【2025年7月テーマ株】ポスト石破の候補者①:高市早苗氏の政策ビジョンと関連が深い銘柄
2025.05.21投稿

2025年7月予定の参議院選の結果次第では 石破茂首相が退陣し、ポスト石破をめぐる自民党総裁選→新首相誕生というシナリオは十分あり得ます。参院選そのものに首相を直接交代させる仕組みはなく、「与党がどこまで議席を失うか」「党内がどこまで責任論でまとまるか」に左右されますが、今回は参議院選の結果に応じた今後の予測を整理したうえで、関連する銘柄を紹介していきたいと思います。
参院選と今後の総裁の行方
現状と参院選の位置づけ
項目 | 現状 |
---|---|
首相 | 石破茂(2024年10月就任、少数与党を率いる) |
与党勢力 | 衆院:昨年10月の早期解散総選挙で過半数割れ(215議席) 参院:改選前を含め125議席ギリギリの過半数維持が目標 |
支持率 | 直近の共同通信世論調査で27.4%と最低水準 |
政治日程 | 7月参院選・秋に補正予算編成→そこで政局が動く可能性が高い |
ポイント
- 参院選は内閣不信任決議の舞台ではありませんが、与党が大敗すると「民意を失った」として退陣論が噴出しやすい。
- 石破首相自身、敗北時は「責任を取る」と過去に言及しており、党内には「予算成立後に辞任を」という声も根強い。
シナリオ別にみる首相交代リスク
参院選の帰結 | 予想される政局 | 首相交代リスク |
---|---|---|
(A) 与党が改選議席の3分の2近くを確保し、非改選分と合わせて過半数確保 | 石破体制続投。支持率回復のための内閣改造程度で乗り切り。 | 低 |
(B) 与党が過半数割れだが最大勢力を維持 | 野党提出の問責可決→国会停滞。石破おろしが加速し、臨時党大会や前倒し総裁選の可能性。 | 中 |
(C) 与党が大敗し、改選議席で野党第一党にも劣る | 「選挙敗北の責任」で即日退陣論。補正予算前に石破辞任→臨時国会で新首相指名の公算大。 | 高 |
(D) 参院選と衆院解散の“ダブル選挙”を断行し連敗 | 自民・公明の衆参ダブルでの過半数割れも現実味。石破退陣+党執行部総辞職不可避。 | 最高 |
歴史にみる「参院選敗北→首相交代」
年 | 当時の首相 | 敗北後の動き |
---|---|---|
1998 | 橋本龍太郎 | 参院選大敗の翌日に辞任表明 |
2007 | 第1次安倍政権 | 参院選惨敗後、2か月で総辞職(病気も重なり) |
2010 | 菅直人 | 参院選敗北後、与党は少数与党化し政権運営が難航(翌年退陣) |
→今回も与党が大敗すれば、同様に「敗北=首相辞任」の世論・党内圧力が高まるのは自然な流れです。
ポスト石破の候補者
- 高市早苗(経済安保経験) … 昨年の総裁選で2位、保守派の受け皿
- 小泉進次郎 … “小石河”若手グループの旗頭、世論人気は高い
- 河野太郎 … デジタル・防衛の実務経験、無党派層に強み
- 岸田文雄 … “復権”待望論も一部に存在(岸田派)
いずれも石破政権の支持率次第で動きやすく、参院選が「トリガー」になる可能性があります。
まとめ:首相交代の鍵は3つ
- 議席ライン
- 与党で125議席を死守できるか(非改選含め過半数)
- 世論と党内求心力
- 支持率20%台が続けば、敗北規模に関係なく「早期退陣論」が優勢に
- 野党との駆け引き
- 野党が問責・不信任を連動させ、補正予算や条約審議を止めれば、解散か辞任の二者択一に追い込まれる。
結局のところ、参院選は「政権の通信簿」。
- 小幅減なら石破続投。
- 大幅減・過半数割れなら石破総裁選前倒し・辞任の公算が高い。
- ダブル選挙で衆参ともに敗北すれば、石破政権は持たない。
