
ETFと投資信託の違いがわからず、どちらを選ぶべきか悩む人は多くいます。この記事ではETFと投資信託の違いやそれぞれのメリット・デメリット、上手に使い分ける方法などを解説します。記事を読めば自分の投資スタイルに合った金融商品を選べるようになり、効率的な資産形成が可能です。
ETFと投資信託は価格変動の仕組みや手数料などに大きな違いがあります。ETFと投資信託の違いを理解し、自分の投資目的に合わせて使い分けましょう。
ETF(上場投資信託)と投資信託の違い

ETF(上場投資信託)と投資信託の違いについて、以下の点を解説します。
- 価格の変動と決定のタイミングの違い
- 購入場所と取引方法の違い
- 購入時・保有時・売却時の手数料の違い
- 分配金の再投資と配当の扱いの違い
価格の変動と決定のタイミングの違い
ETFと投資信託の最も大きな違いは、価格が決まるタイミングと価格の変動の仕方です。ETFの価格は市場の需要と供給のバランスによって常に変化します。ETFは証券取引所の取引時間中であれば、いつでもリアルタイムで売買が可能です。
一方、投資信託は1日1回、市場が閉まった後に基準価額が計算されます。投資信託は注文を出した時点の価格ではなく、1日の終値をもとに計算された基準価額で取引が成立する点に注意が必要です。投資信託の場合、取引時間外に海外市場で大きな動きがあったときは翌営業日の基準価額に反映されます。
購入場所と取引方法の違い

ETFは株式と同様に証券取引所で売買されます。ETFは証券口座からすぐに購入できるため、株式用の証券口座があれば追加手続きは不要です。取引方法も株式と同様で、ETFは指値注文(※1)や成行注文(※2)などの注文方法が利用できます。
投資信託は証券会社だけでなく、銀行や保険会社などの金融機関でも購入できます。投資信託の取引は申し込み時点または翌営業日の基準価額で成立するため、注文した時点では正確な価格がわかりません。
ETFは証券取引所の取引時間内(9~15時)のみ売買できます。一方、投資信託は証券会社や金融機関の営業時間内であればいつでも申し込みが可能です。
※1 指値注文とは、希望する売買価格を指定して取引する方法を指します。
※2 成行注文とは、価格を指定せずに即時に取引する方法を指します。
購入時・保有時・売却時の手数料の違い
ETFの購入時には証券会社に支払う売買手数料が発生します。証券会社によってETFの購入手数料は異なり、定額制やスプレッド方式などのさまざまな形態があります。ETFの保有中、日々の基準価額から自動的に差し引かれる信託報酬の年率は0.1〜0.5%程度と比較的低めです。
ETFは取引のたびに手数料が発生するため、頻繁に売買する投資スタイルの人には向いていません。保有コストが低いため、長期保有したい人にはETFがおすすめです。
投資信託の購入時は多くの商品が手数料無料ですが、一部では1〜3%程度の手数料が必要です。投資信託の保有時には年率0.5〜2%程度の信託報酬が必要で、ETFより高い傾向があります。原則として投資信託の売却時は手数料がかかりませんが、一部の商品では信託財産留保額が必要な場合があります。
ETFと投資信託の手数料の違いは長期的な運用成績に大きな影響を与えるため、慎重に比較検討しましょう。
分配金の再投資と配当の扱いの違い
ETFの分配金は自分の証券口座に現金で支払われます。ETFの分配金には20.315%の税金がかかるため、手元に残る金額は分配金の約79.7%です。
自動で再投資はされないため、ETFの分配金を再投資したい場合は投資家自身が改めてETFを再購入する必要があります。少額の分配金をETFに何度も再投資すると、手数料の負担が大きくなるため注意が必要です。
一方、投資信託では「分配金再投資型」を選ぶことで分配金を自動的に再投資できます。投資信託の自動再投資の仕組みを活用すると、以下のメリットがあります。
- 再投資の際に税金が発生しない
- 手続きの手間がかからない
- 複利効果を最大限活用できる
投資信託で「無分配型」を選んだ場合は分配金を出さずに運用益を基準価額に反映できます。
ETFと投資信託のメリット

