の特徴やセキュリティ対策をご紹介します。複数の口座を開設するハードルは低く、維持費無料で手軽に始められますので、最後までお読みいただき資産運用の安全性向上にお役立てください。

最近相次ぐ証券口座の不正アクセス・乗っ取り被害

まず、昨今問題となっている証券口座の不正アクセス被害について見てみましょう。2024年末頃から2025年にかけて、楽天証券・SBI証券・野村證券・マネックス証券・SMBC日興証券など複数の大手証券会社で、顧客の証券口座が第三者に乗っ取られる事件が相次いで発生しました。何者かがフィッシング詐欺等によって不正にログインIDやパスワードを入手し、本人になりすまして口座にログイン。保有株を無断で売却し、その売却代金で見知らぬ外国株を大量購入するといった不正取引が行われたのです。実際に被害に遭った投資家からは「身に覚えのない認証コードが突然届いた」「買った覚えのない外国株が口座に入っていた」等、不審な出来事に気付いた声も上がっています。

こうした手口では、攻撃者は日本株を売却して得た資金で中国市場の低位株(出来高の少ない銘柄)を買い付け、不自然な相場変動を起こした上で高値で売り抜けて利益を得たと考えられています。金融庁の発表によれば、2025年2月から4月中旬までの約2ヶ月半で楽天証券を含む大手6社において合計1454件もの不正取引が確認され、被害総額は約954億円に上ったとのことです。被害の深刻さを受け、日本証券業協会と主要証券会社10社は、約款上は補償対象外としてきた証券口座乗っ取り被害について、例外的に損失の一部を補償する方針を共同発表する事態にもなりました。セキュリティに詳しい著名投資家のテスタさんでさえ被害に遭うケースが出ており、「自分は大丈夫」と油断するのは非常に危険だと言えます。

では、こうした不正アクセス・乗っ取りへの対策として、私たち個人投資家は具体的に何ができるのでしょうか。基本となるのは各証券会社が提供する二要素認証(ワンタイムパスワードなど)を必ず設定することや、不審なメール・サイトに十分注意することです。そして次に検討したいのが、証券口座を一社だけでなく複数に分散して保有することです。次章では、この「複数口座」で資産を守る考え方について詳しく見ていきましょう。

複数の証券口座を持つことがリスク分散になる理由

証券口座を複数持つ最大のメリットは、リスク分散になる点です。具体的には、ひとつの証券会社の口座でトラブルが起きても、他の口座へ資産を逃がしたり別口座で取引を継続したりできるため、被害や機会損失を最小限に抑えられます。例えば、万が一メインで使っている証券口座が不正アクセス被害に遭い一時利用不能となった場合でも、サブの口座に資産の一部があればそちらで売買を行えます。あるいは証券会社側のシステム障害で注文が出せなくなった際にも、別の証券口座から取引を続行できるため安心です。

このように「一社に全てを預けない」ことで、単一口座に起こり得るリスク(ハッキング被害、システムダウン、証券会社の経営トラブル等)を分散できます。特に近年は前述のような不正アクセス事件が増えており、常に証券口座のセキュリティに万全を期す必要があります。複数の証券口座を持っておけば、仮に1つの口座が乗っ取り被害に遭った場合でも被害資産を限定できるほか、他口座への影響が及ぶ心配はありません(各社でID・パスワードを別々に管理すれば連鎖被害も防ぎやすくなります)

以上のように、複数口座保有はセキュリティ面・信頼性の面で「資産の卵を一つのかごに盛らない」有効な対策となります。

複数口座を使い分ける運用メリット

複数の証券口座を持つことには、単なるリスクヘッジ以上に資産管理や運用効率の向上といったメリットもあります。投資経験者の方であれば、複数口座を上手に使い分けることで得られる以下のような利点に着目してみてください。

  • 資産の見える化・管理がしやすい: 資産運用の目的別や手法別に口座を分けることで、それぞれの成績を明確に把握できます。例えば長期投資用の口座と短期売買用の口座を分けておけば、長期運用資産の状況とデイトレードの損益を混同せずに管理できます。口座ごとに資産状況が見やすくなるため、自分のポートフォリオ全体を俯瞰しやすくなるでしょう。
  • 取引戦略の分離: 上記のように長期と短期、あるいは現物取引と信用取引、新NISA枠と特定口座など、異なる戦略・目的ごとに証券口座を使い分け可能です。これにより、短期売買の動きに長期保有分が左右されるといった心配も減り、戦略ごとの適切な運用が継続しやすくなります。「この口座は長期用だから余計な売買はしない」といったルールを守りやすくなる効果も期待できます。
  • 各社のサービスを活用: 証券会社によって手数料体系や取扱商品のラインナップ、ツールの使い勝手には違いがあります。複数の口座を持てば、各社の強みを活かした使い分けが可能です。たとえば、手数料の安い会社で短期売買を行い、情報ツールが充実した会社でじっくり投資判断をする、といった形で良いとこ取りの運用ができます。また、ある証券会社では取り扱いのない銘柄(例えば米国株や新興国ETF等)を他社の口座で補完するといった柔軟な投資も実現します。
  • 新規公開株(IPO)投資のチャンス拡大: 複数の証券会社に口座があれば、それだけIPOの抽選申し込み口数を増やせるため、当選の機会も増加します。IPOは証券会社ごとに割り当てが異なるため、複数口座を持つメリットが大きい分野です。IPO狙いの投資家にとって、主要な証券会社口座は一通り開設しておくことがセオリーになっています。
  • 緊急時のバックアップ: これは前述のリスク分散にも通じますが、相場急変時に一社のシステム障害で取引できないと致命的です。複数口座があればバックアップ体制が整うため、心理的な安心感を持ってトレードに臨めます。メイン口座とサブ口座で資金を振り分けておけば、いざというときスムーズに代替手段を取れるでしょう。