投資家・有権者としては、➀直前の世論調査動向、➁与党が掲げる「最低目標議席」、➂選挙後の自民党内の動きを注視しておくと、政局の先行きを読みやすくなります。
ポスト石破の候補者①:高市早苗氏に関連する銘柄
自民党の高市早苗氏は、経済安全保障担当相など要職を歴任し、憲政史上初の女性首相に最も近い存在とも目されています。経済安全保障を軸に、半導体やエネルギー、サイバー防衛など幅広い政策を提唱してきました。昨年の自民党総裁選でも「食料安全保障」「エネルギー・資源安全保障」「健康医療安全保障」「サイバーセキュリティ強化」「国土強靭化対策」「成長投資と人材力強化」を主要公約に掲げています。
こうした政策ビジョンが実現すれば、恩恵を受ける産業や企業が出てくるでしょう。以下では、今後の高市氏の発言や政策提言と明確に関連し、彼女の掲げるテーマから恩恵を受けそうな日本株銘柄を分野別に紹介します。
三菱重工業(7011):防衛力強化で恩恵
高市氏は日本の防衛力強化に積極的で、防衛費の大幅増額を主張しています。事実、岸田政権下でも防衛費を対GDP2%へ倍増する計画が進み、三菱重工業はその中心的な受益企業です。三菱重工は国内最大の防衛産業メーカーであり、政府から長射程ミサイルの開発・量産を含む約3,784億円規模の契約を受注しました。これは戦後最大の軍備拡張計画(いわゆる「反撃能力」保有)における一環で、中国などを念頭に抑止力を高める狙いがあります。
企業概要:
三菱重工は航空宇宙、防衛、エネルギー、産業機械まで幅広い重工業分野を手がけます。防衛省向けにはイージス艦や潜水艦エンジン、ミサイル、戦闘機部品などを製造し、原子力発電プラントの設計・建設にも関与しています。国産ジェット機の開発撤退など苦い経験もありますが、近年は防衛・宇宙分野が売上の柱として伸びています。政府が掲げる「経済安全保障」の下、自衛隊装備の国内開発や同盟国との共同開発案件(次期戦闘機や迎撃ミサイル)も増える見通しです。
投資家の注目ポイント:
防衛費拡大に伴い、三菱重工の防衛関連売上高は今後数年で倍増すると期待されています。実際、2023年度には対艦・対空ミサイルや極超音速弾頭などの大型開発案件を次々と獲得し、防衛セグメントの受注残高は急増しています。さらに高市氏は防衛費増額の財源について「当面は増税すべきでない」とし、建設国債や他会計の活用で賄う考えを示しました。これは防衛予算が景気に与える悪影響を抑えつつ継続拡大する余地を示唆しており、同社には追い風です。一方の課題は、大規模プロジェクトの遂行能力と採算管理です。
防衛装備品は開発期間が長くコスト超過リスクもあります。また、同社は火力発電設備やプラント事業も抱えており、エネルギー政策の動向によっては業績の浮沈要因となりえます。それでも、日本の安全保障強化と経済独立に寄与する国内企業として、三菱重工は高市ビジョンの下で市場の脚光を浴びる存在と言えるでしょう。
ルネサスエレクトロニクス(6723):半導体国産化の中核
高度情報社会において、半導体は経済安全保障の要と位置付けられています。高市氏も「海外依存度が高い半導体の供給網強化」は喫緊の課題だと指摘し、経済安全保障推進法の下で大規模支援策を講じてきました。そうした政策の恩恵を直接受けるのが、日本の半導体大手ルネサスエレクトロニクスです。同社は車載向けを中心にマイコンやアナログ半導体で国内トップクラスのシェアを持ち、政府の産業支援の下で供給能力増強に努めています。
企業概要:
ルネサスエレクトロニクスは日立・三菱電機系の半導体部門統合に由来し、現在は車載マイコンや産業機器向け半導体で世界有数のメーカーです。近年は米社の買収によりアナログ半導体や通信チップ分野も拡大しました。製造拠点は国内外にありますが、日本国内にも主力工場を構え、官民ファンドの支援で経営再建した経緯があります。
