東京証券取引所(東証)は、2024年10月17日に開催した「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会」(第2期)の第6回会合で、親子上場等に対する考え方と今後の方針案を示しました。この取り組みは、少数株主保護を適切に図りつつ、企業の説明責任を強化することを目的としています。
少数株主保護の必要性と今後の方針
東証は、親子関係や持分法適用関係にある上場会社が直面する課題として、少数株主との間に存在する利益相反の問題を挙げています。これを受けて、少数株主保護の観点から、以下の方針を明示しました。
上場制度の整備
- 必要な上場制度の検討を継続:
- 独立社外取締役の独立性確保
- 少数株主保護のための具体的なガバナンス施策
グループ経営の全体最適化
- 上場子会社や関連会社を有する企業は、グループ全体の最適化を図りながら、中長期的な企業価値の向上を目指す
- 取締役会での継続的な議論と、株主や投資家への説明責任の履行が求められる
説明責任の強化
- 親子関係や持分法適用関係を否定するものではなく、その意義や少数株主保護に関する方針を十分に検討し、説明することが重要
情報開示の現状と改善の必要性
会合では、少数株主保護やグループ経営に関する情報開示の状況も共有されました。2023年12月に東証が公表した「少数株主保護及びグループ経営に関する情報開示の充実」に基づくフォローアップでは、以下の現状が示されています。
- 開示率の低さ:
- 子会社役員の選解任に係る議決権行使の考え方・方針の開示率:24%
- 役員の指名プロセスへの関与に関する考え方・方針の開示率:21%
- 事業ポートフォリオ戦略の開示:
- 比較的高い開示率を示しているが、内容の充実には改善の余地がある
今後の取り組み
東証は、開示の充実を促すために、2025年を目途に「少数株主保護及びグループ経営に関する事例集」を公表する予定です。また、フォローアップを通じて、追加的な施策の必要性や改善ポイントについて議論を進めます。
東証が示した親子上場に関する考え方と今後の方針は、少数株主保護とグループ経営の透明性向上を目指した重要な一歩です。企業はこれを踏まえ、情報開示の充実と説明責任を果たすことで、投資家からの信頼を高める努力が求められます。この取り組みは、日本市場全体の信頼性向上と持続可能な成長に寄与することが期待されています。
TOBの可能性
今回の資料のポイントは2025年を目途に「少数株主保護及びグループ経営に関する事例集」を公表する予定があるということです。この事例集に掲載されてくるような会社は相対的にTOBの可能性は低くなり、一方で開示できていない会社はTOBの可能性は相対的に高くなるのではないかと考えます。
ということになるかと考えていますので、親子上場している会社の開示資料を今後調査していきながら各社の方針を確認していく予定です。