ETFと投資信託のメリットは以下のとおりです。
- ETFのメリットはリアルタイムで売買できること
- 投資信託のメリットは少額から投資できること
ETFのメリットはリアルタイムで売買できること
ETFの最大のメリットは株式市場の取引時間中ならいつでもリアルタイムで売買できる点です。朝のニュースで重要な経済指標が発表されて市場が大きく動いた場合でも、ETFならすぐに対応できます。
ETFは株式と同じ証券口座で取引できるため、ポートフォリオ管理がしやすい点も魅力です。すでに株式取引をしている人は新たに口座を開設する手間なく投資を始められます。
投資信託のメリットは少額から投資できること
投資信託の最大の魅力は少額から投資を始められる点です。100~1,000円程度から投資を始められるため、投資信託は投資初心者でも気軽に取り組めます。個別株では1株数万円の銘柄もありますが、投資信託なら少額で複数の銘柄に投資できます。
分配金を自動的に再投資できるため、複利効果を最大限に生かせる点も投資信託の魅力です。投資信託では毎月一定額を投資するドルコスト平均法を自然と実践できるため、長期的な資産形成が可能です。ドルコスト平均法は市場の上下に関わらず定額購入する方法で、平均購入単価を抑える効果が期待できます。
ETFと投資信託のデメリット

ETFと投資信託のデメリットは以下のとおりです。
- ETFのデメリットは分配金が自動的に再投資されないこと
- 投資信託のデメリットは手数料が高い場合があること
ETFのデメリットは分配金が自動的に再投資されないこと
ETFのデメリットは分配金が自動的に再投資されない点です。ETFには分配金を自動で再投資するコースが基本的に存在しません。資金を再び市場で運用したい場合、投資家自身が改めてETFの購入手続きをする必要があります。ETFの再投資のタイミングは自分で判断する必要があるため、余計な手間がかかります。
ETFのデメリットを補うためには以下の方法が有効です。
- 分配金を受け取るたびに再投資する習慣を付ける
- 分配金よりも値上がり益を重視する
- 定期的に証券口座を確認し、分配金を放置しない
投資信託のデメリットは手数料が高い場合があること
投資信託のデメリットは手数料が高い場合があることです。投資信託にかかる手数料と割合の目安は以下のとおりです。
- 販売手数料:購入時に最大3%程度
- 信託報酬:保有中に毎年0.5〜2%程度
- 信託財産留保額:売却時に0.3%程度
アクティブ運用の投資信託は手数料が高い傾向にあります。手数料無料と宣伝されている投資信託商品でも、信託報酬などの隠れたコストが高く設定されている場合があるため注意が必要です。手数料の高い投資信託商品は、長期間保有するほど複利効果によって最終的なリターンが減少します。
運用会社や販売会社によって手数料体系は異なるため、投資信託を選ぶ際は複数の商品を比較検討しましょう。
ETFと投資信託の向いている人の違い

ETFが向いている人の特徴と投資信託が向いている人の特徴について解説します。
ETFが向いている人の特徴
ETFが向いている人の特徴は以下のとおりです。
- 日中の価格変動を見ながら売買の判断をしたい人
- 取引のタイミングを自分でコントロールしたい人
- 手数料をできるだけ抑えたい人
- インデックス投資を効率的に行いたい人
- 特定の業界やセクターに集中投資したい人
- まとまった資金を運用したい人
ETFの最大の魅力は証券取引所の取引時間内ならいつでも売買できる点です。ETFは投資信託よりも信託報酬が低いケースが多く、長期保有を前提とする投資に適しています。「米国株だけに投資したい」「新興国市場に特化して投資したい」などの投資目的が明確な人にもETFはおすすめです。
まとまった資金を投資に回せる人はETFを選ぶことで投資効率を高められます。
投資信託が向いている人の特徴
投資信託が向いている人の特徴は以下のとおりです。
- 市場の変動をチェックする時間がない人
- 売買のタイミングを自分で判断できない人
- 投資の判断を専門家に任せたい人
- 投資の専門知識がない人
- 少額から投資を始めたい人
- 毎月コツコツと積立投資をしたい人
- 複利効果を最大化したい人
- 特定のテーマや業界に分散投資したい人
投資信託の魅力は1つの商品で自動的に分散投資ができる点です。投資信託では国内外の株式や債券など、幅広い資産に分散投資できるため個別銘柄選びのリスクを減らせます。自動積立設定を活用すれば、毎月一定額を投資する「ドルコスト平均法」を簡単に実践できます。
ETFと投資信託を上手に使い分ける方法