高市氏が経済安保担当相としてまとめた新制度では、半導体が「特定重要物資」に指定され、国内生産支援や研究開発支援の基金(約2.2兆円)が設けられました。この枠組みにより、ルネサスも国内工場の設備投資や技術開発で補助金・基金の活用が可能になっています。
投資家の注目ポイント:
世界的な半導体需給ひっ迫や地政学リスクを背景に、日本政府はTSMC誘致や次世代半導体開発プロジェクト(Rapidusなど)に巨額の資金を投入しています。その中でルネサスは国内設計力と既存顧客基盤を強みに、車載・産業分野の国産半導体供給を支える中核企業と期待されています。高市氏自身、台湾との協力でも「半導体やAI、量子分野で技術協力し、双方が世界に不可欠な存在になることが平和を守ることに繋がる」と強調しています。これは国内プレーヤーの競争力強化にも通じる発言です。
ルネサスの将来性としては、電気自動車や自動運転の普及で車載半導体需要が長期成長する点、IoTや産業DXで高付加価値なチップ需要が増える点が挙げられます。一方、課題として半導体景気の周期性や海外メーカーとの競争があります。メモリを含めた半導体市場は変動が大きく、また国内だけで全てを賄うのは非現実的です。それでも政策的後押しにより設備投資負担の軽減や安定供給契約の確保が進めば、ルネサスの業績変動リスクは緩和され、中長期の成長が期待できるでしょう。
日本製鋼所(5631):原子力政策の鍵を握る企業
エネルギー安全保障の分野で、高市氏は「特別高圧電力を安価安定に供給し、日本産業を守る」として原子力発電の活用を重視する考えです。具体的には「次世代革新炉(新型原子炉)の早期実装」を掲げており、原発の新増設や更新にも前向きとみられます。その政策恩恵が期待されるのが、原子炉向け機器のトップメーカー日本製鋼所です。同社は原子力発電所の心臓部である原子炉圧力容器の製造で世界トップクラスのシェアを持ち、国内でこの巨大鍛造品を一貫生産できる数少ない企業です。
企業概要:
日本製鋼所(JSW)は重電・重工系のメーカーで、主力は素材加工プラントや産業機械ですが、原子力関連では圧力容器や蒸気発生器など原発向け鋳鍛造品を手がけます。北海道室蘭の製造拠点には世界最大級の鍛造プレス機を備え、原子炉容器の一体鍛造に成功した実績があります。国内の原発新設が長らく停滞する中で、原子力部門の売上は細っていましたが、近年は再稼働工事向け需要や海外スペアパーツ需要が入ってきています。高市氏が掲げる「原発のリプレース(建て替え)や次世代炉の開発促進」は、同社のような基幹部品メーカーにとって大きな商機となるでしょう。
投資家の注目ポイント:
ロシア・ウクライナ危機以降のエネルギー価格高騰やカーボンニュートラルの流れを受け、日本でも原発の活用見直しが加速しています。その中で政府は既存原発の60年超運転や次世代革新炉の開発を打ち出しており、高市氏も「革新炉・核融合炉の早期実装」を訴えています。
日本製鋼所は原発関連の国内独占的ポジションゆえに、新増設計画が具体化すれば受注増が見込まれます。実際、同社は原子力規制委員会が認可した新型炉(高温ガス炉など)の部品製造にも関与可能な技術基盤を持っています。また、小型モジュール炉(SMR)など新技術にも参画の意欲を示しています。
ただし課題もあります。原発事業は国家方針による影響が大きく、不透明感が残る点です。世論の動向や規制当局の審査次第では計画が遅延し、設備投資負担を抱え込む恐れもあります。また、原発需要は長期的には緩やかなため、海外展開(米欧やアジアの新設市場)を取り込めるかも焦点です。それでも、エネルギー自給と脱炭素の両立を図る日本において、同社は政策支援の下で復権が期待される銘柄と言えるでしょう。
