
今回は「フルヤ金属」についてです。2024年時点の情報となります。
会社概要
基本情報
- 商号: 株式会社フルヤ金属
- 設立: 1968年8月
- 所在地: 東京都豊島区南大塚2-37-5
- 電話番号: 03-5977-3388
- 公式ホームページ: https://www.furuyametals.co.jp/
- 事業内容: 貴金属を使用した電子材料、薄膜材料、触媒、リサイクル事業の開発・製造・販売
- 上場市場: 東京証券取引所プライム市場(2023年12月市場変更)
沿革
創業期(1951年-1970年代)
- 1951年3月: 東京都三鷹市に古屋商店を創立。
- 1968年8月: 資本金500万円で株式会社を設立し、商号を株式会社フルヤ金属に変更。
- 1975年4月: 工業用貴金属の分野に参入。
成長期(1980年代-2000年代)
- 1981年10月: 国内初のイリジウムルツボ製造に成功。
- 1990年10月: 茨城県筑西市につくば工場を設置。
- 2005年11月: ロンドン・プラチナパラジウムマーケット(LPPM)に登録認証。
- 2006年1月: つくば工場にてISO14001認証を取得。
- 2006年9月: ジャスダック証券取引所に上場。
- 2010年10月: 北海道千歳市に千歳工場を新設。
- 2011年2月: 田中貴金属工業株式会社と資本業務提携契約を締結。
- 2013年4月: 米国に株式会社米国フルヤメタルを設立。
現在(2010年代以降)
- 2020年5月: 株式会社Furuya Eco-Front Technologyを設立。
- 2020年6月: 経済産業省認定「グローバルニッチトップ企業100選」に選定。
- 2022年4月: 東京証券取引所の市場区分見直しにより、スタンダード市場に移行。
- 2023年12月: 東京証券取引所スタンダード市場からプライム市場へ市場区分を変更。
- 2024年9月: 株式会社ナノ・キューブ・ジャパンを吸収合併。
主力事業
- 電子材料: データセンター向けHDDや医療用イリジウムるつぼを含む電子部品の製造。
- 薄膜材料: 三菱商事系企業と開発した粉末スパッタリングの量産装置を使用した薄膜材料の製造。
- サーマル技術: 半導体製造工程における温度コントロール機器の開発。
- ファインケミカル・リサイクル: 貴金属のリサイクル技術や触媒分野での活用。
- サプライチェーン支援: 貴金属供給および製造支援を通じた業界向けサービスの提供。
特徴と動向
- 技術力: 薄膜材料や半導体製造向けの温度制御機器開発で業界をリード。
- 海外展開: 海外売上比率50%を超え、グローバル市場に対応。
- 環境対応: 触媒技術を活用した環境対策製品の開発。
財務状況
- 従業員: 連結410名、単体406名(2024年9月時点)
- 平均年齢: 34.9歳
- 平均年収: 660万円
- 総還元性向: 31.6%(過去3期平均23.3%)
比較会社
- アサカ理研(5724)
- 松田産業(7456)
- AREホールディングス(5857)
株式会社フルヤ金属は、貴金属の高度な加工技術を活かし、電子部品、半導体、環境対策製品の分野でグローバルに展開する企業です。独自の技術を基盤とし、持続可能な社会の実現を目指しています。
株主構成
親会社
- 田中貴金属工業(非上場)
大株主

株価指標
- 概要
- PER:10倍
- PBR:1~1.5倍程度
- 利回り:3%程度
- 時価総額:800億円程度
コーポレートガバナンス
支配株主との取引等を行う際における少数株主の保護の方策に関する指針
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その他コーポレート・ガバナンスに重要な影響を与えうる特別な事情
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フルヤ金属が田中貴金属のグループ会社となった背景
フルヤ金属が田中貴金属工業のグループ会社となった背景には、貴金属業界における事業シナジーの強化、資本関係の強化、技術協力の推進といったいくつかの重要な要因が挙げられます。
1. 資本業務提携の実施(2011年2月)