以上のように、証券口座を複数使い分けることは経験豊富な投資家ほど活用している手法です。一方で口座数が増えると管理が煩雑になるデメリットもありますが、昨今はマネーフォワードなど資産管理ツールで複数口座の資産を一括可視化することも可能ですし、税計算も年末に各社から届く年間取引報告書をまとめる程度で対応できます。メリットと比べれば手間は十分に許容範囲と言えるでしょう。

それでは次に、実際に複数口座運用を行う際に特におすすめできる証券会社を3社ご紹介します。それぞれセキュリティ対策も万全で特徴あるサービスを提供しており、サブ口座・メイン口座問わず活躍してくれるでしょう。

おすすめの証券会社3選とその特徴

複数口座を検討するにあたり、「どの証券会社の口座を追加で開設すべきか」は悩ましいポイントです。ここでは信頼性が高く、当局からのセキュリティ基準も満たした上で各社独自のメリットがある3社をピックアップしました。いずれも口座維持費無料で開設できるため、気になるものがあれば是非チェックしてみてください。

マネックス証券:充実したサービスと高度なセキュリティ体制

マネックス証券はオンライン証券大手の一角で、国内株・米国株からFX、暗号資産CFDに至るまで幅広い投資商品を取り扱う総合ネット証券です。投資情報やツールも充実しており、特に米国株取引の使い勝手には定評があります。メイン口座としてもサブ口座としても人気が高く、各社の強みを生かした複数口座運用をする上でも1つは持っておきたい証券会社です。

セキュリティ面でもマネックス証券は力を入れており、365日24時間の監視体制でシステムを守り不測の事態に備えています。ログイン時や重要な手続き時にはワンタイムパスワード(2段階認証)を設定でき、仮にログイン情報が漏洩しても第三者による不正利用を強力に防止可能です。実際、先の不正アクセス問題に際してマネックス証券も被害調査を行い、被害者への個別連絡と補償検討を進める方針を表明しています。このようにセキュリティ対策が社内体制・システム両面で整っている点は、資産を託す上で大きな安心材料となるでしょう

マネックス証券は口座開設や維持にコストがかからず、ネットで手続きが完結します。国内株の現物取引手数料は約定ごとの定額プラン・取引毎プランから選択可能で、米国株は取引手数料が業界最低水準(0.495%上限22米ドル)となっています※。投資情報サービス「マネックス銘柄スカウター」や高機能ツール「TradeStation」を無料提供している点も魅力です。総合力に優れたマネックス証券は、複数口座体制の柱としてぜひ検討したい存在です。

株・投資信託ならネット証券のマネックス

松井証券:老舗ネット証券の堅牢なセキュリティと使いやすさ

松井証券は、日本のオンライン証券サービス草創期から存在する老舗のネット証券です。創業は大正時代と歴史が長く、ネット専業に転換してからも安定した経営と顧客サービスで定評があります。一日定額手数料コース(1日の約定代金合計額に応じた定額料金)をいち早く導入するなど、手数料面の工夫や個人投資家目線のサービスにも積極的です。松井証券の口座は「サブとして開いてみたらメインより使いやすくて乗り換えた」といった声もあるほど、操作画面のシンプルさやサポート品質にも信頼があります。

セキュリティ対策に関しても、松井証券は非常に厳重です。ログインID・パスワードだけで重要手続きが完結しない仕組みを採用しており、取引や出金時には必ず別途「取引暗証番号」(4桁の数字)による認証を行っています。万一ログイン情報が漏れてしまっても、この取引暗証番号が分からなければ勝手に売買や出金はできないため被害を防ぎやすくなります。また、登録情報の変更や出金指示の際にはSMS・自動音声による認証コード入力を必要とする二段階認証を導入済みです。ログイン時にも一定回数のパスワード誤入力でアカウントロックがかかる仕組みや、キーボード入力を盗み見るスパイウェア対策のバーチャルキーボードなど、多層的なセキュリティが敷かれている点で安心できます。