INPEX(1605):国産エネルギー資源の柱
高市氏の政策には「地政学リスクに備えた国産資源開発への積極投資」が含まれています。日本はエネルギー自給率が低く、石油や天然ガスのほぼ全量を輸入に頼っていますが、政府は非常時に備え国内資源の開発・確保を推進しています。その中心的役割を担うのがINPEX(国際石油開発帝石)です。INPEXは日本最大の石油・天然ガス開発企業で、国内外で資源探鉱・生産を行い、国内では新潟や秋田などでガス田・油田を運営しています。高市氏が唱えるエネルギー安全保障の文脈で、同社は「日の丸資源開発」の旗手として注目されます。
企業概要:
INPEXは元々政府系の石油公社を前身とし、中東・オセアニアから国内まで幅広く石油天然ガスプロジェクトを持つ探鉱生産会社です。代表的な国内事業として、新潟県の南長岡ガス田(国内最大級のガス生産地)や秋田県の八橋油田(日本最大の油田)などを操業しています。
また近年は再生可能エネルギーや次世代エネルギーにも進出し、地熱発電や洋上風力の調査、二酸化炭素の地下貯留(CCS)実験、水素・アンモニア供給チェーン構築など脱炭素対応も図っています。政府の資源エネルギー戦略では、民間企業であるINPEXが国内外での資源権益確保を担い、緊急時には国家備蓄・優先供給の役割も期待されています。
投資家の注目ポイント:
エネルギー市場の構造変化に伴い、INPEXの事業環境にも明暗があります。一つは資源高の恩恵です。世界的な資源高騰を受けてINPEXの採算は向上し、近年業績は好調です。高市氏が訴える国産資源投資の強化は、例えば国内のメタンハイドレート試掘や新潟・秋田沖での油ガス田開発などを後押しする可能性があります。その際、INPEXが培った技術と政府支援で新たな埋蔵量を引き出せれば、日本のエネルギー自立度がわずかでも上昇し、同社の資産価値向上につながるでしょう。
また、高市氏は次世代炉(核融合等)にも言及していますが、核融合実用化は遠い将来のため当面は天然ガスが橋渡しエネルギーです。天然ガスは石炭や石油よりクリーンな燃料としてエネルギー転換期に需要が見込まれ、INPEXのガス資産は有望です。
一方、課題とリスクとしては、脱炭素トレンドによる化石燃料需要の長期減少リスクや、海外プロジェクトの地政学リスクがあります。例えば主力のオーストラリアLNG事業や中東油田は現地政情や国際関係に左右されます。ただし日本政府はエネルギー安保上、一定の石油ガス開発を維持する方針を示しており、高市氏も「国産資源の活用」を掲げています。総じてINPEXは高市ビジョンの「自前資源を持つ強い日本」に直結する銘柄であり、エネルギー価格と政策双方に注目しつつ中長期の価値を見極めたい企業です。
JPホールディングス(2749):子育て支援で女性活躍を後押し
高市氏は経済成長戦略の中で「女性が結婚・出産・子育ての希望を諦めず、介護離職などでキャリアを断念しなくて済む環境整備」が重要だと述べています。具体策の一つに「家事支援サービス利用代金の一部を税額控除する制度」を検討すると明言しており、仕事と家庭の両立支援に力を入れる姿勢です。こうした政策により恩恵を受けるのが、保育園運営最大手のJPホールディングスです。同社は全国で約300以上の保育園・学童クラブ等を運営し、民間による子育て支援事業のリーディング企業として知られます。
企業概要:
JPホールディングスは「日本保育サービス」を中核子会社に、認可保育園や学童保育施設、児童館の受託運営などを全国展開しています。自治体と連携した公設民営保育所の運営受託も多く、業界トップクラスの保育定員数を誇ります。また給食サービスや保育関連の研修事業、人材派遣など周辺事業も手掛け、子育て支援をトータルに提供しています。
