
今回は「インテリジェントウェイブ」についてです。2024年時点の情報となります。
会社概要
基本情報
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商号: 株式会社インテリジェントウェイブ
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設立: 1984年12月
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所在地: 東京都中央区新川1-21-2 茅場町タワー
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電話番号: 03-6222-7111
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公式ホームページ: https://www.iwi.co.jp/
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事業内容: システム開発、製品販売、カード決済システム、内部情報漏洩対策、サイバーセキュリティソリューションの提供
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上場市場: 東京証券取引所プライム市場(2001年6月上場)
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親会社: 大日本印刷株式会社(2010年より子会社化)
沿革
創業期(1984年-1990年代)
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1984年12月: 東京都港区新橋に設立。
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1985年: 本社を東京都中央区茅場町に移転。
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1991年: フィリピンに「INTELLIGENT WAVE PHILIPPINES,INC.」を設立。
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1993年: 本社を東京都江東区木場に移転。
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1995年: 静岡支店を開設。
成長期(2000年代)
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2001年: 日本証券業協会に店頭上場。
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2004年: 米国「Intelligent Wave USA,Inc.」および英国「INTELLIGENT WAVE EUROPE LIMITED」を設立。
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2004年12月: ジャスダック証券取引所に株式を上場。
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2005年: 韓国「Intelligent Wave Korea Inc.」を設立。
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2010年: 大日本印刷株式会社の子会社化。
現在(2010年代以降)
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2013年: 東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場。
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2018年: 東京証券取引所市場第二部に市場変更。
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2019年: 東京証券取引所市場第一部に指定。
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2022年: 東京証券取引所プライム市場へ移行。
主力事業
事業構成(2024年6月期):
- システム開発: 48%
- 保守: 11%
- 自社製品: 3%
- 他社製品: 10%
- クラウドサービス: 17%
- セキュリティ対策製品: 11%
- システム開発: カード決済システム、不正検知システム、企業向けセキュリティ対策。
- クラウドサービス: 決済インフラのクラウド化、法人向けクラウド型セキュリティ対策。
- サイバーセキュリティ: 内部情報漏洩対策、不正アクセス検知システムの開発。
- 海外展開: 台湾企業と協業し、東南アジア市場へのセキュリティ製品拡販を計画。
特徴と動向
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金融業界向けソリューションの強み: カード会社向けパッケージ製品のクラウド化を進める。
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成長分野: ネットワーク接続・認証、不正検知分野が拡大。
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業績: サイバーセキュリティ製品の成長により営業利益が最高益更新。
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開発動向: 2025年4月にクラウド型カード決済システムの提供を開始予定。
財務状況
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従業員: 492名(2024年9月時点)