松井証券も口座管理料等は一切無料で利用できます。株式売買手数料は上限無料(1日50万円以下の株式約定は手数料0円、以降も段階制)という業界屈指の低コストを実現しており、デイトレードで頻繁に売買する場合でも手数料負担を抑えられます。信用取引手数料も無料で金利も比較的低めに設定されています※。商品面では、投資信託やIPO取り扱いも充実、新しく米国株取引サービスも開始されました。長年の実績による信頼感と充実した基本サービスを備える松井証券は、メイン・サブどちらの用途でも持っておいて損はないでしょう。

松井証券

moomoo証券:次世代アプリの利便性と高水準セキュリティ

moomoo証券(ムームー証券)は、近年日本市場に参入した新しいオンライン証券会社です。親会社は米ナスダック上場企業のFutu Holdingsであり、グローバルで2,400万人以上のユーザーを持つ投資アプリ「moomoo」を展開しています。特徴は何と言ってもスマートフォンアプリ一つで日米の株取引や情報収集が完結する利便性です。米国株の取り扱い銘柄数が非常に豊富で手数料も業界最安水準(例:米国株取引手数料は他社の約1/4の0.132%)と、アクティブトレーダーにも魅力的な料金体系を提供しています。2024年から始まった新NISAにも対応しており、新NISA口座での売買手数料は日本株・米国株ともに無料とするキャンペーンも展開しています。

セキュリティ面でも、moomoo証券は最新の基準を満たしています。日本法人として金融庁の監督を受けており、サイバーセキュリティや個人情報保護は日本の金融機関と同等の水準で管理されています。顧客情報はすべて暗号化された上で国内の独立したデータサーバーに保管され、グループ会社への情報漏洩リスクもない体制です。こうした高水準のセキュリティ設計から、「セキュリティ対策が強化された証券会社の一例」としてmoomoo証券を挙げる声もあるほどです。実際の利用においても、ログイン時の二要素認証や不審なアクセスの検知など、安心して取引できる仕組みが整えられています。

moomoo証券はスマホ完結で手軽に取引を始められる点も魅力です。何より口座開設・維持費は無料なので、使い勝手を確かめるために開設してみるのも良いでしょう。高機能チャート分析やSNS感覚で参加できる投資家コミュニティなど、新興ネット証券ならではの斬新なサービスを享受できます。

moomoo証券【WEB】

複数口座開設のハードルは低い:手軽に始めて安心を

「複数の証券口座を運用するのが有効なのは分かったけれど、口座開設の手続きが面倒なのでは?」と思われる方もいるかもしれません。しかし現在では、証券口座の開設はオンラインで完結し非常に手軽になっています。今回紹介したマネックス証券、松井証券、moomoo証券のいずれも最短数分で申込み可能で、本人確認もスマホで書類を撮影するだけです。多くの証券会社は口座管理料・維持費が無料ですから、口座を作ったまま放置していてもコストは一切かかりません。したがって、「とりあえずお試しでサブ口座を1つ作ってみる」ということも気軽にできます。

また、口座開設キャンペーンを活用すればお得に始められる場合もあります。各社で新規口座開設者向けに取引手数料の優遇や現金・ポイントプレゼントなどを行っていることが多く、特にmoomoo証券では抽選で最大○万円相当の株式購入代金がもらえるキャンペーン等ユニークな特典を展開しています※。こうした特典も狙いつつ、まずは少額から複数口座での資産運用を体験してみるのも良いでしょう。

最後に、複数口座を保有するにあたっては各口座のセキュリティ設定を万全にすることを忘れないでください。せっかく口座を分けても、一つひとつの口座でパスワード使い回しや二段階認証未設定のままでは本末転倒です。必ずそれぞれ強固なログインパスワードを設定し、提供されている二要素認証を有効化しましょう。定期的なパスワード変更やログイン履歴の確認など、自衛策もしっかり講じることで、複数口座体制の効果が最大限発揮されます。

まとめ:セキュリティ意識を高め複数口座で資産を安全に運用しよう

証券口座の不正アクセスや乗っ取り被害が現実の脅威となっている今、改めてご自身の資産防衛策を見直すことが重要です。証券会社側でもセキュリティ強化や補償対応に動き出していますが、自分の身は自分で守るという意識を持ち、証券口座セキュリティ対策を講じていきましょう。その有効な手段として、「証券口座を複数持つ」という選択肢リスク分散と運用効率化の両面で大きなメリットをもたらします。

今回紹介したような信頼できる証券会社であれば積極的に活用してみてください。マネックス証券、松井証券、moomoo証券はいずれもセキュリティ万全で魅力あるサービスを提供しており、投資スタイルに応じて組み合わせて使えば資産運用の強力な味方となってくれるでしょう。ぜひこの機会に複数口座運用を検討し、より安心・快適な投資ライフを実現してください。

※本記事中の手数料等の数値は2025年5月執筆時点の情報です。最新の条件は各証券会社公式サイトでご確認ください。

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