待機児童問題が社会課題となった2000年代以降、国の保育拡充策に合わせて急成長してきた経緯があり、政策との結びつきが強い企業です。高市氏が目指す「全世代型社会保障」の中でも、保育・育児サービス充実は女性の就労環境整備や少子化対策に直結する重要分野でしょう。
投資家の注目ポイント:
高市氏の掲げる家事支援の税控除制度が実現すれば、ベビーシッターや家事代行サービス市場が活性化し、JPホールディングスにとっても追い風となる可能性があります。同社自身も保育士の家事支援サービスを福利厚生で提供するなど、この領域への知見があります。
また政府全体でも「こども家庭庁」が発足し、少子化対策と女性活躍推進に予算を振り向ける流れがあります。例えば保育士の処遇改善や企業内保育所設置支援などはJPホールディングスの事業拡大につながります。将来性としては、共働き家庭の増加で保育ニーズは底堅く、同社は業界再編のリーダーとして施設網拡大が期待できます。
一方で課題は人材確保と行政依存です。保育士不足により人件費が上昇傾向にあり、収益率を圧迫しています。また公定価格(自治体の保育所運営費補助単価)に業績が左右される面も強く、政策変更リスクがあります。それでも、高市氏のようなリーダーが女性支援策を前進させれば、業界全体の追い風となるでしょう。JPホールディングスは「女性が活躍しやすい環境づくり」に欠かせないインフラ企業として、一段の成長ステージに入る可能性があります。
グローバルセキュリティエキスパート(4417):サイバーセキュリティ需要拡大
サイバー空間の防御力強化も高市氏の重要な政策テーマです。彼女は「同盟国から見て日本の弱点はサイバーセキュリティだ」と指摘し、積極的な防御措置(能動的サイバー防御)の必要性を早くから提唱してきました。実際、高市氏が提言していた「能動的サイバー防御」を可能にする関連法案が成立し、サイバー防衛体制は新段階に入ろうとしています。
こうした中、防衛省や企業のセキュリティ需要増大の恩恵を受けるのがグローバルセキュリティエキスパートです。同社はサイバーセキュリティ人材教育に特化したコンサルティング会社で、企業や官公庁向けにセキュリティ研修・診断サービスを提供しています。
企業概要:
サイバー攻撃対策の専門集団として、セキュリティコンサルティング、脆弱性診断、セキュリティ人材育成研修などを主力事業とします。特に企業内での疑似サイバー演習(ペネトレーションテスト)や従業員教育サービスに強みがあり、「セキュリティは人から始まる」という理念で人材教育カンパニーを標榜しています。
業績はサイバー関連需要の拡大を背景に成長傾向で、2025年3月期の売上高は前期比+25%の88億円、営業利益も順調に伸びました。顧客は官公庁や大企業、中堅企業まで幅広く、ニーズの高まりに対応して事業領域を拡大しています。
投資家の注目ポイント:
高市氏は「サイバーセキュリティ強化は国防と経済成長の両面で極めて重要」と述べています。政府は2020年代半ばまでに防衛費の中でサイバー関連予算を飛躍的に増やす計画を掲げており、今後は自衛隊や政府機関でのセキュリティ教育・演習需要が増える見込みです。また民間企業でもDX推進に伴いサイバー攻撃リスクが高まっており、セキュリティ投資の拡大トレンドにあります。
グローバルセキュリティエキスパートは人材教育ノウハウというユニークなポジションで、公的機関の演習案件や企業のセキュリティ研修需要を取り込める立場です。直近でも情報漏えいインシデントやランサムウェア被害が相次ぎ、経営層の意識が高まっています。