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平均年齢: 39.3歳
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平均年収: 730万円
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総還元性向: 81.0%(過去3期平均56.1%)
比較会社
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ウェルネット(2428)
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ビリングシステム(3623)
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サイトリサーチ研究所(3750)
株式会社インテリジェントウェイブは、金融システムやセキュリティソリューションのリーディングカンパニーとして、国内外の市場で成長を続けています。大日本印刷グループの一員として、クラウドサービスやサイバーセキュリティ分野におけるイノベーションを推進し、より安全なデジタル環境の構築に貢献しています。
株主構成
親会社
大株主

株価指標
- 概要
- PER:15~20倍
- PBR:3倍程度
- 利回り:3~3.5%
- 時価総額:300億円程度
コーポレートガバナンス
支配株主との取引等を行う際における少数株主の保護の方策に関する指針
当社は、親会社との取引にあたり、他の取引先と同様に、合理的な判断に基づき公正かつ適正な取引条件を決定し、少数株主の利益を損ねることのないよう努めています。 親会社との取引の実施前には、他の取引先の場合と同様に社内決裁の手続きが行われるほか、金額等一定の基準を超える取引の場合には、代表取締役と品質保証部門の担当役員を含む2名以上の役員と、社内関係者による会議体で個別に取引条件を審議検討する方法により、不適切な条件等による取引を未然に防止しています。加えて、親会社との重要な取引の内容を取締役会に報告しています。 前述のとおり、当社は、2021年12月8日付けで特別委員会を設置しました。 特別委員会は、支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引や行為について審議、検討を行う機関として設置されました。委員会の独立性を確保するために、委員は、独立社外取締役3名と独立社外監査役2名から構成されます。特別委員会は、当社取締役会が重要な取引について決定する際に、その取引が少数株主にとって不利益なものではないことについて、支配株主と利害関係を有しない者による意見の入手を行う等により、充分な検討を行うこととしています。
その他コーポレート・ガバナンスに重要な影響を与えうる特別な事情
(1)当社の親会社におけるグループ経営方針および当社を上場させる意義当社の親会社である大日本印刷株式会社は、2024年6月30日現在で、当社の議決権50.76%を保有しています。大日本印刷株式会社の方針は次のとおりです。 株式会社インテリジェントウェイブについては、同社が有する金融システムソリューション及び情報セキュリティ技術・製品の活用、丸善CHIホールディングス株式会社については、同社が展開している電子図書館や地域コミュニティの活性化支援による地域創生への貢献事業における協働、また北海道コカ・コーラボトリング株式会社については、包装資材や充填機器などの供給に加えて飲料製品を通じた地方創生ビジネスへの展開など、様々なテーマにおいて当社との相乗効果が期待できます。これらの上場子会社は、親会社の不適切な介入により少数株主の利益を毀損しないよう、各社がそれぞれ独自の意思決定手続に基づいて経営判断を行なっており、1/3以上の独立社外取締役を取締役会の構成員としたり、役員の指名や報酬など重要な経営事項の決定に当たっては過半数を独立役員で構成する任意の委員会での審議を経るなど、独自のコーポレート・ガバナンス体制を構築・運用しています。当社は、株主としての権利行使を通じて、各子会社が上場企業としてのメリットを活かしつつ、経営の効率化が図れるよう、それぞれの経営に限定的に関与していますが、DNPグループ全体の企業価値を最大化するという観点より、上場子会社を有する意義について継続して検討していきます。(大日本印刷株式会社「コーポレート・ガバナンス報告書(2024年6月27日発行)」抜粋。(2)当社における独立性確保に関する考え方当社は、決済分野、情報セキュリティと大きく二つの分野で協業を推進しております。中期経営計画においても、DNPグループとの連携をこれまで以上に進めることで、それぞれの顧客基盤を活用しながら事業競争力を強化し、グループとしてのシナジーを創出していく方針です。 大日本印刷株式会社との経営戦略の共有や機能分担の明確化(重複事業の解消)は、大日本印刷株式会社との経営資源の相互活用やシナジー効果の発揮に資するものであります。大日本印刷株式会社との連携を維持しつつ、上場企業として機動的かつ柔軟で独立した意思決定手段と、独立した資金調達手段をもって事業を拡大することが、DNPグループの企業価値向上および少数株主を含む株主全体の利益に繋がるものと認識しています。加えて、当社が上場企業であることが顧客からの信頼性向上、社員のモチベーションの維持・向上および優秀な人材の採用にも資するものと考えています。 当社は、上場子会社としてガバナンスの実効性を確保するため、少数株主に配慮し、次のような対策を講じることにより、独立性を確保しています。①取締役会の構成当社の取締役会は、主に当社の親会社に主要な業務経歴をもつ者3名と、当社に主要な業務経歴をもつ者2名及び支配株主からの独立性を有する独立社外取締役3名によって構成されています。独立社外取締役の構成比は3分の1以上です。