【初心者向け】TOBで株価はどうなる?上昇・下落のパターンと投資家の対応策3選を解説

【初心者向け】TOBで株価はどうなる?上昇・下落のパターンと投資家の対応策3選を解説

「TOBのニュースを見て、株価がどうなるか心配」と不安を感じていませんか?TOBは、投資家にとってチャンスにもリスクにもなり得る重要なイベントです。TOBへの対応を誤れば大切な資産を失うリスクもあるため、正しい知識と判断が不可欠です。

この記事ではTOBの基礎知識から株価への影響、取るべき具体的な対応策までをわかりやすく解説します。記事を読めば、TOBが発表された際に冷静な投資判断が可能です。TOBの仕組みを完全に理解し、慌てずに行動すれば利益を狙う好機に変えられます。

TOBとは一定期間に多数の株式を買い集めること

TOBは株式公開買付けと呼ばれ、他社の株式を企業が証券取引所を通さずに直接買い集める手法です。買収側の企業は価格・期間・数量を事前に公表し、対象企業の株主から株式を購入します。

TOBの目的は、対象企業の経営権を取得したり、完全子会社化を図ったりすることです。買付価格は市場価格より20~40%高く設定されるケースが多く、株主にとって有利な売却機会となります。証券取引所を通さない取引により、TOBは大量の買い注文による株価の急騰を防ぐ効果もあります。

TOBの種類

TOBには企業の目的や対象会社との関係によって複数の種類があります。投資家は各TOBの特徴を理解し、保有株への影響を判断する必要があります。TOBの種類は以下のとおりです。

  • 友好的TOB
  • 敵対的TOB
  • 上場廃止を目的としたTOB
  • 敵対的買収防衛のためのTOB
  • 合併や事業統合を目的としたTOB

友好的TOB

友好的TOBは、買収される企業の経営陣が賛同したうえで実施される株式買付けです。両社が事前に協議を重ね、企業価値向上を目指して進められるため、TOBの成功確率が高くなります。友好的TOBでは買収がスムーズに進み、従業員や取引先との関係も良好に保たれやすくなります。

株主にとっては企業同士の相乗効果により長期的な成長も期待できるため、市場価格より高い価格で売却できるチャンスです。買付価格には通常20~30%のプレミアムが付き、株価は比較的安定して推移する傾向があります。

敵対的TOB

敵対的TOBは、対象企業の経営陣の同意なしに実施される株式買付けのことです。敵対的TOBは、経営方針を大きく変更する意図がある場合に選択される手法で、対象企業は買収防衛策を講じることが一般的です。

敵対的TOBが発表されると、対象企業の株価は短期間で大きく変動します。買収側は高いプレミアムを提示して株主の賛同を得ようとし、防衛側は対抗策を打ち出すため株価は不安定になります。投資家にとっては短期的な売却益を得るチャンスになりますが、TOBの成否が不透明なためリスク対策が欠かせません。

上場廃止を目的としたTOB

上場廃止を目的としたTOBは、企業が株式市場から撤退し非公開化するために実施されます。経営の自由度を高め、長期的な視点での経営に集中したい企業が選択する手法です。企業が非公開化を選ぶ理由は以下のとおりです。

  • 株主総会や情報開示にかかるコスト削減
  • 短期的な業績変動に左右されない経営
  • 競合他社への重要情報の流出防止

経営陣によるMBO(マネジメント・バイアウト)や親会社による完全子会社化が上場廃止を目的としたTOBに該当します。買付価格は市場価格に30~40%のプレミアムが付くことが多くあります。

TOB成立後はスクイーズアウト(※)により少数株主の株式も強制的に買い取られるため、投資家は早めの売却判断が必要です。

※ スクイーズアウトとはM&A(合併・買収)で大株主が少数株主を排除し、株式を100%取得して完全子会社化する手法です。

敵対的買収防衛のためのTOB

敵対的買収防衛のためのTOBは、企業が望まない買収者から会社を守るために実施する防衛策です。自社株買いや友好的な第三者への株式売却により、敵対的買収者の持株比率を下げる効果があります。

防衛側企業は市場価格より高い価格でTOBを実施し、敵対的買収者の買収コストを引き上げます。経営陣がMBOを実施して会社を非公開化するケースもあり、既存株主は高値で売却できる大きなチャンスです。株価は防衛策の成否により大きく変動するため、投資家は情報収集が欠かせません。

合併や事業統合を目的としたTOB

合併や事業統合を目的としたTOBは、両社の技術を融合し、競争力を高めることを狙って実施する友好的な買収手法です。事業の統合により生産性向上やコスト削減が期待でき、新たな成長機会も生まれます。