リスクとしては、同社規模(時価総額500億円程度)の新興企業ゆえのボラティリティの高さです。サイバーセキュリティ市場そのものは拡大が確実視されますが、競合も多く存在します(大手ITベンダー系や外資セキュリティ企業など)。継続的に高成長を維持するには、自社サービスの差別化と人材確保が鍵となります。
それでも高市氏のようなリーダーがサイバー防衛を国家戦略に据えることで、市場全体が底上げされるでしょう。同社はサイバー安全保障強化に貢献する国内企業として、政策テーマに乗った成長が期待できます。
富士通(6702):AI・先端技術への国家投資に期待
高市氏はAI(人工知能)や量子コンピュータなど先端技術の重要性も繰り返し強調しています。彼女は「AIや量子技術は安全保障に本質的変化をもたらし得る」とし、諸外国が巨額投資する中で日本も研究開発を進める必要性を訴えました。
岸田政権下でも生成AIや次世代コンピューティングに対する支援策が打ち出されており、高市氏が指導者となれば一層のテコ入れが予想されます。こうした政策の追い風を受け得る代表格が、総合IT企業の富士通です。同社はスーパーコンピュータ「富岳」の開発などで知られ、AI応用や量子技術研究でも政府と協力関係にあります。
企業概要:
富士通は国内最大級のICT(情報通信技術)企業で、システム構築サービスからハードウェア開発まで幅広く手掛けます。特にスーパーコンピュータ分野では理化学研究所と共同開発した「富岳」が世界トップクラスの性能を誇り、新薬開発や防災シミュレーション、AIモデルの学習などに活用されています。
またAI分野では独自のAIプラットフォームを持ち、製造業の品質検査AIや金融機関の与信AIなど産業用途に強みがあります。さらに同社はデジタルアニーラと呼ぶ量子コンピューティング技術を開発し、組合せ最適化問題の解決を実用化しています。これら先端技術への継続投資は、高市氏のめざす技術立国・経済安全保障に合致するものです。
投資家の注目ポイント:
日本政府は2023年に生成AIの国家戦略を策定し、官民データを提供して国産大型言語モデル(LLM)を育成する方針を示しました。富士通はこのプロジェクトにも参画しており、国家予算を伴うAI開発の中心的役割を担う可能性があります。また高市氏が触れる量子技術についても、富士通は量子コンピュータ実現に向けたコンソーシアムに参画し、国内でいち早く試作機を開発中と報じられています。国策に沿った研究開発補助や設備投資減税などが拡充されれば、同社の負担軽減と技術優位性確保につながるでしょう。
投資上の注目点は、同社が進めるビジネスモデル転換の行方です。富士通はハードからデジタルサービス企業への転換期にあり、汎用ハード事業の縮小や人員再配置を進めています。先端技術開発には巨額の投資が必要ですが、高市氏のビジョンが追い風となれば、政府との共同プロジェクト受注や補助金獲得でリスクを抑えつつ成長分野に注力できるでしょう。一方、グローバル競争も激しい領域です。AIでは米国ビッグテック企業、量子では各国新興企業も凌ぎを削っています。富士通が国際競争力を維持するには、スピード感とオープンな連携が求められます。
それでも、国内マーケットに目を向ければ、政府・公共分野でのDX需要や産業界のAI活用ニーズは旺盛です。高市氏が提唱する「技術力の強化」に沿って政策資源が投じられる限り、富士通のような総合テック企業には安定した成長機会が提供されるでしょう。日本発の先端技術で経済と安全保障を両立させる、そんな未来図の中で同社の果たす役割に期待が集まります。
チェンジホールディングス(3962):地方創生とデジタル化の担い手
高市氏は「47都道府県どこに住んでいても安全に生活でき、必要な医療・教育を受け働く場所がある日本」を目指すと述べています。地方の潜在力(「伸び代」)を引き出し、日本列島すみずみまで活発な経済活動が行き渡る国づくり、いわゆる地方創生は高市氏の掲げる重要テーマです。