ETFと投資信託を上手に使い分ける方法は以下のとおりです。
- 投資目的に応じて使い分ける
- ポートフォリオにおける役割分担を考慮して使い分ける
投資目的に応じて使い分ける
ETFと投資信託の特性を理解し、自分の投資スタイルに合わせた選択をするとそれぞれのメリットを最大限に生かせます。短期的な資産増加を目指す場合はリアルタイムで取引ができるETFが適しています。ETFは急成長が見込まれる業界への投資や、市場の変動を利用したトレードを行いたい場合に効果的です。
長期的な資産増加を目指す場合は投資信託を活用しましょう。NISAやiDeCoなどの制度内で投資信託を利用すると、税制優遇を受けながら分散投資が可能です。
ポートフォリオにおける役割分担を考慮して使い分ける
ETFは市場で取引される特性を生かし、ポートフォリオの中心である「コア資産」として活用すると効果的です。日経平均やTOPIX、S&P500などの主要指数に連動するETFを中心にすることで、ポートフォリオの基盤を安定的に構築できます。
コア資産以外の「サテライト」部分には、アクティブ運用の投資信託や特定セクターのETFを組み入れると効果的です。短期で現金化が必要な部分にはETF、長期保有を前提とした部分には投資信託を配分するという考え方もあります。
ETFと投資信託の特性を理解し、ポートフォリオ内での役割を明確にすると効率的な資産運用が可能です。
ETFと投資信託の違いに関するよくある質問

ETFと投資信託の違いに関するよくある質問を以下にまとめました。
- ETFと投資信託のどちらが初心者に向いている?
- ETFの価格が変動する理由は?
- 分配金を自動で再投資する方法はある?
ETFと投資信託のどちらが初心者に向いている?
ETFよりも投資信託の方が初心者に向いています。投資信託が初心者向けの理由は以下のとおりです。
- 少額から投資を始められる
- 積立投資が簡単にできる
- 分配金の自動再投資機能がある
- 銀行や証券会社の窓口で相談しながら購入できる
- 専門家に運用を任せられる
- 取引時間を気にする必要がない
投資信託では毎月100~1,000円程度からでも積立投資ができるため、初めての投資でも心理的なハードルが低くなります。長期・分散投資をしたい場合はインデックス型の投資信託がおすすめです。定期的な積立投資は「時間分散」の効果があり、市場タイミングを気にせずに長期的な資産形成ができます。
ETFは取引所の営業時間内に自分で注文する必要があり、リアルタイムで価格が変動するため初心者には難易度が高めです。投資の知識を深めた後、ETFをポートフォリオに取り入れると投資の幅を広げられます。
» 自分に合った戦略を見つける!株式投資の始め方と注意すべきリスク
ETFの価格が変動する理由は?

ETFの価格が変動する理由は以下のとおりです。
- 基礎となる資産(株式や債券など)の価格変動
- 市場における需要と供給のバランス
- 経済指標や政治情勢の変化
- 投資家の心理
- 取引量の流動性
需要と供給のバランスによって、ETFの市場での取引価格は一時的に本来の価値から離れる場合があります。取引価格と本来の価値に差が生じた場合はマーケットメイカー(※3)が裁定取引を行い、適正価格に近づくように調整されます。
海外ETFの場合、為替レートの変動も価格変動の要因の一つです。円高になれば海外ETFの円換算価格は下がり、円安になれば上がる傾向にあります。
※3 マーケットメイカーとは、証券取引所から資格を得た値付け業者を指します。
分配金を自動で再投資する方法はある?
ETFの分配金を自動で再投資したい場合、以下の方法があります。
- 分配金再投資型ETF
- 証券会社の再投資プログラム
米国ETFを購入する場合はDRIP(Dividend Reinvestment Plan)の活用も可能です。しかし、ETFの分配金を自動で再投資する方法は限られており、基本的には手動で同じETFを追加購入する必要があります。
投資信託の場合は多くのファンドで「分配金再投資コース」を選択できます。分配金再投資コースを選ぶと分配金が出るたびに自動的に同じファンドを追加購入できるため、複利効果の活用が可能です。
自動再投資の設定方法は証券会社によって異なるため、利用している証券会社のウェブサイトや問い合わせ窓口で確認しましょう。
ETFと投資信託の違いを理解して自分に合った投資を選ぼう

ETFの価格は市場の需要と供給のバランスによって常に変化します。ETFはリアルタイムで売買できるため、市場が大きく動いた場合でもすぐに対応できます。投資信託は少額からの積立投資や分配金の自動再投資が簡単にできるため、長期的な資産形成を目指す人や初心者におすすめです。
ETFと投資信託の違いを理解し、自分に合った方法で継続的に投資を続けることが資産形成の近道です。自分の投資スタイルや目的に応じてETFと投資信託を使い分け、着実に資産を育てましょう。