合併や事業統合を目的としたTOBのメリットは、対象企業の経営陣も賛同するため、TOBが円滑に進行する点です。株主にとってはプレミアム価格での売却機会となり、統合後の成長を期待して保有を継続する選択肢もあります。市場は統合効果を評価し、株価は安定して推移する傾向があります。

TOBによって株価はどうなるのか

TOB発表後の株価は、買付条件や市場環境により大きく変動します。投資家は株価の動向を予測し、適切な投資判断を下す必要があります。TOBによる株価の変動パターンは以下のとおりです。

  • 株価が急上昇するケース
  • 株価が下落するケース
  • 株価が乱高下するケース

株価が急上昇するケース

TOB発表により株価が急上昇するのは、買付価格が市場価格より大幅に高く設定された場合です。投資家は確実な利益を求めて買い注文を出し、株価はTOB価格に向けて上昇します。株価急騰を引き起こす状況は以下のとおりです。

  • 市場価格に30%以上のプレミアムが付く場合
  • 業界再編による大型買収案件の場合
  • 外資系企業による高額買収提案の場合
  • 業界トップ企業同士の統合案件の場合
  • 長期間赤字だった企業への救済型買収の場合
  • 買付数量に上限がない全株取得案件の場合

友好的TOBでは両社合意のもと進められるため、株価は安定的に上昇します。対抗TOBの可能性がある場合は買付価格の引き上げ競争が起こり、当初のTOB価格を大きく上回るケースもあります。投資家にとっては短期間で大きな利益を得る絶好の機会となるので、TOB前後の株価チェックは欠かさず行いましょう。

株価が下落するケース

TOB発表後でも買付条件が投資家の期待に届かない場合や、TOB成立の見込みが低い場合に株価の下落が発生します。株価下落を引き起こす状況は以下のとおりです。

  • 買付下限に届かず不成立となるリスクが高い場合
  • プレミアムが10%未満の低水準の場合
  • 対象企業の取締役会が反対を表明した場合
  • 独占禁止法の審査で承認が困難と予想される場合
  • 買付期間が異常に短く応募が集まりにくい場合
  • 過去にTOB失敗の実績がある買付者の場合
  • 金融危機など外部環境が急激に悪化した場合

敵対的TOBでは対象企業が買収防衛策を発動し、ホワイトナイト(※)の登場や増配による株主還元強化などで対抗します。ディスカウントTOBは大株主との事前合意があるため一般株主には不利な条件となり、市場での売り圧力が強まります。

※ ホワイトナイトとは敵対的買収を受けた企業が、友好的な企業に買収してもらうことで対抗する手法です。

株価が乱高下するケース

TOBの成否が不透明な場合、買収側と防衛側の攻防や市場の思惑が交錯し、株価が大きく乱高下します。株価の乱高下を引き起こす状況は以下のとおりです。

  • 買付者と対象企業が法廷闘争に発展した場合
  • 第三者による対抗TOBの噂が流れた場合
  • 買付期間中に企業業績の大幅修正があった場合
  • 機関投資家の賛否が真っ二つに分かれた場合
  • 買付条件の変更が複数回行われた場合
  • メディアで連日報道され注目度が高まった場合
  • 買付期間の延長と短縮が繰り返された場合

値動きの激しさは短期トレーダーにとって魅力的な相場となり、投機的な売買がさらに値幅を拡大させます。個人投資家は日々の値動きに一喜一憂せず、TOBの最終的な着地点を見極めて冷静に判断しましょう。

TOBに対する投資家の対応策

TOBが発表された際、投資家は冷静に状況を分析し、最適な対応を選択する必要があります。保有株の価値を最大化するため、複数の観点から検討しましょう。投資家がとるべき対応策は以下のとおりです。

  • TOB価格と市場価格を比較する
  • TOB企業の将来性を分析する
  • 保有継続か売却かを検討する

» TOB銘柄の見つけ方とは?探し方のコツと注意点を解説

TOB価格と市場価格を比較する

TOBが発表されたら、投資家はTOB価格と現在の市場価格を比較しましょう。価格差を確認すると、投資家はTOBに応募すべきか市場で売却すべきかの判断が可能です。

TOB価格が市場価格よりも高い場合は、プレミアム率を計算しましょう。一般的に20~40%程度のプレミアムが付きますが、さらに高い場合は大きなチャンスです。市場価格がTOB価格に近づいている場合は、株式を市場で売却する選択肢も現実的です。

TOB価格が市場価格よりも低いディスカウントTOBでは応募による利益が見込みづらいので、他の対応策を検討しましょう。

TOB企業の将来性を分析する

TOB後の企業価値がどう変化するか分析することは、保有継続の判断に欠かせません。買収企業の経営方針や統合効果を評価し、長期的な成長可能性を見極めましょう。投資家がTOB企業の将来性を分析する際に注目すべきポイントは以下のとおりです。