独立社外取締役は、客観的な立場で経営に参画し、各々が有する専門的知見をもって適切な助言や提言を行っており、取締役会の議論を通じて、重要なリスクの管理と経営の監視機能を果たしつつ、説明力の高い意思決定を行ううえで有効に機能しています。②指名・報酬委員会の設置当社は、「指名・報酬委員会規則」に基づき、取締役会の諮問機関として指名・報酬委員会を設置、運営しています。指名・報酬委員会は、独立社外取締役3名、代表取締役会長及び代表取締役社長で構成され、独立社外取締役が委員長を務めます。独立社外取締役が過半数を超えることで外部的な視点を確保したうえで、取締役会から諮問を受けた取締役候補者及び監査役候補者の指名と、報酬に係る議題について審議のうえ意見を集約し、取締役会に答申します。このような指名・報酬委員会の設置、運営が、取締役の指名、報酬に係る取締役会の機能の独立性、客観性と説明責任の強化、親会社からの独立性に寄与しています。 なお、大日本印刷株式会社の業務経歴を有する取締役3名も、指名・報酬委員会における審議を経て選定されています。加えて、大日本印刷株式会社とのシナジー効果を高め、事業拡大していくために、その推進役となるべき人材であると判断しております。③特別委員会の設置当社は、大日本印刷株式会社との間で、決済等のシステム構築、当社製セキュリティ製品等に係る取引を行っていますが、大日本印刷株式会社との取引においては、当社の利益を害さないように、取引条件は他の取引各社と同等です。 また、支配株主である大日本印刷株式会社と少数株主との利益が相反する重要な取引、行為が生じる場合、その他必要と認められる事項が生じる場合、審議・検討の上、取締役会に対して答申を行う機関として特別委員会を設置しています。 特別委員会の独立性を確保するために、委員は、独立社外取締役3名と独立社外監査役2名から構成されます。特別委員会は、当社取締役会が重要な取引について決定する際に、その取引が少数株主にとって不利益なものではないことについて、支配株主と利害関係を有しない者による意見の入手を行う等により、充分な検討を行うこととしています。
インテリジェントウェイブが大日本印刷(DNP)の子会社になった背景
インテリジェントウェイブが2010年に大日本印刷(DNP)の子会社となった理由には、以下のような戦略的な要因が考えられます。
1. DNPのデジタル・セキュリティ分野の強化
- DNPは、印刷業界の大手企業であると同時に、金融機関向けのITソリューションやセキュリティ事業を展開しています。
- インテリジェントウェイブは、クレジットカード決済システムやサイバーセキュリティ分野に強みを持つ企業であり、DNPのデジタル事業戦略に合致しました。
- 特に、カード決済や不正検知技術などの分野で、DNPの既存事業と補完関係を築くことができました。
2. インテリジェントウェイブの経営基盤の強化
- 2000年代後半、IT業界全体が急速に変化する中で、インテリジェントウェイブは競争力の維持が課題となっていました。
- クレジットカード決済やセキュリティ事業において、さらなる投資や技術開発が求められる中、大手企業の支援を受けることで経営基盤を強化する必要がありました。
- DNPの資本参入により、安定的な経営基盤と成長のためのリソース確保が可能になりました。
3. 両社のシナジー効果
DNPとインテリジェントウェイブの事業領域には大きなシナジーがあり、以下のような相乗効果が期待されました。
- カード決済システムの強化: DNPは金融業界向けの印刷技術(キャッシュカード・クレジットカードの発行など)を持ち、インテリジェントウェイブのカード決済システムと統合することで、包括的な決済ソリューションを提供できるようになりました。
- セキュリティ事業の拡大: インテリジェントウェイブは、ネットワークセキュリティや情報漏洩防止技術を持ち、DNPの法人向けセキュリティサービスとの連携により、より強固なセキュリティソリューションを提供できるようになりました。
- クラウドサービスとの統合: DNPはデジタル化を推進しており、インテリジェントウェイブのクラウドインフラ技術やサイバーセキュリティ製品を活用することで、クラウドベースのサービスを強化することが可能になりました。
4. M&Aの流れと今後の展開
- 2010年4月にDNPがインテリジェントウェイブの公開買付け(TOB)を実施し、子会社化しました。
- 2019年には、東京証券取引所市場第一部に指定され、より広範な投資家層へのアピールが可能になりました。
- 2022年には東京証券取引所の市場再編によりプライム市場に移行し、さらなる成長を目指しています。
5. まとめ
インテリジェントウェイブがDNPの子会社となった背景には、DNPのデジタル・セキュリティ事業の強化、インテリジェントウェイブの経営基盤の安定化、両社の事業シナジーがありました。DNPの支援を受けることで、インテリジェントウェイブは金融システム・セキュリティ分野での競争力を強化し、さらなる事業拡大を図っています。
TOBの可能性と投資戦略
- インテリジェントウェイブとしては中長期の計画をもち企業成長をしていることから、すぐにTOBがされるような印象は受けない。
- コーポレートガバナンス報告書でも、上場子会社としての独立性を強調しているという点では、親会社からの独立性を確保した状況と考えられるが、親会社の大日本印刷の「コーポレート・ガバナンス報告書(2024年6月27日発行)」において「各子会社が上場企業としてのメリットを活かしつつ、経営の効率化が図れるよう、それぞれの経営に限定的に関与していますが、DNPグループ全体の企業価値を最大化するという観点より、上場子会社を有する意義について継続して検討していきます」とあるので、どこかのタイミングでTOBで完全子会社化する可能性は否定できない。
- PBR的には割安感はないが、セキュリティ銘柄として成長性もあり、かつ、高配当を維持している状況を考えると、「事業の成長性」「高配当」「TOBの可能性」という特性があり、中長期保有株式として保有しておきたい銘柄と考えられる。
TOB用に証券会社をもう1つ作っておこう
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