その実現にはデジタル技術の活用や自治体行政の効率化が不可欠であり、ここにビジネスチャンスを見出しているのがチェンジホールディングスです。同社は自治体や企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援を事業とし、特にふるさと納税ポータル「ふるさとチョイス」を運営する企業として知られます。
企業概要:
チェンジホールディングスは、自治体向け業務改革コンサルティングやITサービス提供を行う企業グループです。傘下のトラストバンク社が運営する「ふるさとチョイス」は、全国1700以上の自治体のうち9割超が参加する国内最大級のふるさと納税サイトで、同社の収益の柱となっています。ふるさと納税制度は都市から地方への資金還流策として地方創生に寄与しており、高市氏もこの制度を評価する立場と考えられます。
加えて、チェンジHDは自治体の業務システム刷新やRPA導入支援、人材育成研修なども手掛け、行政のデジタル化ニーズに応えています。総務省やデジタル庁による自治体DX推進計画にも深く関与しており、民間企業ながら地方行政改革のパートナー的存在です。
投資家の注目ポイント:
高市氏のビジョンの下で地方創生策が強化されれば、例えば地方企業への補助金拡充やデジタル田園都市国家構想の加速などが見込まれます。その際、自治体は地域産業振興や住民サービス向上のためIT投資を増やす可能性が高く、チェンジHDのビジネス機会が広がるでしょう。実際、総務省はデジタル人材派遣など地方公共団体支援策を拡充しており、同社は自治体DX支援で契約実績を積んでいます。
またふるさと納税市場の拡大も追い風です。2022年度のふるさと納税寄附額は過去最高の約9,600億円に達し(10年前の10倍以上)、制度の定着が伺えます。高市氏が地方の魅力発信や産品ブランド化支援を掲げる中、ふるさと納税は重要な政策ツールとして維持・強化されるでしょう。チェンジHDはこの市場でトップシェアを持つため、寄附総額の増加や制度拡充の恩恵を直接享受します。
留意すべきリスクは、政策変更と競合環境です。ふるさと納税制度は過度な返礼品競争など課題も指摘されており、制度見直しが行われる可能性があります。その場合、ポータル運営各社の競争も激しく、同社が引き続き覇権を握れるか注視が必要です。それでも地方創生ニーズ自体は高まる一方であり、高市氏のように地方経済の底上げに熱意を持つリーダーが登場すれば、市場全体が活況づくと期待されます。チェンジHDは「地方×デジタル」で独自の地位を築いた企業として、政策ドライブを追い風に持続成長が期待されます。
まとめ
高市早苗氏の政策・ビジョンに沿って、日本の安全保障や経済独立を支える企業を分野横断的に見てきました。高市氏は「総合的な国力」を構成する技術力・経済力・人材力の強化を唱えており、今回挙げた銘柄群はいずれもその実現を支えるポテンシャルを持っています。
もっとも、政策と株価は表裏一体ではなく、実際の投資判断には業績動向やリスク要因の綿密な分析が不可欠です。高市氏が今後どの程度政策を実現できるか、政局の行方によっても状況は変わり得ます。それでも彼女の掲げる政策テーマは、いずれも中長期的に日本経済が直面する課題への解決策として重要度を増すでしょう。経済安全保障やデジタル化推進といった流れは政権の如何にかかわらず継続性が高く、関連企業には長期的な追い風となる可能性があります。
一般投資家にとっても、高市氏の政策キーワードを手掛かりにマーケットの関心テーマを把握し、有望企業を調べてみることは有意義と言えます。政治と経済の動きを横断的に捉えながら、成長分野を担う企業を中長期の視点で見極めていきましょう。