  • TOB後の経営計画と実現可能性
  • 買収による相乗効果の具体性
  • 業界動向と競争力の変化
  • 財務健全性と資金繰り
  • 経営陣の実績と信頼性
  • 株主還元方針の変更
  • アナリストレポートの評価

TOBによる統合で市場シェアが拡大し、収益力が向上する見込みがあれば保有継続も選択肢となります。上場廃止の恐れがある場合は、流動性リスクを考慮して早めの売却を検討すべきです。

保有継続か売却かを検討する

TOB発表後、投資家は保有株式を継続保有するか売却するか慎重に検討する必要があります。投資家はTOBの条件や企業の将来性、自身の投資目的を総合的に判断しましょう。売却を選ぶ場合、TOBに応募すれば確実にTOB価格で売却できます。

市場売却なら即座に現金化できますが、通常はTOB価格をやや下回ります。保有継続を選ぶ場合、TOB後の成長に期待できますが、上場廃止リスクやスクイーズアウトの可能性も考慮が必要です。投資家は短期的な利益確定を重視するか、長期的な成長を期待するか、投資方針にもとづいて判断しましょう。

TOBに関するよくある質問

TOBに関するよくある質問は以下のとおりです。

  • TOB価格が市場価格を下回ることはある?
  • TOBが発表されたときの株主の選択肢は?
  • TOBの応募方法は?
  • TOB銘柄売却の際に税金はかかる?

TOB価格が市場価格を下回ることはある?

TOB価格が市場価格を下回ることはあります。TOB価格が市場価格を下回るケースは以下のとおりです。

  • 対抗TOBへの期待感による株価上昇
  • 買付価格引き上げへの思惑
  • 短期筋による投機的な買い
  • ディスカウントTOBの実施

一般的に通常のTOBではプレミアムが付きますが、市場の過熱により、一時的に市場価格がTOB価格を上回ることがあります。注目度の高い案件ではメディア報道の影響で個人投資家の買いが殺到し、実態以上に株価が上昇します。

投資家は冷静に状況を分析し、TOB価格と市場価格の乖離が一時的なものか構造的なものかを見極めなければなりません。

TOBが発表されたときの株主の選択肢は?

TOBが発表されたときの株主の選択肢は以下のとおりです。

  • TOBに応募して株式を売却する
  • 市場で株式を売却する
  • 株式を保有し続ける

TOBに応募すれば確実にTOB価格で売却でき、高いプレミアムを享受できます。市場売却なら即座に現金化できますが、価格はTOB価格をやや下回るので慎重な判断が必要です。保有継続は将来の成長に期待する選択ですが、上場廃止やスクイーズアウトのリスクを伴います。

TOBの応募方法は?

TOBに応募するには、公開買付代理人に指定された証券会社で手続きを行います。保有株式の証券会社と異なる場合は、株式の移管が必要になるケースもあります。TOBの応募手順は以下のとおりです。

  1. 公開買付代理人の証券会社に口座開設
  2. 公開買付説明書の内容確認
  3. 応募申込書の提出
  4. 応募株数の決定
  5. 応募期限内に手続き完了

証券会社のウェブサイトや電話、店頭でTOBの応募手続きができます。TOBの応募期間は通常20~60営業日で、期限を過ぎると応募できません。TOBに応募する際は移管手数料が発生する場合もあるため、事前に確認しましょう。

TOB銘柄売却の際に税金はかかる?

TOBで株式を売却した場合、通常の株式売却と同様に譲渡益に対して税金がかかります。売却益に対して20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の税率が適用されます。特定口座(源泉徴収あり)を利用している投資家は、証券会社が自動的に税金を計算・納付するため確定申告は不要です。

一般口座や特定口座(源泉徴収なし)の場合は、自身で確定申告が必要になります。損失が出た場合、税金はかかりませんが、他の株式売却益との損益通算や繰越控除を活用できます。税務処理は個人の状況により異なるため、詳細は税理士に相談しましょう。

まとめ

TOBは企業が他社の株式を市場外で買い集める手法で、株価に大きな影響を与えます。友好的・敵対的・上場廃止目的など種類により株価の動きは異なり、投資家は冷静な分析が必要です。

TOB発表後は価格比較や企業分析、売却判断の3つの対応が重要です。多くの場合、市場価格より高いTOB価格が提示されるため、売却益を得るチャンスとなります。保有株がTOB対象になったら情報収集を怠らず、自身の投資方針にもとづいて最適な選択をしましょう。

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