- 2011年2月、フルヤ金属は田中貴金属工業株式会社と資本業務提携契約を締結しました。
- これにより、田中貴金属がフルヤ金属の大株主となり、グループ企業としての関係を確立しました。
2. 事業シナジーの強化
フルヤ金属と田中貴金属工業は、どちらも貴金属を扱う企業であり、それぞれの強みを活かしたシナジー効果を生むことが期待されました。
(1) 田中貴金属の強み
- 貴金属の精製・リサイクル: 田中貴金属は、貴金属の精製、リサイクル、加工の分野で国内最大手。
- 幅広い産業ネットワーク: 自動車、半導体、電子機器、医療機器など、多様な分野に貴金属を供給。
(2) フルヤ金属の強み
- 高度な貴金属加工技術: イリジウム、ルテニウムなどの貴金属を用いた電子材料・薄膜材料・触媒技術に特化。
- 先端技術分野での強み: 半導体、光学機器、医療機器など、高精度が求められる分野での実績が豊富。
(3) シナジー効果
- 貴金属リサイクル事業の強化: 田中貴金属の精製・リサイクル技術と、フルヤ金属の高純度材料加工技術を組み合わせることで、貴金属の有効活用が促進される。
- 製品開発の共同推進: 田中貴金属の研究開発力とフルヤ金属の加工技術を融合し、新たな貴金属製品の開発が可能になる。
3. 資本関係の強化と経営の安定化
- 田中貴金属がフルヤ金属の主要株主となることで、資本の安定性が向上。
- 貴金属価格の変動リスクに対する対応力が強化され、経営基盤の安定化が進んだ。
4. 今後の展開
- フルヤ金属は、引き続き田中貴金属との連携を強化し、エレクトロニクス、半導体、医療、環境技術分野での新たな貴金属用途の開発に注力する方針。
- グローバル市場での事業拡大も視野に入れ、田中貴金属のネットワークを活用しながら、海外展開を加速している。
5. まとめ
フルヤ金属が田中貴金属工業のグループ会社となったのは、両社の強みを活かした事業シナジーの創出、貴金属リサイクルの強化、経営の安定化が主な目的でした。この提携により、両社は高付加価値の貴金属製品の開発を進め、競争力を強化しています。
TOBの可能性と投資戦略
- 親会社(厳密には、影響力のある大株主)の田中貴金属については、少し古い記事になるが、2015年9月5日の日経新聞に以下のような記事があり、上場するメリットを多く感じていない可能性がある。
貴金属大手、田中貴金属工業の持ち株会社、TANAKAホールディングス(HD)。JR東京駅前にある本社にはなぜか、安田銀行(後の富士銀行、現・みずほ銀行)の創業者、安田善次郎氏の銅像が飾られている。しかも、座した像の下には恭しく座布団が2枚。創業者の田中梅吉像ですら1枚で、その処遇は異例だ。実はここに、創業130年を迎えた老舗企業が非上場を貫いてきたひとつのヒントが隠されている。
TANAKAHDのルーツは1885年にまで遡る。神田の質屋に奉公していた田中梅吉が32歳の時、日本橋北島町(現在の茅場町)に両替商を開いたのが始まりだ。梅吉は安田氏と古金銀(過去に流通していた金貨・銀貨)を扱う業者として「創業以前から懇意、以来富士銀行とは深い信頼関係にある」と銅像には記される。100年以上の長い付き合いにより「金融機関との信頼関係は厚い」(TANAKAHDの池田収常務執行役員)。直近の自己資本比率が約4割と高い上に、金の買い取りなどで万が一の資金ニーズが発生しても銀行と結んでいる融資枠契約が威力を発揮する。主力の産業用事業は「多品種・少量生産」が基本。そのため、設備投資ニーズはあまり高くない。結果、複数の証券会社から幾度となく誘われても「上場する必要なしとの結論に達した」(池田氏)という。
- フルヤ金属自体は、田中貴金属から独立の立場の上場会社としてプライム市場に移行まで果たしているので、非上場になることは想定しないと思われ、TOBの可能性も高いとは言えないが、上場会社への締め付けが年々厳しくなるなかで、株価が割安な状態が続くようであれば、TOBされる可能性も否定はできない。
- 中長期的に業績拡大している状況や、一定程度の配当や割安感もあることから、中長期保有のポートフォリオとして保有しつつ、TOBにも備えるといった戦略もあり得る。
TOB用に証券会社をもう1つ作っておこう
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